第1180話「精霊核とフェニックスキングの秘密」
「これは精霊核の素核と言う……。本来この素核を精霊核に収める事で、我々の持つスキルを相手に与える事ができるんだ」
「ならこれを僕の技術で精霊核に昇格させてスゥに与えれば………」
「うむ……話を聞く限りはそうなるな。その為には残り半分をベンヌ神殿に取りに行かねばならん」
僕はエルリヒトに、『ひとまずベンヌ神殿へ先を急ぎます……天使核の詳細はエルフ国内で起きている騒乱が全て終えた後で!』といって、エルルスから力の源だけ受け取り神殿を後にする。
「おい!いいか?どんな戦いであっても今の力を使うで無い。お前一人で抱えられる力では無い。我々の様なより強き者が居なければ、お前は既に自我を崩壊させ虚無になっていた。その事を忘れるな!」
エルルスはそう言うと、エルリヒトは『やる事が終えた後必ず此処に来いお前の運命はまだ変えられる!』と言った。
◆◇
「帰ってきたわね……あの禍々しい力は何?貴方……歴代のフェニックス王達に何をしたの?」
僕は幻影を避ける様に道を下ってモア達が待つ門の前に行く。
顔を見るなりモアがそう質問してきたので、『悪魔の力』と誤魔化したがそれだけでは収まらない様子だ。
スゥの精霊核の片割れの話が無かったら虚無化の話をせざるを得なかっただろう。
「今は僕の力の説明よりベンヌ神殿へ急がないと!全てを解決した後、神殿にまた行かないといけないから大変なんだよ」
と言って、フェニックス神殿へつづく通路の一部に黒穴でマーキングをする。
これさえあれば後は力を使えば此処に戻ってこれるからだ。
「分かったわ。聞きたい事は山積みだけど今は聞かないでおいてあげる!ベンヌ神殿は何処にあるの?エルフレア」
「双方が向かい合い立てられておりますゆえ、目の前ですが入り口は逆なんです………」
エルフレアの説明では太陽が昇る方にフェニックス神殿に繋がる門があり、ベンヌ神殿は太陽が沈む方に神殿門がある様だ。
恐らくは、この世界に伝わるベンヌの神話に基づいた物だろう。
「遠くても仕方ないです。スゥのために行く必要がある!」
「そうね!誰かさんは結構やばい力を使ったってのに誰も来ない時点で、揺動が成功した証でしょうし……援軍がこっちに来ない間に行くしか無いわね!」
僕らはゴツゴツした岩階段を走りながらそう言う。
ベンヌ神殿は白い壁素材で作られていて、まるで白鷺をもわせる作りだった。
フェニックス神殿は随所に炎が祀られていたが、ベンヌ神殿はそこまで多く祀られていない。
入り口へ向かうと案の定面被り達がいるが何やら様子がおかしい……
「あ……貴方様方が………密入国した精霊の使い様ですか?………」
「密入国した!?………」
「精霊の使い様?」
僕は一人の金面の言葉に密入国と過剰反応をしてしまう……
たしかに人目を偲んでコッソリ入国したが、面と向かっていわれると正直『御免なさい』としか言えないあり様である。
しかしモアは『精霊の使い様』に過剰反応を示しているので、どうやらエルフだった時の気持ちが強く残っている様だ。
そう思っていると、何故か僕ではなくモアが話を進め始める。
「そうよ?精霊女王の友である月のエルフ族モア様よ?それが何か問題でも?そもそもスゥは私の友人よ?密入国も何も友に会いに来て何が悪いの?」
僕はギョッとしてモアを見るが、確かにスゥはいる。
チャタラーがおぶっているので、まるで疲れて寝ている様に思えるが、実は死んでいる。
そしてモアの真後ろには何故かアンバーが居たので、どうやらモアが何か約束を取り付けたのだろう。
モアは本当に、非常に抜け目のない女性だ。
しかし面被り達は武器を放棄し、自分の面を投げ捨ててモアに縋り付く……
