第778話「天邪鬼な奴」


 正座でお小言中のマモンは言い訳を連発していたが、ミミの一言で観念した様だ……



「おい……ミミ、俺までとばっちりは勘弁してくれよ!既にユイナを怒らせちまって、飯のお預け待った無しなんだからよぉ………」



 ヘカテイアは呆れた様に……「自業自得だろう?アタシがアンタの分まで食べておくから安心しなよ?2倍食えてアタシはラッキーだからさ!」と言ってから鼻で笑う。


 しかしマモンにも想定外の許可だったのかもしれない……


 その為マモンは、ユイナに平謝りで赦しをもらっている……



「いや……ユイナさん、まさか俺だってアレで許可が降りるとかおもわねぇし……。アーチがよく言うじゃねぇか?『お茶目って大切ですよぉ〜』ってよぉ……だから少し雰囲気をだな……。なぁ……飯だけは勘弁してくれよ………。碌に戦えない暇なこの現状で唯一の楽しみなんだよぉ〜……頼むよ〜」



「貴方は私に謝る前にシャインさんに謝るべきでは?謝罪が足らないからご飯抜きにしてるんですよ!今の私が貴方にできる一番の嫌がらせはこれでしょう?謝罪も無しにご飯を要求するなんて……なんて厚かましい!!1日じゃ足りませんね……3日……いや7日は無しにしましょう!!」



「ちょっと待ってくれって、あの双姫は双姫って言うくらいだから双子なんだよ!だったらよう。俺の契約者の中にいるあのフランメとか言う片割れの方が良いじゃねぇか……同属性の精霊は2体はもてねぇし!」



「マモン……どう言う事だい?ちょっと詳しく説明してみな……。もし良い情報だったらアタイがユイナに口利きしてやるから全部知ってる事を吐きな……」



 エクシアが若干助け舟の様なものを出すと、マモンはそれにすぐさま飛び乗った……



「あのフランメとか言うのがヒロの中に居れば、人族との親密性は上がるんだよ。だからヒロと相性の良いシャインに移した時には、あの女は間違いなく精霊使いになれんだよ!そう思うだろう?なぁフランムお前も言えよなんか……助けただろう?俺たちでお前達を……」



「お前……飯如きで……よくもまぁ全部話せるね?……まぁ良いや……それは本………」



 エクシアが本当か聞き正そうとした時、シャインがエクシアを押し退けてマモンに飛びついてきた……



「!?………どういうことですか?ヒロさんの中の双姫のフランメと契約を結ぶと、実際どうなるんですか?そこを詳しく教えてくれるなら許します!!」



「いや……お前とヒロは相性がいいんだよ……。精霊譲渡は互いの相性によって移動に問題が生じるんだ。だがお前達には信頼関係がある分、それが無いから精霊がお前を気に入ればそのまま移動できるて事だ。だからヒロができる炎系魔法やスキルは、全部お前に引き継がれて即使える。精霊使いって呼ばれる奴の特権だ。だから精霊使いのヒロからフランメを引き継がれた瞬間、精霊が契約を認めればお前は精霊使いになる……これで良いか?」



「!!………フランムさん、寧ろそれでお願いします!!どうすれば彼女は目覚めるんですか?………私……なんでも手伝います!この人と繋がるなら……何でも!!」



 フランムに鬼気迫る表情で飛びつくシャインを、ヘカテイアは頑張って引き剥がす。


 そしてクルリと自分の方を向かせると、説明を始めた……



「シャイン、それなら問題ないわよ?彼女は眠っているだけだから、いずれ目を覚ますわ。何せマモンがそうなる様にヒロの中に入れたんだもの!素直じゃないのよ……この悪魔……。だから待ってれば、必然的に貴方に受け継がれるわ……」



「「「「え!?」」」」



 ヘカテイアの予想外の一言で全員が驚くが、マモンは余計な事を……と言う表情をする……



「だから………マモンはわざとフランムの行き先を『ミミ』にしたって事よ……。精霊力を取得出来ないフランムは、このままだと精霊界に帰らなければいけない。そうすると彼女は自力ではこの世界には来れないの。ちなみにその理由は簡単よ?呼ばれないと長く居座れない。それが上級精霊の掟よ?」



