第746話「エルオリアスとエルデリアが放つ圧倒的な力」
「エクシアさん来ます……アレを仕留めないと下層へは降りれません!!」
「見りゃわかる!!こうなったらチャンティコを化現させて纏めて焼き払うしかないね……」
僕達がそう短い言葉でやり取りをしていると、クヌムは空中で極大呪文を行使する。
『エレツ・ペールハルバ!!』
次々に地面から木槍が突き出しては、マザー種の土手っ腹に突き刺さりその直後に爆発する。
身体の奥深くで木片が爆散するのだ……マザー種とてたまったもんではない。
堪らず絶叫する……
「グギギギギギ………ガァ…………ギギギ!!」
その槍はアーマー・マザーロックビートルの真下を中心にして、周囲へ波紋の様に広がっていく。
突き刺さる木の槍は非常に太く、槍1本の太さは5メートル位あり長さはその3倍近くある。
しかし周りに行くに従って、槍の太さと長さは小さくなっている。
効果範囲は発生地に近い程大きく、遠ざかると次第に効果が薄くなる様だ。
しかしその木槍は、マザー種が周りに放ったアーマー・ロックビートルにしては十分な大きさだ。
「ギギィィ!!」
「ギィ!ギギギィ!!」
「ギュ……キュィィィ……」
刺さってはその木槍が爆発するので、マザーが放った個体もみるみるうちに減っていく。
エルオリアスが化現させたフロスティに至っては、自分がマザーに放った氷の礫の上を飛び跳ねて向かっていく。
氷の礫といっても、その大きさは15cmはあるのでもはや氷塊といった方が良いが、その撃ち出す量が異常な量なのだ。
飛び回るその先でまた氷塊を飛ばしては、その上に飛び乗り跳ねてマザー種まで近づくと、両手をアーマー・マザーロックビートルに向けて呪文を詠唱する。
人間やエルフの様に詠唱呪文など唱えずそのまま魔法を行使するので、さすが氷の精霊と言った所だろう。
『ガンドゥフェン・ターゼィーブオーダ!!』
マザーは足元から凍りつく……大きいせいでなかなか全身に効果が及ぶのが遅いのかと思っていると、相手を凍らせる魔法ではない様だ。
その足元から周囲が凍り始めて、あっという間に巨大な氷塊になる。
中には魔物の敵性反応が残っているので生きてはいる様だ。
その氷塊は如何やら中が空洞の様だが、内部では何かが起きている様だ……マザー種の生命力を示すHPゲージがゴリゴリと減っていく。
暫くするとその氷塊が砕けて中からマザーが姿を覗かせる……
しかし足の一部は既に凍りつき、それを無理に動かしただろう形跡があり根元から砕けて折れている。
鉤爪も腕の付け根が氷ついたせいで意味をなさず、全く動かせない様だ。
突然氷塊が砕けて目に前にフロスティを化現させたエルオリアスが現れた事で、マザーは攻撃を加えようとその凍りついた腕を無理に持ち上げる……
『ミシ………ベキ……ベキベキ………グジュ……ベキベキ………』
振り上げた勢いで氷と化した部分が砕けて、根本から砕け始める。
「虫は如何でかくなっても虫なんだ……身の程を知れ!」
エルオリアスは振り下ろされる巨大な鉤爪を最も容易く受け止める。
そして砕けて内部が見えているマザーの腕に向けて、氷の刃を生成して撃ち込んでいく。
無数に射出される氷のダガーは、残されている体組織をどんどん切り裂いていく……
「邪魔くさい腕だな……折角凍らせて動かなくしたのに内部までは凍らなかったか。虫は虫でも腐ってもマザー種だな……」
そう言ったエルオリアスは鉤爪ごと捻りを加えて、その後勢いよくマザー種の傷だらけの腕を引き千切る。
内部の繊維組織も凍りついた部分があったせいで、そこに無数の氷のダガーを受けてもはや動かすこともできなかったが、そこにエルオリアスの力が加わりミチミチ音を立てて引きちぎれてしまった様だ。
エルオリアスはそれを周囲に居た群れ目掛けて放り投げる……
『ドッ!!……ズズン………』
突然飛んできたマザーの腕に押しつぶされる個体も多数居たが、エルオリアスの目的は進路妨害だった。
