第613話「証拠は隠滅!?ダークフェアリーの計画案」
しかし、フェアリーの多くは脆弱で死に易いので何度でも生き返る……それがフェアリーに対してこの世界が授けた祝福だった。
だからこそ、フェアリー種はその儚い記憶をあまり保持しないのだが……
しかし彼女は、そのフェアリー達とは少しばかり様子が違って居た。
彼女は大切な友人の記憶を捨てたくないあまり、記憶の保持を選んだ数少ない個体の一人だった……
一つの支えを選んだせいで、彼女は多くの死を保持する事になり、結果変質して行くこととなる。
『テメェ等は見えてねぇんだよ!自分たち以外はな!仲間が死んで初めてあーだこーだ騒ぐ……周りを傷つけてる事に気がつかず。自分の罪は棚上げで、仕返しされたら相手が悪いだと?馬鹿言ってんじゃねぇよ!』
「何を言っているんだ?我々冒険者にはフェアリーを傷つける奴はいない!!弱く死に易い種だと知っているからな!!」
僕はギルマスのテカーリンが話す内容に割ってはいる。
「残念ながらギルマス……そうじゃ無いみたいです……彼女は数多く死にその殆どは貴族達による物でした。その依頼の先は当然冒険者でしたし……。今僕が見た一部のその記憶の年代は古い様でしたが、傷薬やポーションの代わりに使われていた様です。ダンジョンコアが………その報告を……」
僕の言葉に絶句する一同……しかしダークフェアリーは……
『テメェ!!何勝手に記憶見てんだ。……!?………ちょっと待て!!お前今なんて言った?私の記憶を読んだのか!?なんで……くそ……お前成功したんだな?』
「はい……アカナイタムさん……コアに貴女がその身を捧げたので僕にコアから貴女の思いが流れてきました。ですが見るつもりで探したわけでは無いです」
彼女の名前はアカナイタム……異世界の日本語名では『トリカブト』であった……花言葉は奇しくも……『復讐』だ。
『やはりお前ならば管理者になれたか……すぐにその力を寄越せ!!返せ私にぃ……ここから出しやがれ!テメェの大切なご友人のガキは私が責任を持って再生してやる。だから私の邪魔をすんじゃねぇよ!!』
アカナイタムは、内部からなんとかならないかと踠いている。
しかしそんなことが出来るほど、ユニークモンスターの素材はやわじゃ無い。
「ヒロどう言うことだい?このダークフェアリーの記憶って!?」
エクシアが質問してきたので、コアを経由して伝わって来たことを説明する……しかし記憶はあまり話さないでおく……彼女のプライバシーもあるからだ。
当然本体をコアにしてしまったのだから、アカナイタムのその記憶の全てはコアにあるのは不思議では無い。
更にダンジョンマスターになった僕はそのコアと同調しているのだから、流れて来ても不思議では無い。
問題はアカナイタムがテカーリンとの会話中に、感情的になった事で深層心理が『何も分からないくせに』と言ったので、ダンジョンコアは、自分の素材になった個体のその記憶を、希望に沿った形で僕へ再生した……と言う事だ。
「って事はだよ?ダンジョンコアの元はコイツなんだろう?危険はどうなんだ?お前平気なのか?」
エクシアの言葉を聞いて、それを頭で考えてから理解するより早く、ダンジョンコアが回答をくれた
『マイ・マスターの疑問への回答。コアの基本部位ベースとなった個体が、ダンジョンマスターおよびコアを侵食する恐れはありません。理由……素材になった時点でその全ての全権をコアが管理します。侵食スキルに至っても管理者及びコアへの行使ができません。……以上報告完了』
「その止まった様子だと、またコアかい?……で何だって?」
エクシアはよく観察してくれている様だ……
僕の表情から色々読み取ってくれる……
「素材になったダークフェアリーは既に無力化されているそうです。ダンジョンマスターとコアに侵食は出来ないそうです。スキル諸々全てコアの力になったからだそうですよ?」
「あれ?でも今まででも使えてたんっすよね?ダークフェアリーは無敵だったじゃ無いっすか!!そもそも目的は何なんですか?このダークフェアリー……えっと名前はアカナイタム?でしたっけ?」
