第1178話「フェニックスキングとの決闘」
この問題はフェニックスキングが元老院を放置した事で起きた問題だ。
彼等が政治を真面目にやり、民衆を第一に考えていれば面被りは生まれなかったし、スゥは死ななかった。
「お前達は死んで尚周りが見えてない!!スゥは命をかけて戦ってる娘だぞ?そもそも元老院をのさばらせたのはお前達じゃ無いか!政治をせず放置した張本人がお前達フェニックスキングだ!」
『何だと?悪魔風情がエルフの申請なる場に来て………世迷言を!』
「世迷言を……だと?お前達にせいで精霊核を失い彷徨い続けている民衆に、金面まで被る羽目になったエルメーディアの様な存在だって何人も居る………それを世迷言だと?文句があるならかかってこい!!この僕がお前達など消滅させて二度とこの下らない儀式などさせない!!」
僕は初代フェニックスキング・エルリヒトと、そのお供として現れた二代目のエルーメンそして三代目フェニックスキングのエルダウに決闘を申し込む……
『この場に悪魔のお前がいる事自体前代未聞なのだ……我等が太陽エルフの恥はここで拭う!』
「僕は精霊核を無くした者達の代表としてお前達に謝罪させてやる!!三人纏めてかかって来い!僕はもう力を隠さない。僕はお前達と違ってくだらない言い訳などしないし、仲間に為に戦う勇気を持っている!お前達とは違うからな!!」
『潔し!ならば受けてたとう悪魔付きの人間よ!!』
「僕の120%の力を見て……吠え面かくなよ!!」
そう言ってから、僕は穢れの力を放出させる。
身体が痺れる感覚に陥るが、お構いなしにありったけの力を注ぎ込む。
おそらく悪魔にとっては不利な戦場なのは間違いがない。
しかし規則や伝統に囚われたせいで、多くのエルフ達が犬死したのだけは許せない。
そして今度は大切なスゥの蘇生にまで関わってくるなら、『そんな祖先僕が誰一人消し去ってやる!』と心の中で願うとそれは力の塊となって噴き出した。
自分自身のホムンクルス核が噴き出した穢れの瘴気は、辺りの灯りを蝕み消し去っていく。
おそらくその炎の灯りが僕のステータスに影響を及ぼしているのだろう………
まるで生き物のように這い進む穢れの触手は、あっという間に全ての灯りを飲み込んで、エルフの優位性を全て奪う。
「いくぞ!!ヘカテイア直伝の暗黒魔力の大渦を喰らえ!!クラウドネス・ノクターン!!」
『リヒテクス・カーバンス!』
僕の暗黒魔力の大渦は相手の光属性の魔法を軽々と飲み込み、相手諸共黒い大波の中に飲み込んでいく………
僕は『勝利を確信した』………その時だった……
突然の異変を感じたのだ………
『力を………使え………全てを飲み込め………灯りを消して………生命を飲み干せ!………この世界に………生命は………不要!!』
「な………なんだ!?この………頭に響く声は………飲まれる………クソまずい!!自我が喰われる………何だこれは!!」
僕は慌てふためきつつ、魔法を継続する………
しかしその継続の意思は僕の物ではなく、声の主の様な『他者の関わり』を感じる有様だ。
「邪魔をするな!!お前が誰かは知らないが………スゥを救う…………スゥ…………がぁ!記憶が?顔が思い出せない………何だこれは!何が………まさかホリカワが?」
『違うぞ人間………それは虚無だ!!』
初代フェニックスキング・エルリヒトの言葉に僕は耳を傾ける。
その虚無の言葉が僕を支配している以上、この影響はここだけに止まらないとエルリヒトは言う。
『このままアイツが虚無に侵食されればエルフ王都は消滅する。エルルスにエルーメンお前達は奴の魔法の掌握を!エルダウと私はあの少年の制御をする。いくぞ!!』
『『『はっ!!』』』
