05

 生徒会室での話し合いのあと解散すると、佳乃は夜慧と美穂の所にやってきていた。

「先生、私たちの意思表明、他の先生方は、なんとおっしゃいましたか?」

 夜慧は嬉しそうに笑いながら、そんな事を聞く。美穂は困ったように苦笑すると、返答してくれた。

「だいぶ怒ってたよ、みんな面倒なんだろうね、いろいろと」

 それを聞いて、さらに愉快そうに夜慧が笑う。なんという、人格破綻者なんだろうか、この状況で楽しいと思っているのか、そう佳乃は思う。

「用はそれだけ?」

「いえ、確認したい事がありまして、白雪姫……安藤来夏の、一番親しかった人って、知ってますか?」

 夜慧の問いかけに、少し考える素振りをした後、美穂が言った。

葉山愛はやまあい……かな?」


「佳乃、葉山愛さんに、面会の約束取り付けて、今日いきなりだと失礼だし、明日の放課後辺りで」

「うえっ? あぁ、わかった」

 急いでメモを取り出して、佳乃は美穂から、必要な事を聞き出す。

「ありがとうございます」

 聞き終えた佳乃は、頭を下げて礼を言った。しかし、それにかぶるように、夜慧が話始める。ちょっとムッとする佳乃。

「ところで先生は、この学校出身でしたか?」

「え? そうだけど」

「彼氏はいたのですか? 参考までに、お聞きしたくて」

 何言ってんだこいつは。思わず、佳乃の口から、そんな言葉が飛び出しそうになる。

「なっ……今関係ある?!」

「あるって言ったら、答えてくれます?」

 明らかにニヤニヤしながら、そんな事を聞いている夜慧。頭をはたきたくなるのを、必死で我慢した佳乃は、夜慧の腕を引っ張り、歩き出す。

「すみません、先生! ありがとうございました!」

 謝りながら佳乃は、夜慧を引っ張っていく。

「もう! 何やってるの」

「気になったのよ」

 楽しそうに、夜慧がそう言うと、佳乃の腕からするりと抜け出した。

「佳乃、連絡お願いね、私は図書館に行ってくるわ」

「図書館? なんで?」

「卒業アルバムで、先生の彼氏探しするのよ」

 その言葉を聞いた瞬間、佳乃の体が自然と動いて、夜慧の頭をはたいていた。佳乃は、やってしまったと思う、しかし、やってしまったものは、仕方がない。

「いったぁ、何するのよ」

「バカな事しないでよ……本当にやめてね」

 佳乃はクギを刺すように言って、その場を離れた。



 夜慧は図書館で調べ物をしていた。卒業アルバムである。あるページを開いて、夜慧は嬉しそうに微笑んだ。

「みぃつけた……弓月、私の勝ちよ」

 そう、つぶやいて、卒業アルバムを静かに閉じる。

「さぁて、犯人の目星はついたわ……あとは死の真相ね」

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