第1182話「スゥの帰還」
「う………うん…………此処は?………母様に安置されている……ベンヌ神殿!?」
「気がついた!?スゥ………ちゃんと帰ってこれた!!」
「モア!!貴女………無事だったようだけど………エルフではなくなったの!?……随分変化があったようね………私が関わった結果と言うわけよね?」
モアは理由は後で説明するからとスゥへ言う。
確かに今はやることが多い……
元老院の悪巧みを止めて、わざと仕組んだ小競り合いを終わらせねばならない。
その為には必要な要素がある。
スゥの帰還を知らしめる事と、元老院の悪事を全国民に開示する事だ。
『おい!そっちはうまく行ったか?コッチは割と厄介だぞ……陽動作戦の現場に来てくれ……民衆どもを守るには手が足りねぇ』
そう言ったチャタラーは何かと戦っているような口ぶりだった。
『チャタラー?………何がそっちで…………チャタラー?』
僕はそう言うと全員に『チャタラーの方で何かがあったようだ……正門付近の陽動作戦現場にいるようだから行かないと!』と説明をする。
チャタラーの焦り方からすれば、何故かチャタラーがエルフ市民や兵士たちの盾として戦っている様子しか見受けられない。
だとすれば間違いなく、あのベンヌの宝寿が何かのきっかけになっているのだろう。
チャタラーまでの場所は彼の作った黒穴に飛び込めばすぐに行けるが、スゥはエルフ族なので黒穴を通り抜けることはできない。
「モア………スゥを頼むよ。大丈夫貴方こそ気をつけて」
そう言ったモアは『スゥを回復させたら向かうから安心して!』と無邪気に笑う。
彼女の持ち前の明るさには助けられることが多い……
今回も置いて戦いに行かねばならないのだが、その笑顔に僕は救われる。
「じゃあ何があったか調べてきます………スゥの回復をよろしく。」
「ヒロ………ありがとう!何から何まで……でも此処からは周囲の危険を踏まえて行動して!此処はエルフの王国……光の加護が強い場所よ!貴方にとって危険な場所である事は変わらない」
僕はスゥに手を振って答え、黒穴に飛び込む………
「チャタラー遅れたすまない。一体何が?」
「その顔だと無事上手く事が運んだようだな?コッチは若干面倒だぞ?」
そう言われた僕はチャタラーの指差す方向を見る………
すると生命の賢者・エルリウと火の賢者エルフォイアーがフレッシュゴーレムを扱い民衆と戦っていた。
当然だが、フレッシュゴーレムを見た戦士団もエルフ国に民衆も我慢の限界が来たのだろう。
元から元老院が好かれてない証拠でもある。
しかし問題は『仲間同士に戦い』となる事だ。
嘗ての同僚や死んだ家族、場合によっては最近別れたばかりの遺族も居るだろう。
元老院のあるまじき実験を目の当たりにすれば当然こうなるのだが、何故自分から明らかにしたのか………それが一番の謎である。
「もうお前達は用済みだ!我々はベンヌの宝寿を得た。これさえあれば『黄泉がえり』のスキルで何度だって生き返れる!お前達などまた作れば良い!!」
「エルフォイアーでかしたぞ!漸く我等元老院の悲願の一つが達成されたな!」
「全くだ……敵勢力が馬鹿なお陰で上手く事が進んだわい!」
聞き捨てならない言葉を吐く元老院の長老二人だったが、どうやら何か裏があるのは明白だ。
何故なら『自分達の悲願の一つが』と言えば、これから先も何かを企んでいるのは言うまでも無い。
「チャタラー………フレッシュゴーレムを頼めるかい?出来れば彼等を苦しませないでやってほしい………」
「汚れ仕事はお手のもんだ任せておけ。だがお前だけで2人を殺れるのか?」
「問題ない……情けは既に捨ててきた………だが殺しはしない……融合して死より苦しい時間を与えてやる」
チャタラーは『なら行け!』とだけ言って僕を送り出してくれた。
