第1179話「エルフ族の役目」
『どういう事ですか?エルリヒト様………我々の役目とは?』
『元々月詠の力は我が妻であるアルテナが持ちし物……その力が周り巡って月のエルフ・モアに渡された様だ』
『な!?月の?何故………いや今は行方の質問をするべきではないですね……これが運命ならどの様な役目が我々に?』
エルリヒトはアルテナの言葉を思い出す。
かつてエルリヒトに対して一度だけ言った言葉………『異界の太陽が黒く染まる時、我等が原始の太陽は力にてその光を取り戻さん』という言葉だった。
エルリヒトはそれを全員に説明する……
『原始の太陽とはエルリヒト様ではありませぬか!!』
『うむ………恐らく今日の日まで思念体として生かされたのだろうな……』
『ならば我々の意味は?』
『うむ……エルルスの言葉とアルテナに言葉で思った事だが……我がお前達を導き、お前達は誤り捻じ曲がってしまったこの世界の秩序を正す役目……というべきか』
『しかしエルリヒト様………それでは』
エルリヒトは変貌するかつて少年だった虚無を前に全員に戦闘態勢を支持する。
エルリヒトは指示役、第二代フェニックスキングのエルーメンと第三代フェニックスキングのエルダウが攻撃、残る41人は第44代フェニックスキングのエルルスを起点に『光魔法』で虚無を光で押さえ込む作戦だ。
全方向から光を照射して虚無の移動を防ぐ。
そしてエルーメンとエルダウの最大奥義の攻撃でダメージを与えた隙にエルリヒトが自我を引っ張り戻す作戦だ。
『いいか……この作戦が失敗したら虚無の本体が呼応して復活すると考えて間違いは無い……』
『『『『虚無の本体が』』』』
『そうだ!穢れの世界で動きを封じていると聞いたことがある……アレは恐らくその欠片と言ったところだろう……本来は味方な筈だが………』
「何故……その虚無の欠片が敵に!?』
エルリヒトはその質問に『元老院の卑劣極まりない行いと、我々の築いた過ちの大きさにあるだろうな』という。
『もはや向こう側に意識はない……全員持ち場につくのだ……やるぞ!成功せねばこの世界は終わる!!』
『『『『『『承知いたしました!我等が太陽神様!』』』』』』
『喰らう………光も闇も………生命も精霊も……生も死も………等しくこの世界から喰らい等しく虚無へ堕ちるべし!』
『虚無に意識がある時点で危険だぞ……エルルスお前が光魔法の起点となる……いいか?絶対にしくじるな!』
かつて僕であった物はホムンクルスを核に周囲を飲み込み肥大する。
意識は既になく、開け放たれたパンドラの闇の様な物だった。
その希望はスゥの父であるエルルス……
名前の意味はエルフの光……
今彼は漆黒の闇と対峙しており、自分の光を信じてエルリヒトの支持を待つ。
『我が闇を……我が中心から虚無の波をこの世界に!!』
そに言葉にエルリヒトは叫ぶ……
『エルルス!!今だやれ!!』
『歴代の王達よ我に従い、光の波を!!…………グアン・ウシュック!!』
『『『『グアン・ウシュック!!』』』』
左手を掲げ、光を制御するエルルスその光に合わせる様に全員が光を照射する。
その光の線に従う様に巨大な光の波が周囲を覆う。
エルルスの放った光は見事に虚無を捕縛した。
捕縛できた理由は『完全な虚無』ではなかった事が理由となった。
何故なら虚無の欠片が僕である以上、その中心には僕がいる。
僕が飲まれた事でその中心が逆に明確になったのだ。
虚無の核となった僕は光呪文で捕縛され、周囲の闇と切り離される。
結果虚無は僕という力の源を失い四散…………
エルリヒトの機転でエルーメンとエルダウは攻撃体制を解除して僕の保護にあたった。
何故なら僕と言う核を失う事で、虚無の欠片が自由になる事を恐れたからであった………
◆◇
「どうするのですか?エルリヒト様……まさかこのフェニックスの間にまでこの者連れてくるとは!」
「仕方がないのだ。エルーメンにエルダウ」
「う………うん……何故此処に……僕は?負けたのか……力を使って………何かに飲まれた…………」
「動くでない……此処は神殿最奥部、精神の間だ。お前の力は今封印している最中でな……悪魔の力はともかく闇の力特に虚無の絡みは封印せねばならん。お前達もよく聞いておけ!我々が対処すべき問題……それは生半可な事では対処できん」
そういったエルリヒトは『もはやこの者には、我々の光を与えねば力の制御ができず、いずれ暴走した此奴の力で世界は崩壊する』とフェニックスの間にいる歴代の王達に話す。
理由は簡単だ……僕は力を解放した。
悪魔の力に、事もあろうか全力の虚無の力を乗せてしまったのだ。
その結果、両方が混じり合った形で形を成してしまった。
その力は既に自分に酷似した自我を持っており、僕の『破壊衝動』を具現化する存在になったわけだ。
その力を制御する為には逆の力が必要となる。
それがエルリヒトの言う『フェニックスキング達の力』である。
エルリヒトは僕に、精霊核と天使核を作るべきだと言う。
精霊核はエルリヒト達が得意としている分野で、次代のフェニックスキングに作り出す例のモノだ。
しかし天使核はおいそれとは手に入らない……天界への門へ行く必要があると言う。
その天使核とて普通に手に入るものではない。
何故なら生命1個体につき、核は一つだからだ。
それは巨人族が管理する霊峰になるそうだが、現時点で行く道は小国郡国家を通過して行かねばならないと言う。
何故ならドワーフ国内に大きな問題が起きていて、エルフ国と人族に宣戦布告をしたそうだ。
当然だが恐らく以前撒かれた種が目を出したのだろう。
ドワーフ王国のドッペルゲンガー問題は、最悪な形で結果を出してしまったと言うわけだ。
だが問題はそこだけに収まらない。
当然だが精霊核の問題はフェニックスキング達の問題にも直結する。
僕がそれを得ると言うことは、当然だが誰かが僕のために尽力してくれなければそれは成り立たない。
当然だが周りは反対の声を上げる………
「しかし………人間が我々の精霊核を?それも我々フェニックスキング達の?」
「エルーメン問題はそこではない……此奴は人間をやめ悪魔になった……その上、肉体はホムンクルスで核には魔王核と悪魔核がある事だ」
「なんですと?核が2つも?それも魔王核と悪魔核!?」
当然エルリヒトに言葉に周囲は驚く……
本来核はひとつだけなのだから……
それもその核一つがエルフの天敵で、一つは地上の生き物の天敵ともなれば話はややこしくなる一方だ。
しかし『今はホムンクルス』の身体であり、戻る手立てさえ見つかれば精霊核と龍核が元に戻るのだ。
結果からすると、僕は核が5種類も揃った化け物となる。
「すいません……実は昔の体には他にも核があって………精霊核と龍核が………」
エルリヒトは僕の一言で頭を抱えてしまう……
そしてエルダウは呆れつつも一連の詳細を事細かく話す様に僕に言い付ける。
しかし残念ながら悠長に昔話をしている余裕は、今の僕にはないのだ。
何故ならスゥの蘇生問題は解決していないし、付け加えるならば自分自身の問題を増やした結果となる。
「ひとまずこのエルフ国では問題が起きてます。それを解決してからではダメですか?」
「無理だ!と言いたいところだが……事の発端は我々の怠慢だ……申し出を飲もう」
エルリヒトはそう言うと、光り輝く球体を僕の方へ向けた……
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