第4話 萌えてしまった兄逃亡

 国際的大会で一位獲得の妹。それに比べて僕は小さな存在だよな、と思いつつベッドの上でまどろんでいたらスマホが鳴った。メール着信。レイミか。用があるなら隣の部屋なんだから直接一声かければいいだろうと思いつつ開けば件名は無題。しかし動画サイトのアドレスが。


 見ればさっきの動画に適当な音を被せて編集したものだった。う、チープなダンスミュージックと踊る妹の組み合わせがエロい。改めて見ると流し目唇半開き。一分位の短い動画。他にも動画や静止画像が投稿してる。フォロワー12万?僕のフォロワー五千くらいだよ、何か秘密があるのかといえば子供服姿の動画にイイネが多い。これか、時代が求めているのはこれなのか。国際コンクール一位が息を弾ませゴム飛び。

 

「お兄ちゃん?」

 はっと気づけば普通のパジャマ姿のレイミが見下ろしていた。

「ノックしても反応無いから寝てるのかと思って。お風呂入るでしょ?」

 ジーンズの膨らみを妹に気付かれてはならない。背中を向けて仰向けから横になる。


「後で入る」

「動画変だった?」

 覗き込む妹。無言。気付かれたか。人生の終わりだ。

「他にも動画はあるのよ」

 スマホに手を伸ばさなくていいんだよレイミさん、がばっと跳ね起き「ちょっとトイレ」と逃げ出した。


 二、三分したら妹が自分の部屋に戻る気配がしたのでトイレから出て洗面所で顔を洗った。「お母さんが荷物開けちゃう」と言っていたが妙な衣装を通販で注文してたらそりゃ心配するよ。


 鏡で自分の顔を見る。うん、確かに僕は父親似だ。レイミは母親似かな。しかし二十一歳にしては兄になつき過ぎだろう。

 おや、鏡の中の俺の横にツインテールの女の子が。横には誰も居ない。怪奇現象だと騒ぐ間もなく小さな手に襟を掴まれ鏡の中に引きずり込まれた。

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