第16話 王女様成長
次の日のニュース。「音大教授、強制わいせつ容疑で逮捕」
別に僕とレイミとミラちゃんが通報した訳ではない。幸田イチロウ先生は某駅前において下半身裸で「一に勉強二に修行三四が無くて五に営業無二七不思議生八つ橋九回裏にやっと昇天始球式なら天使はノーパン」とマイク片手に辻説法。
通報され駆け付けた警官に股間を押し付けるなど危害を加え逮捕、証拠物件としてマイカマクラ大箱押収。
ここはファミレス店内。ミラちゃんのお父さん、タイクーン・キョウスケこときらめき金融CEO手鏡キョウスケ氏に呼び出された場所。
「ファンキーなところがある先生だったがドーピングはいかんね。大学教授の枠に収まらない人だったんだろう」
今日は普通にスーツ姿のキョウスケ氏。この前よりも落ち着いている感じ。
「娘からはイチヤさんとその妹のレイミさんに助けられたと聞いてます。何かお礼をしなければと考えていますが、きらめき金融出資で音楽レーベルを立ち上げてみようかなと思っています」
「それはお気持ちだけ受け取っておきます。僕がお世話になっているプロダクションもありますし……」
「社員達からお願いだから止めてくれと抗議を受けたので封印しているDJの腕前を世に問いたい、という気持ちがありまして」
うん、僕は聴いたことは無いけど社員の皆さんは聴かされたんですね。大体ノリが見えてきました。恐いよう。
「お客様、ご注文のコーヒーとカフェオレです」
聞き慣れた声。見ればやっぱりウエイトレス姿のミラちゃん。
「バイト始めたの?」
「いつまでもイチヤさんやレイミさんに助けてもらう訳にもいかない、強くならなきゃと思って。これが人生初めてのバイトです」
「大人っぽくなったね」
「ありがとうございます」
トレイを抱えて去っていく彼女の後姿を眺めながらキョウスケ氏が小声で言った。
「私もいつまでも親バカではいかんと思い、バイトを許可しました。恥ずかしながら私は大学時代勉強もバイトもろくにせぬドラ息子でして」
「まあ、今はCEOなんだからいいじゃないですか」
鏡の国カガミスタン経由で現世での僕も成長したような気がした。
その様子をあたしことレイミはカガミスタン王宮浴室の鏡から見ながら悩んでいました。動画投稿サイトで知り合った女の子15歳に「好きですデートして下さい」とメッセージを貰ったから。そういえばデート用の服なんて一着も持ってない。今着てるナースコスじゃダメよね。お兄ちゃんに相談しようかな。世界で一番頼りになる男の人だからね。
-つづく―
僕と妹と王女様のダウンビート スリムあおみち @billyt3317
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