第14話 三人の集会 1
はじめに…3人の同族が出会った。
先に年長のオネイロとまだ若いケールが知り合った。経験に劣り敵外心が強かったケールをオネイロはいさめ、諭し、悟らせた。
それ以後、2人は語り合えるはらからを得て、折を見ては時間を共にするようになる。
当時から同族同士が巡り会えば、警戒し、探りあい、必要と思えば相手を滅ぼすのが当然の結果だと誰も疑わなかった。だからオネイロの取った行動は非常に例外的な行為だったのだ。
しばらくすると、そんな噂を聞いたオイジュから2人にメッセージが届く。
あなた方に聞きたいことがある。こちらに害意は無いし、私を殺す気が無ければ会って話を聞いてほしい……と。
「ええと、すいませんお姉様?」
「どうしたのトリー?」
「できるのであれば、もう少し詳しくお願いしたいのですが……?」
「そう?いいわよ」
400年ほど前、まだ魔女と言う言葉すら生まれていなかった時代にオネイロは存在し、人を超えた力で一部の人間からは神格化され崇拝されていたの。
彼女にとっても利用できる人間がいる方が都合の良い時もあったし、当時同族は人間にただ畏れられる対象であったから、己の力をあまり隠さなかった。
そんなオネイロにケールは挑んだのよ。彼女を葬ればより強い恐怖で人々から畏怖され支配出来ると考えて。
でも、結果は勝負にもならなかった。知識と経験は大きな力となる、それを身を以て味わっただけ。
葬られるのは自分だったと覚悟したケールをオネイロは殺さなかった。代わりにこのままでいいのか問いかけた。このまま怨みと復讐だけの人生で良いのか?ならばこの場でその苦しみを終わらせてあげよう。まだ生きていたいと私に乞うならば、私との会話を楽しみなさい、てね。
別にケールを支配しようとしたわけではないの。自分の過去とケールの現在に飽きていたオネイロは、違う慰めが欲しかったんじゃないかしら?
ケールははじめは渋々、でもすぐに聞き入るようになった。それはまるで、自分の未来を早送りで体験するような気分になったから。
こうして2人は度々同じテーブルに座るようになった。お互い心は開かずともね。
これはね、かなり異例な事だったのよ。力尽くで徒党を組む事はあっても、対等に付き合う同族なんて少なくとも彼女達の周りにはいなかったのだから。噂を聞いた他の同族の目にはさぞや奇異に写ったでしょうし、何より恐れたでしょうね?
でも遠まきに静観していた同族たちとは違って、オイジュは強く興味をそそられた。オイジュもオネイロと似た欲求を抱えていた上に、神に叫んで問いたいほどの疑問があったから。
だからオイジュは先の2人に『話しをしたい』とメッセージを送った。別に2人に殺されたとしても後悔は無かったのでしょう。
それならばと受け取った2人は話しを聞く事を快諾した。もちろん迎え討つ準備に抜かりはなかったでしょう。何かを企んでのことならば有無を言わせず殺せるだけの準備を整えて。
こうして、ついにオネイロ、ケール、オイジュの3人が同じテーブルで向かい合った。
喜んだオイジュは先ずは名乗ると、何故か生い立ちから今までの人生までも、こと細かく説明をし始めた。
そして長い長い自己紹介を終えると、2人にこう問いかけた。
『2人はどうやって同族になったのか』と。
2人は目を見合わせた。
確かに同族として生き返ると、暫くはその疑問が頭の中を支配する。
しかし、生きる術と力を認識し始めると、怨みと復讐心、加虐心などに呑み込まれて、欲望と自己満足を追求するようになる。
それが自分の存在理由であって、結論としてはそう……どこかの神に復讐の機会を与えられた、自分は特別な存在になれたと思いこんでしまうの、大体はね。
そして、新たな人生に満足するか、そこに至る前に殺される。例外なく過去の人生にはトラウマしか無い。誰も自分が何故、どうやって同族になったかなんて具体的には考えたくは無いでしょう?
でもオイジュは違う、神の御技とその正体を知りたがった。
思いがけないテーマを投げかけられた2人は興味をそそられながらもその場はこれでおひらきにすることにした。このテーマはともすると、自分の情報をどこまで話さなければならなくなるのか、分からなかったから。
『後日また集まりましょう』そう言われてオイジュは帰された。2人はオイジュを帰した後もしばらく話し合い、彼女の話に乗るかどうかは互いの結論を尊重することにして、答えが出たらまた集まることを約束したの。
そして、3人が再び集まったのは割とすぐだった。
オネイロとケールの結論は同じ、生まれ変わる前の自分を語っても、今の自分の弱点になるとは思えなかったし、他の危険な情報はコントロールできると考えたのね。
なにより、やはりなかなか興味を惹かれるテーマだと気がついたのよ。目を背けたくなる過去も笑って話せるほど、彼女達は強かった。
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