「ちょっと待ちな……ヘカテイア……。じゃあそれを知っててマモンは?」



「ええ、エクシアその通りよ?でも問題もあるのよ。フランム……彼女の器になり得る素質があるのはヒロ、エクシア、ミミの3択しか無いの。でも規格外のヒロはフランメの格納で精霊核がもう埋まってる、同属性は既に取得済み。中級種のサラマンダーがいるでしょう?だから上級のフランメは目覚めたらヒロから出て行かないといけないの」



 全員がそう言えば……と思い、僕の足元をチョロチョロ走りまわるサラマンダーを見る。


 普段は小さいながらも、いざとなると精霊力を使い巨大化する不思議なサラマンダーだ。



「そして精霊契約はしていないエクシアは、精霊枠と許容量こそあるものの……チャンティコの関係で精霊力が不足してしまう。残ってるのは誰かしら?って事よ……」



「ヘカテイア……ちょっと待ってくれるかい?……そもそもフランメもフランムもシャインには移せ無いんじゃないかい?アタイ含めて三人が器の適合者なんだろう?」



「……エクシア良い所に気がついたわね?器たる核問題は……姉のフランムについてよ。妹は姉に比べて選択肢が広いわ……。彼女はサポート型、姉のフランムは攻撃型なのよ……。そもそも姉妹で必要な器となる精霊核の大きさが違うの」



「はははは……なる程ね!って事は……そもそもフランメの希望ではシャインを選べなかったって事なんだね?」



「一言で言うとそうよ……それを知っててマモンは、コッソリ自分の計画にミミを利用したの……。ユイナさん、こういうのってなんて言うんだっけ?」



「わざと馬鹿なふりをして見せる……?……ピエロって言いたいのかしら?……」



「そうそう!ユイナさんソレよ!実はコイツ意外と気を回すのよ……一緒に行動し始めて、最近気が付いた事なんだけどね?まぁ向こうの世界で配下から人気があるのも頷けるわ……。7君主なんかやってるくらいだから傲慢かと思ったけど、意外とそうじゃ無いんだから……」



「ヘカテイアの言うことが本当なら……マモン……貴方、よく考えるわねぇ……。失敗しない様に心遣いなんて。貴方それでも本当に悪魔なの?まぁ良いわ。ご飯抜きは勘弁してあげるわ!それにしても……素直じゃないわ。ヘカテイアの言う通りよ?」



 マモンは『ウルセェな……。気なんか……回してねぇよ偶然だ!偶然……』と言ってから『あの宝はいらねぇのか?消えちまうぜ?』と言って試練の間を指さす。



「うぉぉぉぉ!?宝箱が出てるではないか!!マモン、其方はやはり間違い無く良い奴だぞ?……ヒロ男爵よ!申し訳ないがモノクルを貸してくれ!チャック、悪いが罠解除と解錠を頼む。礼ははずむぞ?」



 マックスヴェルは雛美の件より宝を優先した……



 ◆◇



「エクシアさんこっちの準備は出来ました。いよいよ目的地の火焔窟最下層ですね……」



「そうだね。色々あったけど最後まで気を抜かずに行こう。危険な場面は山ほどあった……でも死人は出ちゃいない!運がこっちに向いている証拠だ。全員準備は良いかい?じゃあ……今までの魔物とは遥かに危険度が違うけど、最下層のグレーターミミック討伐に行こうか!」



 若干拍子抜け感を出している皆に、エクシアは檄を飛ばす……



「おら!テメェ等腑抜けてて失敗したら死ぬんだぞ?魔物のランクが低くても最下層にいるって事を忘れるんじゃ無いよ!!」


 しかしその檄を聞いても魔物のグレートが今までに比べかなり低いので、余裕で討伐できると言う空気が抜けない。


 その良い例がソーラー侯爵だった……

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