第623話「遂に決着!?最凶は悪魔っ子」


 暫くしてゼフィランサスとエーデルワイスは、話し合いで決着するしかなさそうな空気を出しながら街に戻って来た。



 ゼフィランサスが魔の森で起きている一件を話して、エーデルワイスがそれに応じた形になるからだ。



「ゼフィ……あの悪魔の娘は一体なんなの?貴女知った口ぶりだったわよね?急に割り込んできて……って言うか貴女まで投げられてるなんて……ある意味爽快だったわ!」



「エーデル何を言っているの?あれは主人の連れだからうっかり気を抜いたの。誰かさんの所為で苛ついた結果、ブレスを吹く直前だったから気を取られて投げたれたのよ?」



 二人はそう文句を言いならが、衛兵たちのいる門を通りすぎ様とする。



「し………暫しお待ち下さい!!そ……その……ゼフィランサス様……隣に居るのは!?」



 衛兵長が今にも逃げそうな腰が引けた状態で、なんとか呼び止める……



 縄張り争いと思われる喧嘩とは言え、よく彼は街のために話しかけ止める事が出来た……と言ってやりたい。


 喧嘩が終わった直後の二人には、とばっちりが来そうだからあまり近寄りたくはない。



 衛兵長の問いにゼフィランサスは短く……



「緑龍のエーデルワイスよ……エーデル此方はこの街の衛兵長よ名前は……そう言えば知らないわね……」



「はじめまして!この周辺を『縄張り』にしていますエーデルワイスです。紹介された通り緑龍です。今は街に入るために人化してます。元々この周辺の生殺与奪を持つ唯一の種だったのですが……ね……。今はこの街を襲う気はないわ……安心してください」



 僕は防壁に設置されて居る見張り台を勢いよく降りると、そう言い放つエーデルワイスと目が合う。



 エーデルワイスは今こっ酷く悪魔種にやられたばかりなので、僕を見て何故か衛兵長の後ろに隠れ始める。



「何………なんの冗談よ……こんな場所の来るんじゃなかった。ゼフィランサス!貴女……気でも狂ったの?あの悪魔の娘が言ってたお兄ちゃんってどう見てもコイツじゃないよ!!それも同族!?何をしたのよ!?貴方……」



「私の旦那だって言ったじゃない?それに貴女の森を改善して居るともね?まぁ……貴女は首の鱗を早く元に戻すのね。でも今度は開拓作業をサボらせないわよ?もしサボったら力尽くで森を実効支配する事を忘れないでよね?何度言っても貴女って……寝ると忘れるんだもん……」



 僕を見て恐れ慄くエーデルワイスだったが、それは勘違いだと言いたい……悪魔っ子の力は僕には無い……



 だが……あの脅威的パワーを見せられてから、兄と思われる相手が来れば驚くのも無理はない。



 寝て起きる……今までその繰り返しであり、誰も刃向かえない生殺与奪を持つ頂点の種だった彼女……



 しかし今日ほんの一瞬でその座を明け渡す事になったのだ……それも『ただの力業で』首根っこを握られぶん投げられただけで、『もう無理』と悟ったのだから……


 何故街に固執して居るかわからないが、小娘が『悪魔の力を出していたらまず死んでいる』と本能が彼女に言っていた。



 問題は、その悪魔っ子が記憶を失い力も使えないのだが……



「ゼフィさん、えっと……問題は解決済みですか?」



「……彼女に聞いてよ?」



 そう言って、衛兵長の後ろに隠れて居る小柄の女の子を指さす。



「私には強く出るのに……実はエーデルは意外と小心なのよね……。すぐ諦める……と言うべきかもだけど……」



「アンタが私の住んでいる場所のすぐ側に、縄張り作ったからでしょう!じゃなかったら他の龍達みたいに上手くやれたわよ!!」



 衛兵長に生殺与奪について語っていたのに、盾にして居るあたりでポンコツ加減が増して来た……



「ひとまずギルマスに伝えます。もう暴れませんよね?エーデルワイスさん?」



「あ……あんたがそう頼むなら……しないでやっても良いわよ!?」



「エ……エーデルワイス!!アンタ………本当にバカなの!?この街に何かしたら、今後一番最初に来るのはあの『悪魔っ子』なのよ?私達でさえ住処は重要でしょう?……ま……まさかこの期に及んでまだ何かする気なの?」



