第614話「みーけた!異世界転移とダンジョンコアの情報」


 ギルドの奢りによる串肉を皆で食べながら、執務室横の会議室で状況報告をする感じで夜はふけている。



 書記は全てデーガンが買って出てくれた……と言うより『誰にもこの仕事は任せられん』と言って自分から書き始めた。



「それで……ヒロさん、コアの素材は生き物の素材を混合した物で間違いないと?それも多くの種族の『脳』が素材と?誰がそんな物で作ることを考えたんですか?設置に関する重要事項はまだ無いですよね?あとこのフェアリー以外の設置者とかが重要なんですよね?……」



「誰が作ったと言う部分はまだ見つけられませんが、ダンジョンコアの素材は『生き物の脳』である事は間違いないです。アーカイブで読んだ限りだとですが……。他の素材にも使うので武器や防具の素材と同じですね……ちなみにマインドフレーヤーの脳味噌は様々な幻覚作用があるそうで、自白剤に転用できると書いてあります」



「マインドフレーヤー……自白剤って事は無理に拷問せずとも、本当のことを自供するって事ですね!成程……この周辺だと水辺に多く存在してて、討伐後その素材は多く廃棄されていたので、廃棄せず転用ができるなら大助かりです!」



 媚薬にも転用できると書いてあるが、万が一情報が出回ると、それは悪用が経たなくなるから言わずにおいた。


 知らぬがなんとやらだ。


 そしてアカナイタムはコアに埋め込む際や、長時間ダンジョンに放置する際にパニックによる苦痛を和らげる効果として、それら薬は用いているそうだ。



 結局あまり気持ちの良い話ではない……



 そして読み漁る事更に1時間、ようやくそれとは別の件も含むがきっかけを探し出せた……


 僕達に必要な異世界転移に絡む情報とダンジョンコアに関する詳細だ。



「あ!ありました……転移の情報……えっと……時間移動!!……魔王種と混沌種が同時に力を行使した結果による物……時間軸の歪み!?……異界転移!!……魔王種や聖女又は勇者や英雄など特殊な力を持つ物同士の力の衝突で、空間を歪めた際に起こる状況!?」



