第1187話「与えられた精霊核の素核」
「今こうして刃を交わしてみたが………お前は何故悪魔の道など選んだ?悪魔らしくなく暴虐武人でも無いぞ?」
「傍若無人の間違いでは?」
「まぁそうともいうが……その方は悪魔であろう?その方が『らしかろう』と思ってな『造語』であるよ!」
そう言ったエルリヒトは僕の胸に手を当てる。
「我が精霊核をお主に!」
そう言うとエルリヒトの素核が僕の胸の上に浮き出す。
今は精霊核がないので統合できないが、本来の肉体にならば取り込み、スキルを自分に入れることが可能だろう。
しかし突然の行動に各代のフェニックスキング達は驚きが隠せない。
特に第二代エルーメンは口にまで出す始末であった………
「な!?………何故ですかエルリヒト様負けてはおりませぬぞ?」
「エルーメン此奴の精霊核が戻りし日に我々が役に立つ………此奴と戦えば意味がわかる」
「ならば回復した後は我が再戦致します!!」
そう言われて僕はエルリヒトの後に第二代フェニックスキングのエルーメンそして、第三代のエルダウと連戦した。
三戦0勝3敗それが僕の結果だったが、戦った全員が僕に精霊核をくれた。
「まさか悪魔の身体で精霊魔法とは………」
「大馬鹿者がいた者だ………」
「そうですねエルーメン様にエルダウ様。此奴はこの状態でありながらも精霊の戦士として戦い、少なからずエルフ国を救いました。見かけによらないのはエルリヒト様の言った通りかと……」
「そうだなエルルス……して………其方の娘、スゥは無事か?」
スゥの父であるエルルスは『試練を受けられる実力は力量的に持ち合わせて無いので、此処への入室を拒んでいる様です』という。
たしかにモノノフに近い思考のスゥであれば、特別な用件がなければ出入りはしないだろう。
それも試練を僕が受けているともなれば、入って来ないのは必定とも言える。
何故なら戦闘におけるヒントどころか試練の内容まで見れてしまうからだ。
そう考えていると、聞きなれた声が神殿に響く……先程気を失ったベンヌだ。
「エルーメン様に申し上げます!我らが女王候補のスゥは無事回復しましたよ」
「エルヴール!!無事であったか?」
「エルヴール?……あれ?貴方はベンヌ様じゃ…………」
「私はベンヌであり、スゥの母であるエルヴールと申します。先程は失礼を………」
そう言って神殿奥から来たのは霊体となったベンヌその人だった。
「神殿から出られるのですか?幽体なのに正気を?」
「はい……それは全て老院鳥の賢者エルノックの妙案のおかげなんですよ?」
僕はビックリしてエルノックをみる。
すると彼は『私とて国を守る賢者ですから……アヤセ様の理想は私が守ります』と言う。
彼が説明するには魂が穢れる理由は『穢れ』によって束縛される為だと説明した。
ならば『穢れなき力場』を作り出し、穢れを一方的に除去すればその中であれば霊魂は消滅せず自由に活動できる。
ベンヌ達の今の状況は残留思念の様なものが強く働いている状況らしく、強い意志が必要となるので各代のフェニックスとベンヌは、その教育を先代から直接手解きを受ける。
その為にもベンヌ神殿とフェニックス神殿は寄り添う様に建てられているという。
現にベンヌ事スゥの母エルヴールは、地下で繋がる安置所を通ってきたらしい。
「時にエルルス……我々3名の魂は今後こやつの虚無を抑える役目として精霊核と同化して同行する予定だ。我々が居なくなる間、エルフ国の留守を皆と共に頼むぞ?」
「え?精霊核に同化して同行って僕に中に?……入って移動できるんですか?」
その言葉にエルルスでさえも『エルリヒト様だけでなくエルーメン様とエルダウ様までもですか?』と疑問を投げかける始末である。
「うむ……素核がある上お前の中には何故か精霊力が満ち溢れる場所がある。行き場を失った力がやがて内側から破裂してしまう可能性がある」
そう説明したエルーメンは僕の現状を細かく教えてくれた。
