第3話 アレな動画撮影

「これを着て踊って動画サイトに投稿するんだあ」

「お前、これをなんでわざわざ兄に注文させ……」

 言葉を途中で呑み込んだ。丸いテーブルの上に脱ぎ捨てられたドレス。その横に何かあるなと思えば木綿の白いパンツ。


 浴衣を着る時パンツを穿かないのは正統派。だが妹は正統派じゃない浴衣を着る時も律儀にパンツを脱いだのか?そしてブラジャーの行方は。


「お母さんがあたし宛ての荷物開けちゃうのよ」

 姿見を覗き込みながら悦に入る妹のレイミ。ちょっと、腰を屈めると尻が見えそうになるだろ、二十一歳の女が兄とはいえ男の前で無防備過ぎる。


「レイミさん彼氏とかいないの?」

「彼氏作らない同盟に入ってるから作れない」

 おい、それって約束破った奴が勝ち組になる同盟じゃないか、そんなもん止めろと言いたいが昔から真面目で友達思いの優しい妹にストリートのリアルは語れない。


「お兄ちゃん、撮影して」

 動画モードになったスマホを渡され素直に撮影。なるほど、めくれないように器用に踊るんだな、と思ってたらくるっと回って軽くジャンプしやがった。ただ、動画サイトで踊り狂ってる女の子って普段は大人しいコが多いのかもしれない。僕も昔は大人しい振りをしていたから気持ちは分かる、と思いつつ撮影してたらこっち来た。


「撮影終了。ありがとう」

 胸元を押さえて隠すというデリカシーを兄の前だと失くしてしまう妹。乳輪控えめこの目で目視、汗の匂いが股間直撃、動く指先理性で抑止。スマホを渡した時指先が触れて抱き寄せたくなった。


「動画投稿なんてしてたのか。僕は知らなかったけど」

「ミラちゃんと比べてどう?」

 椅子に座って足を組み、スマホを操作しながら妹がニヤついた。

「初対面で胸覗いてたでしょー」

「彼女は後輩ってことだけど何歳?」

「十九歳。話戻すけどどっちのおっぱいがきれい?」

「女の子の胸を比べろって言われてもなあ」

「お兄ちゃんなら客観的に評価出来ると思って」


 妹よ。二年振りに見た生乳は最高だ。

「レモン顔負けDカップ日焼け跡無しメロン型」

「え、今の何?用意してたネタ?」

「プロのラッパーはフリースタイルが出来るからプロなんだ」

「すごい。あたしバイオリンでアドリブまだ出来ない」

 本気で感動している妹。素直なんだなあ。


「動画はちゃんと編集しとけよ。誰が見るのか分からないからな」

「バイオリン弾いてるあたしと同一人物だとバレないようにはしてる。この浴衣なら却ってバレないかな」


 レイミは立ち上がり、ドレスの横にあるパンツを掴み上げ「汗かいたから先にシャワー浴びるね」と俺の横を通り過ぎ部屋から出ようとした。ちなみにうちは二階にも風呂場がある。


「あれ、着替えは?」

「あ、忘れてた」

 クローゼットを開け、慌ててパジャマと替えのパンツを引っ張り出す妹。しゃがむと丸い尻は隠れるがつやつやした太ももがむき出しになるだと?悪気が無いので注意出来ない。見なかったことに。


 育ちの良さゆえなのか。あの無防備さが心配だなと思いつつレイミの部屋から出ていこうとした。学生時代に使っていた僕の部屋に行けばベッドがある。横になって休もうと思った。


「仲がいいんだなあ」

 女の子の声。振り向いても誰も居ない。気のせいだと電気を消しドアを閉めた。

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