捜査2日目

捜査2日目~死因

 マイヤーは朝一番で修練所へ向かった。

 今日は部隊は野営訓練で街の外へ出て、丸一日進軍した後、草原で野営し、明日街へ戻ってくる。マイヤーは、その訓練の指揮をプロブストという隊員に任せた。難しい訓練ではないし、先月もやったので彼でも指揮できるだろう。


 その後、マイヤーはクラクスと一緒に警察本部へ向い、警察長官ミューリコフと警部アーレンスに昨日、ヴェールテ家の屋敷で召使のヴェールベンと執事のベットリッヒから聞いた話を詳しく報告をした。

 そして、マイヤーは昨日、クリーガーと話した相続と父親の死因について話題を振った。

「警部。ハーラルトさんのお父さんの死因は?」

「病死だと聞いています。元々、心臓が悪かったそうです」。

「毒殺の可能性は?」

「ご家族から訴えがなかったので警察では何も調べておりません」。

「遺体を掘り起こして検査できないでしょうか?」

「それは、遺族の許可があればできますが、仮に毒殺であっても遺体を見ても判別つかないでしょう」。

「そうですか」。マイヤーは残念そうにうつむいた。「あえて遺体を掘り起こすかどうかだな」。

 マイヤーはため息をついて、少し考えてから次の質問をした。

「遺産相続でトラブルがあるなどの情報はありますか?」

「それは、わからないです」。

「直接、きょうだいに聞いてみるしかないか」。

「一応、あの執事にも聞いてみませんか?」

 クラクスが提案した。

「そうだな、それがいい」。


 マイヤーとクラクスは再びヴェールテ家の屋敷に向かった。今日も執事のベットリッヒが対応する。

「たびたび、すみません」。

 執事は昨日と同じく、応接室まで案内してくれた。

 二人はソファに腰かける。

「今日のご用件は?」

「いくつか聞きたいことがあります。まずは、父親のブルクハルトさんの死因についてです」。

「旦那様の死因は心臓発作です。以前より心臓を患っておりました」。

「毒殺の可能性は?」

「それは無いとは思いますが。想像もしたことがありませんでした」。

「念のため確認したいと思っています」。

「どのように?」

「遺体を掘り起こします」。

「掘り起こす?」

 ベットリッヒは驚いた様子だった。無理もない。

「それで、遺族の方の許可が得たくて。奥さんときょうだい全員のです」。

「しかし、許可していただけるとは思えません」。

「でしょうね。でも、一応、確認しておいていただけますか?」

「奥様には後ほどお伺いします。あと、エストゥス様とマルティン様はここにお住まいなので、お帰りになられましたら伺っておきます。しかし、クリスティアーネ様はオストハーフェンシュタットにお住まいなので、すぐには難しいです。しかし、手紙は出しておきます」。

「よろしくお願いします。奥さん、エストゥスさん、マルティンさんには聞いておいてください」。

「あと、踏み込んだ質問になってしまうのですが、相続でトラブルがあったとは聞いていませんか?」

「相続については弁護士が遺言書を持っております。その通りに遺産が分与されると聞いております」。

「遺言書!」

 マイヤーが驚いてみせた。内容によってはトラブルの原因となる。遺言書に、この事件のヒントがあるかも知れないと思ったのだ。

「弁護士はどちらに?」

 マイヤーは少々興奮気味に尋ねた。

「彼は近くに事務所を構えております。名前は、リヒャルト・ハルトマンです」。

 マイヤーは執事から弁護士事務所の場所の詳細を聞く。

「ありがとうございます。早速、行ってみます」。

 マイヤーとクラクスはヴェールテ家の屋敷を去って、弁護士事務所に向かった。

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