第1183話「元老院の記憶とヘカテイアの過去」
1人の最長老は、はるか昔に穢れを抑え込めなくなり処分され10名の元老院体制になった。
そして9名の長老は各エルフの国を裏から操った。
そして問題の最後の一人は…………穢れの世界に渡ったのだ…………それがヘカテイア………
元人族にしてエルフに自分を作り替えその頂点に君臨した者。
天族と強い関係を持ち、現時点では相剋の為に天族を殺せない穢れの女神……それがヘカテイアだったのだ。
「ヘカテイア………君は…………」
「ヘカテーがどうした?おい……チィ!!気を失ってやがる…………テメェは………どうして何時も迷惑を!」
「だから言ったじゃない!迷惑しかかけない奴それがヒロよ!!」
チャタラーは倒れる僕を見て怒鳴るが、その次の瞬間聴き慣れた声に驚きを隠せなくなる。
「テメェは!?……サイキにシリカ………ローズガーデンの持ち場はどうした?何故エルフの国にいる?」
「決まってるでしょう?無茶する奴を放ってはおけないもの………ねぇ?シリカ」
「そうです!絶対何かかやらかすと思って面被りの中に潜んでました!」
チャタラーは『潜んでましたじゃねぇよ』と呆れ果てる。
何故なら大変な状況下であっても表舞台に出てこない我慢強さ………
そしてサイキは『チャタラーかヒロに何か問題が起きるまで出る気は無い』とハッキリ言う始末である。
既に起きていた事は『問題』では無いのか?と思ったが、無駄だと感じたチャタラーは言葉を飲み込んだ。
何故ならチャタラーの記憶には、サイキも問題児にカウントさせているからだ。
ヘカテイアやマモンは悪魔なので好き勝手に物を言うが、それ以上に意味がわからない存在が『ヒロの取り巻き』であると理解している。
チャタラーはあえて放置を選んだのである。
何か言えば100倍返しで、文句を捩じ込まれるのは百も承知しているからだ。
「おいサイキでもシリカでもいい。コイツを回復させてやってくれ。俺はここいら周辺の後始末が残ってるからな!」
そう言ってチャタラーはフレッシュゴーレムと戦いに行く………
「全く世話が焼けるわね………シリカ貴女の弟弟子は………」
「本当にその通りよ。でも姉さん的には、その迷惑もまんざらでもなさそうだけど?」
「そりゃそうよ。毎日が地獄だったのに一気に忙しくなったんだもの……もうバカばっかだなんて泣き言を言う日が来るとは思わなかったわ」
そう言ったサイキはシリカに『さぁちゃっちゃと回復させて役目を果たしましょう?』と言う。
◆◇
「う………意識を失ってたのか………」
「何があったの?貴方が意識を失うだなんて……」
僕は悪魔化した時の弱点である光魔法と、この王国にある魔法増幅機能をサイキとシリカに説明する。
しかし今はその問題より消滅させた元老院の二人に問題がある。
たしかに腕と共に消滅させたのだが、この王国内に彼等の特有な気配が残っているのだ……
「おかしい………元老院のエルフォイアーとエルリウを消滅させたはずなのに………より強く奴等の繋がりを感じる………」
サイキは『繋がりを?』と不思議な顔をして僕をみるがたしかに感じるのだ。
「おいヒロ………お前あのゲテモノを取り込んだのは失策だな……奴等と混ざったんだよ」
「混じった?どう言う事?」
チャタラーに説明では、どうやら本体ではない分身のようなものを取り込んで消滅させた所為で、その繋がりを一方的に得たのだと言う。
相手の細胞からできた分身であっても、彼らが経験した記憶は保持しているそうだ。
それは当然だろう、そうでなければ行動に当たって支障が出る………
僕はその細胞の一部を手に入れたため、何かしらの繋がりを得たそうなのだ。
どうやらその感覚からすれば、彼らはどこかで生きている………それもこのエルフの王国で………
「今度こそ本体を叩こう………被害が増えてからでは遅い………」
「そうだな………お前の感覚だけが頼りだが……おそらくいる場所は元老院で間違いはないだろうがな………」
僕はチャタラーの言葉に従い、その居場所を逆探知する………
「たしかに………奴等から奪った記憶と居場所が一致する………居場所は元老院で間違いない」
「どうしたの?その情報に何か問題でも?」
問題は大有りだ………記憶を奪うと言う事は彼らが成そうとしていた事まで全てがわかるからだ。
彼等はベンヌ神殿からベンヌの宝寿を奪った後、自分達の為の宮殿を作ろうとしている。
それも永続的に生き返りが決まった後、今度はフェニックス神殿を狙っているのだ。
目的は当然『約束の地』へ行くためだ………その場所はなんと『現世』僕達異世界人が住まう土地なのだ。
その根底にあるのはあの狭間で一緒にいた女性………彼女の言葉が根底にあったのだ。
『化け物がおらず戦争のない国………食べ物が豊富で戦うための魔法も必要なく、仕事を探せばすぐ見つかり、毎日満足する食事が苦労もなく得られる』
そんな事を彼等はあの女性に聞いていたのだった。
ヒステリックな彼女が飛ばされた時間軸………それはエルフの誕生する前のこの世界………
まさにこの世界に居ない魔法適正が高い種族エルフは、彼女の記憶からこの世界に生まれたのだ。
その問題の彼女は既にこの世界には居ない………
ある日忽然と姿を消した………殺されたわけでも自殺したわけでもない………
彼等のみるその目の前で忽然を消えたのだ………煙のように。
それを見た彼等は『約束の地に帰った』と捉えたのだった。
消えた理由も方法も不明……しかし当然関係している『奴』がいるはずだ。
『ヘカテイア………聞きたいことがある』
僕は陽動作戦に参加中の彼女だけに聞こえるよう念話をする……。
『君は………エルフになる前に人族だった………それも元老院の長老と知り合い………というよりその一人であった……違うかい?』
『チィ………やっぱり記憶を奪ってやがったかい!元老院を取り込んだのを見て、恐らくそこに行き着くと思ったよ!』
そう言ったヘカテイアは僕に念話で『アタシは元人族……そしてエルフの元老院最長老にして裏切り者。だからなんだってんだい?この件には毛程も関わってないっての!』と言う。
確かにそうだ………その通りである。
しかし彼等の事は『誰よりも詳しく知っているはず』なのだ。
『なんで言わなかったですか!?言っていれば………』
『変な誤解を生まずに済んだってか?知った時点でどうせ同じ反応したさ!』
そう言うヘカテイアに僕は言葉を無くす……
確かにヘカテイアは遥か昔に元老院の長老達と袂を分けている。
そして聞きたい情報は得られない。
よく考えればその答えに行き着くはずだ………しかし問題は元老院と袂を分け裏切る行為に至ったかである。
『アタシが奴等と別れた理由だろう?それは至って簡単だ………奴等はエルフを作ってこの世界を敵に回した。そのせいで呪いが生まれた………詳しいことは後で話してやる今は作戦に集中しろや!』
どうやら彼等の行動原理にヘカテイアは一枚も噛んでいないようだった……
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