第602話「二度あることは三度ある!」



「火………火龍……様!?……まさか……龍っ子ちゃんのお母様ですか?」



 理解が早い様だ……ゼフィと龍っ子は顔が似ているので分からなくも無いが、まさか母火龍がいるとは思わないだろう。



「ええ!この子がパパのそばにいるって言うものだから……貴女が先に居たのなら私は2番手ね!まぁ人の婚姻の順番など、私にはどうでも良いのだけど。力ある雄は多く妻を持っていないとね!それが自然の摂理だし!ライオンを見ればわかるわよね?でも安心したわ。こんなに桁外れの力はあるのに、妻が私だけかと思ってちょっと悩んでたのよ!」



 そう言ってゼフィランサスはココアを飲むが、僕はいつ結婚したのだろう?記憶にも無いし、告白もプロポーズもしていない……そもそも恋愛日数0日の高校生なのだが……



「力の縮図はね、一点に集中すると全て崩壊するのよ!均衡を保ってお互い発展するべきなの!龍種は寿命が長いから子はそんなに作らない、人族は逆よね?私達龍族が暴走した時に止める勢力は必要だし、その逆も然りでしょう?だから彼の奥さんが一人だと困るのよ!バランスが保てず暴走した場合、世界が崩壊するからね?まぁ彼同様子にその子も多分世界には興味ないだろうけど……それが因果律よ……まぁ説明が面倒だから細かいことは端折るわ!」



「私が妻!!………き……きょ……恐縮であります!!こ!……ここ………今後とも!!よ……よろしくお願いします!!」



「何を言っているの?もう!パパに周りは面白い人しかいないわね!目の前で、あれだけの攻撃をしておいて恐縮だなんて!ははははは!!あー面白い!!貴女も龍種か悪魔種か混沌種にでもなりなさいよ?寿命が短い種族はもったいないわ!」



 それにしても頻繁に種族変更話が出るが……そんな簡単に変更できるのだろうか……


 だが聞いたら最後、それが決定打になりそうで嫌だ。



 ちなみにウルフハウンドは既に蚊帳の外だ……何故ならば龍っ子を怒らせて、端の壁まで放り投げられ叩きつけられていたからだ。



「マグマはダメってパパが言ったから……壁にしといてあげる!感謝しなさい!弱虫が!!……まったく……ココアが冷めちゃった!!」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 その後シャインとゼフィランサスは急接近して話をしていたが、シャインは龍種が怖くないのだろうか?……謎だ


 話を聞いていたら、僕の人生が面倒な事になりそうなので、龍っ子にお願いされた新しいココアを人数分作ってから、エクシアのところへ向かう。



「あれ誰なんですか?エクシアさん相当怒ってましたよね?」



「ああ?ウルフの事か?アイツは銀級冒険者グループ『天翼の獅子』のウルフハウンド・アイリッシュっていう名前で、前衛のタンク職だよ。因みにパーティリーダーだな」



 エクシアの話の後にロズが付け足す。



「多分聞きたいのはそこじゃないですよね?ヒロの兄貴?あのウルフは、姉さんの事を『オーク娘』と馬鹿にしてたやつの一人なんですよ!」



 その言葉に僕はタバサを思い出す……


 エクシアがロズの言葉を聞いて、更に今までの衝突の話をする。



「ああ!『そっち』か、ダンジョンアタッカーの絡みかと思ったよ!アタイがこのパーティーを組んだ時にメンバーにちょっかい出してきやがってね、当時はロズもベンもベロニカもゲオルさえも居なくてね、自分で言うのもなんだけど、なかなか弱いパーティーだったのさ!ダンジョン討伐で邪魔されたり、獲物の横打ちされたりね」



 エクシアは思い出す様に当時のことを語る。



「そんでも腐らずに頑張ってたんだけど、パーティーメンバーがダンジョンで怪我しちまって、冒険者廃業になっちまったんだ!そこからさ、アイツがアタイの縄張り関係に何かをしでかしたら、全力で殺しにかかってるのは!」



「そんな事が……まぁ意味がわかりました……仲が悪くなりますよね……あと、さっき依頼がなんとかとか言ってませんでした?」



「ああ!あれかい?ギルドこさえて1天目に、アイツが護衛業の邪魔をしたのさ!4つ先の村まで買い付けに行く護衛業だったんだけどさ、その経路を奴は荷馬車で塞いだんだ」



「経路を?他の人も通れないじゃないですか……よく街で問題になりませんでしたね?何でですか?」



「悪辣貴族の狩場確保だよ!だから誰も文句は言えなかったのさ。本来は村と村の経路は塞がない様に狩りはやるんだがな、経路に貴族潜ませりゃ、木々がないから見通しが効くだろう?馬鹿でも狙いが付けやすい!だがその貴族はバカから見ても更に下だったんだよ。まったく才能がなくてね、3日かかったんだよ!狩りに!」



