第615話「2種類!?ダンジョンコアの秘密」


 しかし話した所で、そもそも深いダンジョンの深部にはそこを牛耳る強力な魔物がいて、その深部の力を吸収する為に居座っているのだ……精霊は穢れに弱く妖精は戦闘力がほぼ無い。


 だから勝てる訳が無い……


 姿を消すことができる精霊やフェアリー、ダークフェアリー以外は無傷でゲートなど潜れないのだ。


 フェアリーや精霊は仮に姿を消して潜入しても、穢れに負けて変質するだけだが……行く意味さえ無いから行かないのは明白だ。



 それに比べて、ダークフェアリー混沌種なので既にその心配はない……用事があるなら行くだろう……。



 その結果、行くたびに『どうせすぐ蘇る……次はどれくらいだ?』と言われて戯れに殺されはするものの、力ある魔物を使う許可を得た……知識が高く命令を聞く魔物だ。


 しかし混沌の王もダークフェアリーとアーティファクトで実験をして、成功したらダークフェアリーに命じて、自分の領土内の人族の地に繋がるゲートに多く設置するつもりだったと言う。


 その際に住処など幾らでもくれてやろうと話していた様だ。


 大きな理由に、そのアーティファクトは魔物を多く生産する拠点にはもってこいだからだ。



 魔物の多くは穢れが無いと産まれないが、よく調べてみれば、この設備は『欲望』を糧にそれを『穢れ』へ変換する設備にできたのだ。


 だからこそ深部のゲートから外『欲望』を多く抱える人族が住む地に設置すれば、『欲望』を吸い取って『穢れ』を吐き出し、多く魔物を生み出し定期的に魔物を効率的に排出する手段とできたのだ。



 それに大地がより一層穢れれば、混沌のゲートを通じて自分たちがその地へ行けるからだ。



 混沌の世界だけで縄張り争いをする事だけでは、勝敗がつけにくい……


 彼らは統一が進まない混沌の世界の戦いに飽きていたのだ。



 定期的にダンジョン深部の力を得た新参者の魔物が、あちこち勝手に拠点を作るからだ。


 だからこそ、新しい領土を拡張する為にダークフェアリーの定案に乗ったのだった。



 まさか自分達の考えが、ダークフェアリーが埋まったコアから『漏れて知られる』とは、思ってもみなかっただろうが……



 その結果ダンジョンの深部にはコアと呼ばれる物が2種類になり、一つは管理者が必要なアーティファクトで、もう一つが混沌ゲートと呼ばれるゲートとなった。


 前者は生産設備がある為、大元の製作者が居て未知の技術による部分が大きい。


 後者は怨念や欲望その他の感情が『負の力』となって現れた場所で、それに深く関わり続けるとダークフェアリーのアカナイタムの様に変質して、妖精種が混沌種になったりする。


 ゲートはそもそも門ではあるが、それを作り出す為の力は世界を破滅に追いやる力を秘めていて、混沌種に属する魔物の多くはそれを欲しがっているそうだ。


 何故ならばそのダンジョン深部の力を取り込み、新たなる混沌種の王になれるからだ。


 得たら最後、向こう側の荒れ果てた土地に行く事などその魔物は知らないのだが……これは妖精界の秘密の様だ……



 ちなみの何方も『欲望と穢れ』が元になっている為、前者を制作した人はそれを知り得て、似て非なる環境を創り出したと言える。


 僕は調べた結果を掻い摘んで報告する……



「ダンジョンコアの設計した者は現時点では不明です。問題はダンジョンコアは2種類存在していて、何者かが作った物と穢れが生み出した物ですね」



「な!?2種類だと?成程……だからヒロと以前の踏破記録の情報が食い違っていたのか!!」



 何やら感動が隠せないデーガンだった……ひたすらに書き留めている。


 そっと覗くと、自分の考えまで周りに列記しているので、それを見た人は誤って解釈するのでは?と思ってしまう。



 しかし僕はまだ報告の途中なのだ。


 気持ちを切り替える……



「製造はダークフェアリーが20匹がかりで素材を混ぜて作った様でした。トレンチのダンジョンはどうやらダンジョンになりかけている時に、コアを置き換えているようです……そう記載が残ってます。どうやら深部の混沌のゲートを吸収合成させた物が『ダンジョンコア・アーティファクト』になる様で、そのままゲートにした物は通常のコアに形を変える様ですね。形状が同じ理由は今は不明です」



