06

 張り紙があった次の日の放課後。夜慧と佳乃は生徒会室にいた。葉山愛とここで、待ち合わせしているのだ。

「ちゃんと来てくれるよね」

 佳乃はなんとなく不安になる。忙しいらしく、今日もその合間をぬって、来てくれるそうだ。

「来なかったら、佳乃が責任取るのよ」

「え?!」

「当り前よ、約束取り付けたの、佳乃でしょ」

 そんな話聞いてない。そんな事なら、もし来れれば、来てほしいなんて、あいまいに言わず、来てほしいと言うんだった。佳乃はそんな事を思いながら、生徒会室のドアを見つめる。すると、ドアをノックする音がする。

「はい、どうぞ」

 夜慧の声が響いて、ドアが開く音が続く。

「どうも、ここが生徒会だよね」

 そこにいたのは、葉山愛だった。佳乃が中に入るように促す。

「ちょっと遅くなっちゃったかな」

「いえ、大丈夫ですよ、こちらこそ、いきなりすみません」

 軽く謝罪しながら、佳乃が中まで入ってきた愛に、椅子をすすめる。愛が立った席の対面に、夜慧と佳乃は並んで立ち、自己紹介をした。

「月華院夜慧です、今日はありがとうございます」

「柳佳乃です」

 自己紹介を終えると、三人は席に座る。

「さて、来夏の事だよね」

「えぇ、来夏さんの事を聞きたくて」

「うん……」

 愛の表情が少し暗くなる。かなり親しかったと、佳乃は聞いている。

「辛い事を思い出させて、すみません」

 佳乃は、申し訳なくなって、そう謝った。

「いいよいいよ……来夏はね、頭よくて、美人で、運動が全然ダメで、天然ボケだったね」

「天然?」

 少し、驚いた様子で、夜慧が聞き返す。

「そうだよー、いつも授業中に、窓の外見てたり、なぜかシャーペンを、ずぅっと、いじってたり、落ち着きがなかったかな」

 なんだか意外だな、と佳乃は思う。勝手なイメージだけど、いつも落ち着いて、大人っぽい感じだと思ってた。

「それから、ネガティブだったかな、いつも自分はダメな人間だって、何やっても、どうせ、うまくいかない、みたいなね」

 驚きの事実に、夜慧と佳乃は、顔を見合わせる。

「友達もいなかったしね、私だけだったと思う、まぁ、これは、来夏が高嶺の花とか、近づきにくいとか言って、みんな近づいて来なかったからだけど」

「愛さんはどうして友達に?」

「私は幼馴染だから……白雪姫の友達は大変だよ、天然だから、お世話してあげる形に、いつもなっちゃってたからね、それこそ……」

 愛は自嘲気味に言葉を続ける。

「世話を焼く小人だよ、お供の小人、あるいは使用人、高貴な白雪姫のとなりにいるには、そういうのを覚悟しないと、いけないんだよ」

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