「それは僕がダンジョンマスターになりる前だったから……要は全権を奪われる前だったと思われますね……まぁもっと情報が必要なのは変わりませんが……」
僕がロズにそう答えると、同期しているダンジョンコアがまたも親切に暴露をしてくれた……
『ダークフェアリー・アカナイタムの計画事案。1、人族や敵対種に迫害された同胞と暮らす場所を作る。2、人族及び敵対種が足を踏み入れない環境を構築・設備する。3、元同種族のフェアリー種に迷惑をかけず離れて暮らす為、他種族を入れない設定にする。4、計画過程で犠牲になる人族のDNAはコアに採取・保存、計画成功後に素材となった人族のDNAを培養・育成の後にワームホールの残滓を追跡、その後元の場所へ記憶を削除して送還。以上がアカナイタムの計画です。』
内容に唖然とした……彼女は本気で還す気だったのだ………廃棄とは文字通り一時的廃棄だったが、結果的には元通りに戻して送還で間違いがなかった。
一言で言えば、連れてきて素材にして記憶を消して還すと言う事だ。
僕はつい言葉に出して驚いた……
「な!?送還計画!?」
『テ……テメェ!!また私の記憶を読んだのか!?クソが!これだから人間は!!』
「違います!コアが勝手に、深層心理を見てコア素材になった貴女の記憶を持ってくるんですよ!!」
『なんだと!?コア?でしゃばんなよ!!誰が頼んだ……ってかオメーも見るなよ馬鹿!!大馬鹿が!!』
『ダンジョンマスターへ報告……コア素材アカナイタムの深層心理の希望により、ダークフェアリー種保護の依頼があります。次にダークフェアリー種が居る人工ダンジョンの設置場所の報告が上がりました。その場所を報告します……』
深層心理が何時でも暴露される状態の、悲しいアカナイタムだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕は、マジックアイテムの牢の中暴れ回るアカナイタムに質問を重ねる……
「………は!成る程ね!偶然誤ってコアを起動したけど、情報が少ないからアタイに泣きついたって事かい?だったら簡単じゃ無いか!アタイにそれの全権を任せりゃ、アンタの手から離れるだろう?さっさとここから出せよ!!人間!!」
アカナイタムは凄惨な過去を忘れられないでいるので、人族とは相入れない様だ。
そしてダークフェアリーのアカナイタムは情報提供する気は一切ない様だ。
ダンジョンコアにそれこそ質問し続ければ適切な回答が貰えるので困りはしないが……
ひとまず話が進まないので、コアに異世界への帰還方法を知っているか聞いたところ、方法はダークフェアリーの知識としてアーカイブへ保存されているが、実際にそれを実行する術はないのだと言う。
当然ダンジョンコアだから、ダークフェアリー種の様な力を使えるわけではない。
あらゆるものを管理する為の、所謂受け皿の様な物……それがダンジョンコアだからだ。
必要な物を育成・生産はできても、それに此方が望む指示を出せないのでは意味がない。
僕は仕方ないので、ダークフェアリーに知識を読み漁る方にシフトチェンジした。
アカナイタムが答えない以上、コアの情報に頼るしか無く、その結果アーカイブを知ったのだ。
だから情報収集は、地道にやらざるを得ない……質問する項目を増やす為にもだ。
覗き見する様で気分がモヤモヤするが、帰る手段を探さねばいつまで経ってもこの世界からは帰れない……
ダークフェアリーは『汚ねぇぞ!勝手に読むな!』と怒っていたが、コアの設置を知り得る為には、致し方ないと割り切るしかなかった。
知り得た情報の中には、混沌と破滅の主やら混沌の魔王やら名前からしてヤバいのが沢山居た。
どれもこれも協力は仰げそうにない……『化け物』の王だった。
そもそもダークフェアリーでさえ、彼らの前には殆ど行かない。
戯れに殺されるからである……
人種が悪ならば彼等は理不尽極まりない悪と書いてあった。
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