第1192話「自身の蘇生」


「まず蘇生に必要な要件は2つ精霊核と龍核よ!その二つは既にあの二人から回収して戻してあるの!あとは………貴方の意識を戻すんだけど………生き返るには竜の血が必要よ」



「既に回収済み?彼女達の核は?」


「そんなの擬似核に決まってるじゃない?そもそも各種族核だけでも人間には本来使いこなせない代物なのよ?」



「そうじゃな!見た限りわしも擬似核で充分と判断できるぞよ?」



 僕は質問した内容に納得いく回答を得たので、その問題から離れてその他の質問に切り替える……


 その内容は当然『竜の血』なる物だ。



「ところでカサンドラ母さん、何故竜の血なんてそんな物が必要なの?」


「龍の血は特殊なアイテムなのよ。本来おいそれと手に入らないものでしょう?」



 カサンドラの説明では、不老不死に近い竜の血には輪廻転生の力が豊富に含まれているそうだ。


 必要な量はポーションの少瓶程度あれば済むそうだが、相手が竜ともなればオイそれと血は貰って来れない。




 しかし今から僕が向かう先にはゼフィ達が居るのだ。


 ちゃんと意思疎通が図れれば僕の蘇生問題は解決するだろう。



「なら………ゼフィランサスをこの場所に連れて来れれば解決する内容なんだね?」



「まぁそうだけど……そう事は簡単には進まないわよ?まぁ万が一の時の為に一応遠くからでも干渉出来る様にしておくけど………」



 そう言ってカサンドラは一つの小瓶を渡す。


「もし対話が難しいなら探してでも娘から貰ってきなさい。血液自体は成体でも幼体でも構わないから」


 

