捜査7日目~葬儀

 朝の十時、ウエステン第二墓地にてハーラルト・ヴェールテとエストゥス・ヴェールテの葬儀が執り行われと昨日聞いた。マイヤーは盗賊征伐の任務で街に不在のため、クラクスは一人で葬儀にやって来た。


 ハーラルトとエストゥスの遺体は棺に入れられ、これから埋葬される墓穴の前に置かれている。クラクスは葬儀の参列者は思ったより多いと感じた。ヴェールテ家からは妻のスザンネ、執事のベットリッヒ、召使いのヒュフナー。彼らは棺桶の一番近いところにいる。他に六、七十名ほどの参列者がいる。いずれも見たことの無い顔だ。三男のマルティンも居るはずだが、顔を見たことがないので、その場ではわからなかった。

 クラクスは人々から数歩離れた後ろに立った。

 妻のスザンネは最後の挨拶として故人との思い出について話している。少し離れたところにいるため、内容までは詳しくは聞こえなかったが、その口調にはさほど気持がこもっていなとクラクスは感じた。

 スザンネの話が終わると、棺が墓穴に降ろされ上から墓掘り人によって土が掛けられた。しばらくして、完全に墓穴は埋められ、葬儀は終了した。

 葬儀の参加者が三々五々墓地を去って行く。クラクスを見つけた執事が声を掛けて来る。

「わざわざありがとうございました」。

「参列者が多くて驚きました」。

「いえ、参列者は少ない方だと思います。ハーラルト様の仕事の関係とエストゥス様の政界での関係の方々がほとんどです。葬儀の連絡が直前だったにも関わらず、皆さん良く集まっていただけました」。

「そうでしたか」。

 クラクスは、今日は事件の話をしないでおこうと思っていた。

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