「月の姫!モア様良くぞご無事で!!………自分達は精霊が…………見えな行くなったのであります!!」
「そうです!元老院の手によって………うぅぅぅぅ………精霊様が感じられないのです!既に………何も……」
「元老院は月エルフや太陽族大地族に為にと言いましたが……全てまやかしです!!うううう…………」
僕がアンバーに手助けをする様に言おうとするとモアが割って入る。
「ならば今日から貴方達は穢れし精霊女王を崇拝しなさい!我が崇拝する精霊女王を!そしてエルフとして胸を張って生きるのです!!」
そう言ったモアは、『エルフの民に自分が受けた仕打ちを話してきなさい!そうすれば信仰の証として受け取りましょう。酷い目にあった話をするだけで元に戻れるんだから悪い話ではないでしょう?』と言う。
やはりモアは抜け目がない……情報が薄い民衆や藁にも縋りたい面被りを利用して、情報操作までし始めるのだから『どちらが悪』か一見するとわからなくなる。
どうやら今エルフィーナ王国で問題になっているのは、モアの作戦も一枚噛んでいる様だ。
恐らくは街の中心部でも騒乱でも起きているのだろう。
面被り達は変質した自分を見せて『元老院に従うな』と言い、精霊を取り戻す準備をしている。
そしてアンバーはこれ見よがしに精霊核を復活させ続けている……と言ったところではないだろうか?
百聞は一見にしかずとは言うが、たしかに精霊女王がいて精霊を目前で見れば大きな情報戦になる。
民衆が敵に回らない以上、兵士たちを掌握しやすくなるし、面被り達は敵にはならない。
絶対命令下にある一部恩寵を貰った相手のみが危険だが、他の面被りは以前とは扱う精霊こそ違うがエルフには戻れそうだった。
「モアにアンバー此処の一件は任せていい?僕達は一足先にベンヌ神殿に!」
「大丈夫よ此処は私とユキで何とでもなるし、そもそも精霊女王の不況を買う馬鹿はいないわ」
そう言うと、モアはアンバーにウィンクしてみせる。
僕はそに言葉を聞いて安心した後、ベンヌ神殿に向けて急ごうとすると手を取られて止められる。
「スゥ様のおつき様……ベンヌ神殿には封印がされ『火の賢者が待ち構えて』おります故、十分にお気をつけを!!これは面被りの証の護符です!先途中はコレがあれば回避できましょう!」
「ありがとう面被りの………」
「エルメーラスです!先程貴方様に助けていただき、元老院のあるまじき様を皆に流布しています。今はアンバー女王陛下に精霊を授けていただきました」
どうやら先程助けた面被りの一人だった様だ。
あらゆる手段で情報を集めてきては僕達に伝えているのだろう。
通りでモアは面被達に慕われているわけだ………それが垣間見れる瞬間だった。
「ありがとう護符は大切に使わせてもらう。大丈夫!僕は相手が誰であれ成さねばならない事があるんだ……君達は自分の役目をこれからも果たしてほしい」
そう言って僕はベンヌ神殿へ向かった。
◆◇
「なんだか騒がしくなっちまったな……お前がいるといつもこうか?ヒロ………」
「ボーと言ったな?コイツはいつもそうだ引っ掻き回しぐちゃぐちゃにしやがる」
「くははははは!暇しねぇな……まぁ毎回それだとお前見たく笑いしかでねぇ様になるんだな?チャタラー」
そう言いつつ二人は僕がベンヌ神殿へ向かうのを手伝う。
神殿前に元老院の長老が居座っていると思われたが、意外にもその場に居なかったので嫌な与予感は的中した様だ。
恐らくは何かの手段を用いてベンヌ神殿内部にいるか、僕達が入れない様になっているかの何方かだろう。
しかし鑑定の結果、結界の様なものは無い。
ならば後者であることはないだろう。
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