 そう言って渡してきた小瓶鑑定してをみると、耐熱処理されている特別性だった。



「耐熱性?」



「そりゃそうよ!ゼフィランサスは火龍よ?火の龍なんだから血液もそれ対応の瓶じゃないと採取さえ出来ないわ」



 そう言われて僕は納得する。



 カサンドラは強制的に僕へ母と呼ばせているが、特別な執着を見せる時がある。


 現に今現在もその様子を見せており、何が一番得策かを教えてくれている。



 時折本当の母親の様な気さえしてくるのだ。



「じゃあ行ってらっしゃい!そうそう話は聞いていたけどアヤセという女性には気をつけないとダメよ?魂を分けた存在には本人さえ予期しない危険が孕むものだから……」



 そう言ってカサンドラは僕を送り出した。


 ◆◇


 僕は黒穴を使いローズガーデンへ飛ぶ。


 そこには既に待ち受けていたかの様にエクシア達ファイアーフォックスのメンバーが数人だけ来ていた。



「それで?お前の事だから説明は省くと思っていたけどどう見てもマモン達と同じ眷属になった様だな」



「ロズさん実は色々ありまして………」



 そう言ってから僕は関連するメンバー達に経緯を話す。


 当然ながら困惑するメンバー達だが、こればかりは嘘をついても始まらない。



 そしてモアとユイに残された時間の説明をする。



「マジかよ……エルフってのは内部で色々問題を抱えてたんだな………」



「そうだなベン。人間には起こりそうもない問題だが、長命種の生への願望なのだろうな……」



「それにしたってねぇ………エルフ達の帰るべき世界ってのがアンタの世界だって言うのはビックリしたもんだ……」



 僕はそう言ったエクシアに異世界人アヤセの事を話す。



 当時は名前を知らなかった彼女だが、彼女の行動がエルフの誕生に手を貸したのだ。


 それを語らない方が話が難しくなる。



「成程ねぇ………じゃあここからは昔みたいに共に行動させて貰うよ?これでもアンタの所属するギルドのマスターなんだからねあたしゃ!」


「でもエクシアさん………」



 そう言いかけた僕の言葉をエクシアは遮る。



「そもそも向かう国の説明はどうするんだい?悪魔だからって勝手に入れるってもんじゃない。アンタが人間として行動しなきゃこの国が迷惑だろう?」


 僕はその一言で理解した。


 確かに実力行使で侵入したとしてもいつかは間違いなくボロが出る。



 そしてそもそもの話、エクシア達ファイアフォックスのメンバーはこんな僕でも人間として扱ってくれる。



「そうですね!国境も関係してくるしマモン達は別任務で行動中だから確かに一人では難しかった」



「なら準備をして冒険者に返り咲きだな!野郎共準備をしな!」



「「「おう!」」」


 こうして一度は火焔窟で失いかけた物を僕は再度取り戻したのだった。




 ◆◇



「いいかい?ヒロ……。アンタが悪魔だって事は極力出さずに過ごしな!」



「だな!……当然だが冒険者にしてみれば身に余るステータスだ。本気の俺を打ち負かすだけの技量まで身につけたんだからな!」



「何言ってんだいベン……アンタがサボりすぎた結果差が更に広くなっただけじゃないかい?」



 そんな風に話しつつ、僕達は僅か数日で小国軍国家の境界線まで近づいていた。



 僕の黒穴では行ったことがない場所へは飛べない。


 だから地道に足を使って効果範囲を広めるしかないのだ。



 パーティーメンバーはエクシアにロズ、ベンにユイナにソウマベロニカと僕だ。


 他のメンバーは街の守備やら情報集めに奔走している。



 今回は変則的な7人パーティーだが、僕は御者見習い的な立場を一貫している。



 言うなればプラチナギルドファイアフォックスの『新入り』という立場だ。


 それが名前の知られていない僕の隠れ蓑の役目にうってつけだったからに他ならない。



 

 ちなみに国境もプラチナギルドともなれば細かい調査など不要の様で、まるで顔パスの様に出入りができた。



 『相手が嘘を言っても通れてしまうのでは?』ともったら、顔パスと言ってもギルド証が必要なのでその心配はなさそうだ。



「ここから南に降ると問題の地だが………どうする姉さん」



「そうだなここさから先はエルフ馬で走った方が早いかもしれないね。ロズとベン。アンタ達2人は近くの街で宿をとっておきな」


 そう言ってエクシアはロズ達に指示を出す。



「馬に積む荷物は最小限。カナミとミクを探す事を優先しつつゼフィの足取りを追うよ!」



「「「はい!」」」



 僕らはそう元気よく挨拶をする。


 問題が起こる前まではエクシアをリーダーに良くこうして返事をしていたのを思い出す。


 エクシアの王宮警護の仕事はどうなったのか聞くと、『今は各国が気にしている龍族の問題を片付けるのが先……』という結果になった様で、王宮絡みの仕事は軒並み部下に下ろしてきたそうだ。



 だからこそ気兼ねなく冒険者家業に没頭出来るのだろう。


 僕達は廃村を越えサラマンドラの跡地へ向かう………



 距離的には他の街から数キロ離れた程度だが、既にこの地には火の精霊が住まぬ土地とされてしまった以上寂れ果てているのだ。



「情報通りだね………ゼフィが居る…………」



 そう言いかけたエクシアは『カナミとミクまで居るよ…………』と不思議なものを見る目で二人と一匹を見る。



「エクシアかい?なんでこの地に来た………!?…………あ…………ヒ………ロ?何故悪魔…………なんかにぃ!!」



 ゼフィランサスがそう言いかけた途端意識が飛ぶ気配がした………ゼフィが僕の中の何かに反応した様に空高く舞い上がったのだ」



「母さん!!駄目…………」



 飛び上がったゼフィランサスは地面に居た全員に向けてドラゴンブレスを吐こうとした瞬間、竜っ子によって取り押さえられる。



「がぁ!離せ離さぬか!娘よ………悪魔からこの地を護るが我々龍の掟!何故邪魔だてする!」



「よく見て母さん!アレは父さんよ?ヒロ父さん………理由があってああなったと前に話した筈でしょう!」



「うぐぅぅぅぅ…………」



 ゼフィランサスは空にブレスを履き尽くすと『次はない!次は愛する夫でさえ………悪魔種は滅ぼす!』と言って飛び去っていく。



 取っ組み合いに辛うじて勝った龍っ子は、首に怪我を負いつつ降りてくる。


 龍っ子がゼフィランサスの様に態度に見せないのは、まだ自分の役目に目覚めてないからだとされているがこの場に彼女が居なかったら大事になっていた。



「龍っ子!首に怪我が!」



「大丈夫これくらいすぐに治るわ………でも父さん前にも言ったじゃない!?そのままの状態で母が理解するはずがないと!」



 僕はことの事情を龍っ子に話す……


 ゼフィランサス達龍族の血があれば僕は元の身体を取り戻し道通りになれる話を………

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