本来失うはずの精霊力はホムンクルスの中にある魂から湧き出ているそうだが、今はそれを管理できる核がない。
今は満杯状態だが、やがてそれは内側から破裂する。
何故なら消費のしどころもなければ消費の方法も持ち合わせていないからだ。
それを精霊核の素核に移し、彼ら三人はその力を養分にして同行する予定らしい。
勿論の事ながらお断りはできない………
何故なら虚無の力を暴走させ使ったからである。
光の民を危険に晒したことは間違いない。
次は同じ様な事をさせない様に、僕の行動に合わせてついて行くと言うのだ。
しかしフェニックス神殿を出たら当然意思疎通は厳しい。
彼らフェニックスキング三人は僕の制御にのみ力を注ぐそうなので、虚無の力を実質封印するだけになるそうだ。
自我はあっても喋れない……何故ならそれが許される特別空間が鳥の賢者がアヤセと共に作ったこのエルフの地らしいのだ。
「エルノック………随分とわまり道をしたが………ようやく分かり合える日が来たな?」
「うむ……エルリヒトすまなかったな私達が君達を創らねばこんな問題にはならなかった」
「こんな問題とは……例の呪いのことか?」
「うむ………」
ちなみに今エルノックとエルリヒトが話していることは、ヘカテイアが話した呪いの件である。
元老院の11賢者達は疑似生命の制作により、この世界の災いと認定され呪いを身に受けた。
人として存在できなくなり、精霊としても存在できなくなった。
代わりにこの世界の破滅まで死ぬことが許されない身体を持つ、生命の理全てを管理する『観察者』にされたのだ。
しかしその枠を飛び出して、約束の地に行きたかった彼らはエルフを使ってあらゆる実験をした。
その過程で、エルリヒトはエルノックが何時から存在するのか突き止めたのだ。
結果エルノックはエルリヒトに全てを打ち明ける事になった。
エルフ族の悲願『約束の地』はそこから運命づけられたのだが、その全ての理由を知るものはエルノックとエルリヒトだけである。
エルリヒトは生みの親であるエルノックを理解していた。
だからこそ存在理由を与えてくれたエルノックの手伝いをしたのだが……元老院は次第に腐っていき、エルノックの手では抑えきれない状況になったのだった。
元老院長老で約束の地に行きたいのは僅かだ……他の者は現時点で持っている権力が欲しいだけだからである。
しかし残念ながらこの真実は明かされない……エルリヒトもエルノックも知るべきでない過去など意味がないと思っているからである。
約束の地に行ける場合になったならば『行くか残るか』各々が決めれば良い事だと理解しているのだった。
「ヘカテイアの言ってた呪いの話ですよね?」
「うん?そうかつい口を滑らしたのであろう。後程話す時間は大いにある。今は森エルフの姫・ユイの細分化された魂の回収と月エルフのモアの魂を元に戻す方が先だ」
僕はユイに関しては理解していたが、モアの件はもう話が済んだと思っていた。
「モアは魂が引き裂かれた後その魂は108日後に消滅する。残り92日と言ったところだ。ユイは………それ以下だろう」
エルノックのとうとうな発言に皆がモアを見る………
「アンタ………ずっと隠してたのかい?」
「何よ?ヘカテイア………私に残された時間が後どれくらいなんか………自分自身でも分かるわけないじゃない!」
「これが月詠の結果って事なのか?おいモア………テメェ俺達にまで黙ってるとかそれは…………」
そう言ったボーはユキを見る。
「オメェまで知ってたのか?」
「違うわ知ってたんじゃない……魂が抜かれて持つ期間は決まってる49日後に消滅するわ。でも……モアの場合切り裂かれた魂なの……」
僕はユキとエルノックに、皆にわかりやすい詳細を話す様に言う……
難しく遠回しな言い方では後々問題が大きくなるからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。