 僕が通常のダンジョンコアと区別しやすい様に『ダンジョン・コア・アーティファクト』と名付けると、デーガンとテカーリンは何故か何度も復唱して覚えていた。



「ダークフェアリーが中に居た事は幸いだったな!まさか此処まで情報が得られるとは……いなかったらどれだけ時間がかかかったか……一生分からなかったかもしれんぞ?」



 テカーリンがそう話した瞬間………



『バタン!!』



 と大きな音がしてドアを開け放たれる……



「リーチウム!!でかしたぞ!ダンジョン踏破とは!!更に伝説の火龍を味方につけたと聞いて飛んできた!!……おお!スマヌ!ギルドマスターのテカーリン殿にデーガン殿だな?ノックもせずに申し訳ない!興奮が抑えられんでな!わしの愚息が迷惑をかけておる!すまんな!!」



 急に入ってきた人からダークフェアリーを隠す為に、僕は咄嗟にダークフェアリーが入ったマジックアイテムをマジックグローブへしまう。



 そしてデーガンは、自分が書いていた羊皮紙を、凄い勢いで机の下に放り込んでいた。


 テカーリンは自分の体を壁にして机を隠し、オレンジも同様にテカーリンの横に立つ。



 すごい連携を垣間見た一瞬だった。



「これはリーチウム伯爵のお父上のソーラー侯爵様……私はこの街を収める新領主のウィンディアで御座います。こっちは近いうちに王都へ向かう予定のザムド伯爵です」



「こんばんわ!ザムドです!」



 ウィンディア伯爵もザムド伯爵も慣れた様に前に進んで、ソーラー侯爵と机との間を稼ぐ……



「父上!今は会議中でございます!幾ら侯爵の身分とはいえ………」



「うむ!その事で参った!!わしのお抱え冒険者『天響の咆哮』を是非使ってやってくれ!



「「「「ええ!?『天響の咆哮』のパーティーをですか!?金級冒険者グループの!?」」」」



 ザムドにウィンディア、テカーリンにリーチウムが驚き声を上げる。



「うむ!我が愚息がワシより先にダンジョン踏破をしたのだ!この老兵とて血が踊るわ!!わはははははは!!うん!?なんだリーチウム……その腰の武…………!!!なんと……エンチャント・マジックウェポンでは無いか!!……」



 リーチウムにあげた武器をめざとく見つけた父親は、駆け寄りそれを手に取ってマジマジと見る……



「こ……これは………」



 リーチウムは帰る途中で一度こっちへ引き返した……その事もあり父には悪辣貴族と縁を切る話をしていなかったのだ。


 家族の問題をはらんでいるが、突然父と会ったせいで心に準備ができていない様だ。



 父に逆らうのは勇気がいるのだろう。



「お父様は武器がお好きなんですか?ああ!申し遅れました!私は元ヤクタ男爵の所領を国王陛下より賜ったヒロと申します。爵位は男爵を頂きましたが、なにぶん冒険者の癖が抜けないので……御無礼の程はご容赦願います」


 僕がそう言うと、皆が一斉に僕の顔を見て驚く……



「ママ……パパがなんか変……」


「仕方ないのよ?人間てめんどくさいの!私たちとは違うから!」



 龍っ子とゼフィランサスがいらない事を言い始める……



「うむ!大丈夫である……なかなか礼儀がなっているでは無いか冒険者上がりなのに……其方が言った通り私は武器が好きでな!主に扱うのはクラブやメイス、そしてリーチウムが持っているモーニングスターやウォーハンマー、スレッジハンマーも使うぞ?武器は見てて心が躍る!!それにしても……はて!?ヒロと言う冒険者はどっかで聞いたことが……」


「父上!我と共同踏破した冒険者は彼で御座います!」



 リーチウムはボソッと口に出した……


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