見事に行く手を遮られ迂回せざるを得ないアーマー・ロックビートルは突如、巨大な氷塊に押し潰される……。
マザーの場合は巨体すぎるので効果は薄いが、マザーに比べて遥かに小さい個体であれば押し潰すのは問題ないと言ったところだろう。
次々と落ちて来る氷塊をその身に受けて『メチメチ……ブチ……』と音を立てて、押し潰されるアーマー・ロックビートル達。
「無数に居るな……まぁ半分近くは押し潰したから残りは氷漬けにして終わりだな……」
エルオリアスはそう言うと、魔法も使わずに周囲にいる魔物を凍結させていく。
「マジか!?フロスティに触られた奴は氷の彫像になるって話は本当だったなんだな……。子供達が怖がる童話は真実か。それにしてもアタイの持つ属性は反対属性だからエルオリアスとは相性悪いんだよな……まぁそうそう出会う輩じゃ無いから良いけどさ!」
どうやらフロスティの凍結能力については、エクシアも知っているらしい。
エクシアは力試しでもしたいのだろうか?……そんな言葉を織り交ぜて話している。
そんなエクシアは、視線の先を変える……残る最後のマザー種の方へだ……
「アタイ達もエルオリアスとエルデリアにおんぶに抱っこしてる場合じゃ無いね!あそこに居るもう1匹を………ってマジか!?あのアシュラムってバカ……ミミの影響受けすぎじゃ無いか!?」
エクシアが叫ぶのも無理はなかった。
僕達が少し目を離した隙に残る1匹に、たった一人で接近していたのだ。
周囲にはミミが召喚したと思われるスケルトン達が、スケルトンキングの指示の元に雑魚同士の争いをしていた。
そして極め付けは『ボーン・ジャイアント』の召喚である。
『ウォォォォォ!!』
『オォォォォォォォ!!』
ボーンジャイアントは恨めしい声を発しながら、アーマー・ロックビートルを手に持つ巨大な生き物の骨のクラブで薙ぎ払い、時には骨の足で詰み潰す。
「あのボーンジャイアントはミミの仕業かい!?ミミってもしかして魔力は底なしなのか……アンタと同じで?」
「エクシアさん……それを僕が知るわけないですよ……。それより早く加勢に行きましょう!」
僕はエクシアにそう言ってアシュラムのいる方向へ走り出した……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なぁ……アシュラムって確かアラーネアの関係者だったよな?」
エクシアは走りながらそう僕に確認をする。
彼女は器用にも周りのアーマー・ロックビートルの頭を断ち割りながら進む。
しかしカナミもミサも負けていない。
『グシャ!』とそんな音が前で起こると、『ドシュ!!』と脇で聞こえる……
「ミサも凄いねぇ……。あの巨大なクレイモアを、まるで棒切れでも振るみたいに使い熟すんだから……」
そう言われたミサは振り返り……
「エクシアさんには負けますよ。私は話しながら魔物の首を刎ねることは出来ませんから」
「はん!よく言うよ……真っ二つに出来るんだから首刎ねなくてもいいだろう?アンタの場合」
そう言ってエクシアは振り向きざまに、アーマー・ロックビートルの首を刎ねる。
そしてミサは弧を描く様に進行方向にいる魔物にクレイモアを振り下ろすと、背中の岩石ごと真っ二つに割れて息絶える。
真っ二つの大きな体躯から溢れ出た、紫色の体液が周囲にいるアーマー・ロックビートルを引き寄せる。
『ウォーター・スフィア!』
『ウォーター・バレット!』
僕は剣を使わずに、水魔法を連射してどんどん魔物の頭を爆散させる。
にわか仕込みの剣技より遥かに精度が高く、間違いがないからだ。
「弟子が弟子なら、師匠も阿呆だな……何で同時に10匹も仕留められるんだよ?マジでアンタ……狂ってるよ!」
僕の攻撃を見たエクシアの言葉はとても酷かった……
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