「まてまてまてまて!!魔王種と混沌種が同時に力をだと?世界が滅ぶわ!それに魔王種と聖女の力の衝突?もはやそれは人と魔の最終決戦ではないか!!」



 テカーリンが慌てるのも無理はない……


 しかしその状況を作るために、ダークフェアリーは何か裏工作をしているのだろう……裏技と言うべき事になるかもしれないが……


 そうでなければ、カナミやアーチ、そしてミサはここには居ない。


 しかし新たに問題も浮上した。



 ダークフェアリーのアカナイタムは、僕やユイナそしてソウマとミクの召喚には今の所全く関与していないのだ。



 女子高生仲良し3人組は、同じ場所で揃って黒穴に吸い込まれてバラバラの場所に転移した……年代も時間も場所もだ。


 その事から推測していたのは、一度開いた穴は地球側は同じ場所にしか穴は開かないのでは?と言う事だった。



 それの詳細はアーカイブに詳細が書かれていた……


 開く年代や場所も指定が出来ないので、穴の設置が無駄に終わることもあるとまで……



 そして上手くことが運び呼び寄せても、着地点はもっと酷く予測さえ付かない……開く時同様、年代・時間・場所は指定などできない様だ。



 湖や浜から近い海の上ならまだ良いが、海底だったら間違いなく死ぬ……それ以外にも考えられる事は多い……


 マグマの中や上空はるか高い場所、そして氷山に出来た空洞の中に1番身近な結果は街の壁の中だ。



 何故そんな結果になるかと言うと、それは時間跳躍にかかる魔力の総量と魔力操作の難しさの関係による物だと言う。


 ダークフェアリーの知識であるアーカイブに書いてあった。



 それにしたって最低限の敷居が高すぎる……纏められた情報を見て唖然とする……



 魔力総量で言えば、魔王個体もしくは悪魔個体でなければいけない。


 魔力操作技術で言えば、仙人もしくは天使でなければならないそうだ。




 数多くの実験の末に出した結論は、特定場所と時間の設定は混沌種になったダークフェアリーでも無理らしい。



 結果、アカナイタムは世界中を探し回って、過去に渡ってしまった異世界人を回収していたと分かった。



 その事はダンジョンコア・アーカイブに説明が事細かく書いてあった。



 但し……それだけだ。


 僕達4人をここに呼んだのは別の奴だと判明した……そのせいで僕達4人は振り出しに戻ってしまった……


 何故ならダークフェアリーの行った転移魔法の残滓は、僕達には適用されない事が分かったからだ。



 愕然としたが、ショックを受けている場合でも無い……ミサもカナミも通ってきた道だ。


 そんな簡単に見つかるはずもないのだ。



 そしてもう一つの謎の『ダンジョンコアに関する詳細情報とその制作法に設置法、そしてそれを作った奴』についてだ。



 今読むことが出来た分の資料の結果から言うと、作った輩は不明だ……しかし複製者はダークフェアリー達だ。



 今見た資料では、ダークフェアリーのアカナイタムでも大元の作成者は見つけるに至っていない……


 だからもっと沢山のコア関連の記憶を読み続ける必要がある。



 いずれコア関連資料に出てくる事を祈ってだが……



 ダンジョンコアの詳細だが、元々はアーティファクトと呼ばれる物で、はじめはダンジョンコアなどでは無かった。



 そして、アーティファクトはアカナイタムの仲間が偶然発見した物で、地中深くに埋まった古代遺跡から見つけた様だ。


 人目を避けて暮らす場所を探した結果、その地中に埋没した廃墟に行き着いた様で、そこに設置されていたそうだ。



 しかし切り離すことも持ち出すこともできなかったそれは、鑑定をする事で素材が分かりマジックアイテムに精通しているフェアリー種は普通に作成(複製)できてしまう代物だった様だ。


 僕とすれば、ダークフェアリー達の中に鑑定持ちがいた事も驚く情報だが……



 それ以上に驚いたのは、ダンジョンコアは偶然の産物で、アカナイタム達が複製したアーティファクトを人目を避けるためにダンジョンの深部へ持ち込んだ事がきっかけの様だ。



 ちなみに埋没した古代遺跡は環境的に人族も魔物も誰も立ち寄らず、そもそも埋没している為入って来ない……だから環境はなかなか良かった。


 だが残念ながら、完全な魔物になったダークフェアリーが必要とする『穢れ』さえなかったのだ。



 当然誰も住まない場所で、穢れなど得られるはずも無い。


 自分たちが発する穢れで周辺を汚染するには、まったく足らない……


 何故ならばダークフェアリーのサイズは他の生き物に比べて遥かに小さいから、周囲など汚染させようが無いのだ。



 アーティファクトがダンジョンコアになった理由は、ダンジョン深部へ設置してある程度時間が経ってからの様だ。


 それまでは、管理者に野良魔物を入れたりダークフェアリーが入ったりなど、ダンジョンが出来る直前の場所を探しては設置をして色々実験をした。


 野良魔物は知識が足りず、ダークフェアリーの言う事を聞かない。


 ダークフェアリーは個体が小さいので管理には向かず、ダンジョン階層が低いうちに他の魔物にとって変わられることが多かった。



 その結果、憎い人族を選んだのだが村民はビックリした事にダークフェアリーより弱く、冒険者はまったくと言って良いほど知能が足らないことが多かった。


 何より人族は魔物に比べて、変質に耐えられなかった。



 そこで混沌種であったダークフェアリーは、ダンジョン深部の混沌のゲートを潜り混沌界に居る、力ある混沌の王達に助力を得に行った。



 この混沌界の知識は天使族とフェアリー種と精霊種にのみ与えられた知識で、アカナイタムは妖精種であった時は口に出す事を禁じられていた。

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