「し……しないわよ!………そっちの男が言う頼むならって言う話よ!だってそいつ悪魔娘の兄で、そしてアンタの主人でもあるんでしょう?それに……そもそも此処はかなり前から私の縄張りよ?この街が私の手中にあれば、同じ龍種のゼフィランサスだって私には誰も手が出せないって分かったんだもの!だったら尚更誰にも渡さないわ!!」



 既に僕の事より悪魔っ子に興味を唆られているのか、エーデルワイスは爆弾発言を言い切った……


 うん……ポンコツ確定だ……


 だが、ここにきて成体の龍種が二匹も目を覚ました……そしてこの街に居座って居る……困ったもんだ。



 一緒に来ていたギルマスのテカーリンを見ると……地面に手と膝をついて『何故こうなるんだ………俺が前世でどんな悪行をしたってんだ!!……神よ!!』と恨みを吐いていた。



 僕はそっと手を出してギルマスを起こすと、彼は魂が抜けた状態でギルドに帰っていった。



 龍っ子と二人でそれをみつつ追いかける……


 魂が抜けたゾンビウォークをするギルマスの後ろを歩きながらも、龍っ子にちょっと聞いてみる。



「ねぇ……龍っ子……ママが起きたのって何か理由があったか聞いた?」


「私がパパと一緒に街に来てたからだよ?それ以外にって事?」



「うん……なんかエーデルワイスさん起きたじゃん?龍種が寝て起きるのってそんな頻繁にするのかな?って思ったんだ……一回寝るとなかなか起きないイメージがあってさ」



「ママは頻繁起きて人化してはあちこちの街に行くって言ってたよ?美味しい餌の話を聞きに行くんだって?でも他の龍種はそんなに起きないって言ってたけど……」



 僕は話のお駄賃がわりに、バナナチップスをあげながらギルドに向かう。



『くんかくんか………』



 移動中も衛兵長の後ろに隠れていたエーデルワイスだったが、匂いの元を嗅ぎつけたのか何故か素早いフットワークで近寄ってくる……



「貴方達……龍種なのに何故森の幸を食べてるの?そっちの娘は……ゼフィの娘よね?それ肉じゃないわよ?」


「知ってるよ?でもパパが出すものは全部美味しいの!肉が一番だけど、美味しいものは全部好き!!あ!そうだ……ママも食べてみて?パリパリしてて噛んでると甘くなるよ」



 ゼフィランサスが目の前でバナナチップスを貰い、美味しそうに食べる様を見るエーデルワイス……


 今さっきこの街に喧嘩を売った以上『欲しい』とも言い辛いのだろう……。



「エーデルワイスさん?食べる?肉じゃないけど……」



 徐にバナナチップスを分けてくる龍っ子に、エーデルワイスは驚きが隠せない……


 『本当にゼフィの娘なの?考え方が母親ににてないわね?』と、失礼なことを言いつつ貰っていた。



 数枚食べて美味しかったのか、じっと袋を見続けるエーデルワイスに龍っ子が鷲掴みにして渡すと……



「まぁ!いいの?ゼフィと違って娘さんはすっっごく!!優しいのね?エーデルって呼んで。私は森の中で生活して居るから、主に食べるのは樹木や木の実が多いの……基本は木や葉っぱを食べて、口直しに気に悪影響を出す魔物を食べる感じね……だから寧ろこっちの方が嬉しいわ。バナナチップスって言うのね?美味しいわ!!」



 龍っ子のお陰で、エーデルワイスこと緑龍の食性が分かった。


 龍っ子に貰って喜んでいたので、その袋を龍っ子に渡す。



「落とさない様にね?エーデルワイスさんもこうした方が食べやすいでしょうから……」



 エーデルワイスはビックリした目で僕をみつつも……何も言わず黙々とバナナチップスを食べていた。



 そうしていると、目の前に冒険者ギルドが見えて来た……



 血の気盛んな冒険者達も龍種相手では歯が立たない……ギルマスの帰りと今後の対策を聴くために、ギルド外にはかなり集まっていた……

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