第2話 ある日の放課後。或いは私の記憶について。
――あの時のことは、今でもはっきりと覚えている。
中間テストの最終日、私はいつも通り
テストの特別日課で、その日は昼食の前に下校だった。
異常気象の所為で六月なのにとっても暑くて、水筒に氷を山程詰めていたっけ。
蓮が、バスに乗った瞬間に「あ~生き返るぅ~」なんておっさんじみたことを言うから、思わず笑ってしまったんだ。
木曜日の昼だったからか、バスの乗客は私と蓮の二人だけだった。
私達はのんびりと風景を眺めながら、数学が難しかったとか簡単だったとか、そんなことを駄弁っていた。
じめじめベタベタと不快な梅雨の湿気なんて気にならないって、そう思えるくらい幸せな時間だった。
クラスメイトの前ではニコリともしない蓮が、私の前では柔らかく笑っているという事実に胸を弾ませながら、私達はゆったりとした時間を過ごした。
――それは、大きな商店街の交差点に差し掛かった時だった。
ビーッ!ビーッ!
けたたましいクラクションの音がした。
音のした方を見ると、私と蓮が座っている一番後ろの座席に向かって、右の道から白い軽トラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。
蓮が危ない。
そう思って蓮の腕を掴んだ次の瞬間、バンッ!という大きな音と何かが潰れるような音がして、私と蓮の体は左前に飛ばされる。
頭が痛くて堪らない。
痛くて目も開けられないけれど、蓮は生きているようだった。
だって、蓮が私の名前を呼んでいる。
掠れた声もカッコイイなぁ。
なんて、そんなことを思って・・・
私は、意識を手放した。
――六月の、ある晴れた日。
私が蓮の彼女になって、丁度一カ月が経った日のことだった。
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