◆◇
僕は44代国王のエルルスと初代フェニックスキングのエルリヒトにとめられた技を発現する。
理由は彼等二人を取り込んで、情報を吸い出したあと二度と蘇りスキルを使えないように消滅させる為だ。
「エルフォイアーにエルリウ僕を怒らせたな………二度とその力は使わせない!」
「な!?………あのガキ………何故あの力を………」
「不味いぞ!!エルリウ………黄泉がえり云々ではない………消滅の力だ………あれは虚無の…………」
そう話している二人だったが、突然目の前が真っ暗になる。
目にも留まらぬ早さで周囲丸ごと捕食されたからである。
彼等を護衛する周囲のフレッシュゴーレム達は、もはや元にも戻れない。
そして意識が塊と化したアンデッドになるくらいならば、僕は安寧を与えようと思っていたからだ。
「お前達には蘇りなど勿体無い。その存在ごと喰らってやる。だが無駄に蓄えたクソみたいな知識は頂く………せいぜい僕の役にくらい立って死ね!」
そう言って僕は体の一部である右腕を自ら切り離す………
「フェニックスキングの力を持って虚無の一部になった元老院2名を消滅させる!!国民一同全員見るがいいこれがスゥ女王陛下に与えていただいたフェニックスに力なり!!」
僕はそう言って『事実をすり替えた』………
虚無化したのは元老院であり、僕はそれをスゥの力で跳ね除けそして始末したと言ったのだ。
自分の力を消滅させるにはコツがいる。
そのコツは既に体験済みである………フェニックスキング達は暴走した僕を光で抑え込み無力化した。
ならば元老院を取り込んだ虚無を光で抑え込めばそのまま消滅まで持っていけるのだ。
「全員!元老院のエルフォイアーとエルリウへ光の魔法を使うべし!元老院は虚無の手先なり。太陽のエルフは精霊の誇りを失ってはならぬ!それがフェニックスキング達の教えである!」
僕はそういうと光の魔法を唱える………正直自分自身にダメージが入るが致し方ない。
そうまでしないとおそらく誰も呪文を唱えないからだ。
『リヒト!!』
「馬鹿かテメェは………闇に光を使えば………テメェも!!……チィ………クソ馬鹿の野次馬ども早く手伝え!じゃねぇと逃げ出すぞ。元老院どもが!!」
『『『『『『リヒト!!』』』』』』
チャタラーの一言で恐る恐る民衆は呪文を使う。
僕は身体から火が立ちにぼり煙を上げるが、恐る恐る魔法を使う周りのエルフ達は何も異変は起きない。
その所為で周囲のエルフ達は間違えた解釈をする。
「あ………あの方が我々が受ける全てのダメージをひき受けてくれている?」
「おい!!あ……あれは………第二代フェニックスキング様のお力だ!!」
「あの方は第二代様と渡り合った勇者様だ!」
「急ぐんだ!!あの方が倒れる前に!!我に光を………『リヒト』」
「「「我に光を!!『リヒト』」」」
次々と魔法を使うエルフ達………僕の誘導はうまく行ったようだ。
エルフの国では、どうやら光魔法の威力は想定以上に大きくなる傾向にある。
エルフと言う精霊種族は光の魔法と繋がりが深く、自国に威力の増幅機能をそなえているようなのだ。
当然僕の身に降りかかるその威力は桁外れなものになる。
何故なら元老院二人を取り込み離さないのは、何を隠そう僕の腕である。
当然本体である僕もダメージを負うのは間違いはない。
そのダメージをもって元老院諸共、腕ごと消し去ろうとしているにだから……
しかし悪いことばかりではない……僕は薄れ行く意識の中で、元老院共の企みが漸く分かった。
元老院はエルフの生みの親………
遺伝子配合で作られた種族それが『エルフの祖先』であり、その創造した親たる11人が元老院だったのだ。
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