その言葉を聞いたのを最後に、僕は虚無という真っ黒い海の底に意識を持っていかれた………
意識を失った僕は既に虚無の中に埋もれてしまった。
僕に代わって意識を得たのは虚無の方だった……
しかしその虚無に何故か僕の意識が反映されている……
『破壊衝動』………エルフの元老院が行った悪行……それを破壊したいという気持ちの表れからだった。
『喰らえ!………光も闇も形あるもの全てを喰らい無に返せ』
『エルリヒトの命により歴代の王達よ試練の場に集え!!敵襲だ』
エルリヒトの念話は各王に飛び、すぐに駆けつける。
フェニックスの神殿に祀られた魂達は眠りにつく事が多い。
王の力を得るため資格者が現れたとしても、44代全員と戦う事はほぼあり得ない。
そもそも自分の戦い方に必要のない物を貰うことはないのだ……
その様な事例の場合該当するフェニックスキングは次の自分の出番までは眠るのだ
そんなエルリヒト様の招集………かつて一度も無かった事……が今日人間の子供によって引き起こされたのだった。
◆◇
『相手に詠唱の隙を与えるな!弓部隊は的確に的を狙え!!』
『エルリヒト様の護衛は槍持ちのみで構わん……大剣持ちは我エルーメンと来い!波状攻撃でエルリヒト様の攻め込むチャンスを作る』
『『『『おう!!』』』』
力関係が明確なのか、第二代エルーメンの言葉に他の王達はすぐに従う。
戦闘感というものが大きく影響しているのは確かな様だ。
歴代の王達の中でも、身体に傷が多くあり多くの戦闘をしてきたものと思える者は前線で戦う。
それ以外の者は一歩出遅れる感じになるのだ。
しかしそんな戦闘でも虚無化した僕にはダメージが通らない……
何故なら虚無の闇そのもので身体が覆われている為だ。
元に数人の持つ大剣や槍は、虚無の侵食で既に使い物にはならない。
しかし相手はそのことを踏まえた上で、距離を保ち戦闘をしていた。
要は『逃げ撃ち』だ。
「ちょこまかと邪魔だ!闇に飲まれよ!テネーブル・アンカー!」
『この攻撃は全員回避!!槍受けと剣受けもならん!!刺されれば虚無の深淵に引き摺り込まれるぞ!』
「チィ!!小賢しいのが2……いや3人か奴らさえ潰せばジリ貧だな……まずはお前達から喰らってやるわ!!」
エルリヒトはなんとか攻撃を躱すも撃つ手に全く実感が無い。
まるで無限に出てくる闇を祓っているだけで、敵の本体に掠ってもいないと言う感覚が手にあったのだ。
『エルリヒト様……アレは本当に虚無なのですか?』
『間違いない……何故あの者に潜んでいたのかは分からぬが……我々が呼び水になったのは間違いがない』
そう言ったエルリヒトは、スゥの父であるエルルスに一連の事情を聞く。
エルルスはエルリヒトに元老院には既に精霊の齎す恩恵がない事を全て伝え、元老院の最長老が既に行方を眩ませている事を伝えた。
現在確認されている長老は太陽エルフ族に3名、月エルフ族の3名そして大地のエルフ族に3名なのだ。
しかしその長老を治める最長老が、何処の元老院にも確認されていない事が判明した。
各国の姫達は、状況が刻一刻と悪くなる国内と元老院のつながりを察知し手を打った。
そして太陽のエルフ国ではエルフレアに密命を出したのだった。
スゥを助け、元老院の悪巧みに対処せよと………
その説明をしたエルルスはエルリヒトに謝罪をする。
自分が元老院へ対処していればフェニックスを宿すスゥは生きており、目の前の虚無は存在しなかったと。
しかしエルルスにエルリヒトは言う………『これは運命であり自分達の役目がいよいよやってきた証』だと………
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