 どうやらその所為で、契約不成立になった様だ。



 当然罰金が課されたのはエクシア達だった様で、経路さえ塞がなければ問題はなかった様だ……怒るのは当然だ。


 ちなみにその数日間で、何件も商団が損を出した様で商団からも『天翼の獅子』は嫌われているそうだ。


 ちゃっかりいつの間にか居た、マッコリーニがそう言った。



 しかし冒険者としての素質はあるそうで、貴族にうまく取り入り鉱山の魔物を殲滅する仕事(依頼)をしていたそうだ。


 この周辺の貴族は、特定数魔物を排除せねば『ジェムズマイン周辺領地の没収』があるそうだ。



 僕はしてないのだが?……と気になってしまう。



 するとエクシアは……



「アンタ自分は?って思っただろう……アンタが一番討伐数稼いでんだよ!!馬鹿みたいにうじゃうじゃ鉱山のスタンピード狩り尽くしたじゃねぇか!」



「あああああ!!ありましたね!」



「兄貴!?ありましたねじゃ無いですよ!普通あれだけ狩ったら武勇伝にしますから!何忘れてるんですか!意味わかんねぇっす!!それに姉さん言いませんでしたけど、ジュエルイーターは通常の魔物1000匹分ですよ?『魔獣』ですから……」



 話を聞いて絶句だった……ダンジョンでは様々な経験をしていたので、それこそ記憶にも残らなかったが、討伐数カウントはダントツトップだった。


 トレンチのダンジョンも含んでいたので、最下層まで行き魔物を減らした事も考慮された。


 そしてフレディ爺さんが倒した魔物まで、何故か僕カウントになっていた。


 フレディ爺さんは貴族じゃ無いし冒険者でも無い、ギルド関係者じゃないので結果僕扱いだという。



 ちなみに銀級冒険者グループ『天翼の獅子』の構成だが、



 ウルフハウンド・アイリッシュ♂(タンク) リーダーは壁付近でのびている。


 テリア・エアデール♀(回復師)は必死にリーダーに回復をかけているが、僕を見て目が合うと謝っている。


 ミュート・アラスカンマラ♀(戦士) サブリーダーはアタフタしている……謝るべきか、逃げるべきか悩んでいる様だ……


 コモンドール・ハンガリー♂(魔導師)はウルフハウンドから離れて、震えながらエールをがぶ飲みして『終わりだ!人生終わりだ!!火龍に喧嘩とか馬鹿野郎が!!』とやけ酒をしている。


 シュナウザー・ジャイアント♂(タンク)は脳筋なのか……何故か『負けんぞ!俺は殴られたって……鍛え抜いてウルフの様にのびたりはせん!!』と言って筋トレとしている。


 龍に投げられて意識を失わない奴など居ない……下手すれば死ぬ……コイツは多分新種の馬鹿だろう……


 ドランド・ニューファン♂(シーフ)はエクシアに謝りに来た……その後僕に謝って、ゼフィランサスにも許して欲しいと言ってくれと言われた。


 ビックリだ……お前ら実は犬族か?って名前だった……人族じゃなくて、コボルド族の間違いじゃないか?


 テカーリンは安定の冷や汗たこ頭を下げて謝り中だった……


 そして僕は、度重なる上から目線にイライラマックスだ。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 二度までは許す気だったが、三度目は流石に僕もイラついた。



 ウルフハウンドは三度来た……一度目は自滅、二度目は龍っ子にのされた。



 『なんだと?俺が負けた?んな訳ねぇだろう!』そう言って、回復師が止めるのを振り切ってこっちへ来た。


「おい!そこの若いの!蛇よこせ!そいつは危険なんだよ!!今はちいせぇけどさデカくなったら終わりだぞ?お前みたいな適当な考えなんかで言ってねぇから!!お前被害者に何かしてやれんのか?ああ?」



 そしてそのあとアーチを見て近寄ると、頭をぽくぽく叩き………


「なんだ?可愛い顔してるじゃんか!冒険者やめてここに居ろよ全く……エクシアの所はこんなのまでギルドに混ぜてんのか?銅級資格でギリ行けて銀級って感じだな?まぁ死なねぇように気をつけろよ?鉱山のダンジョンじゃ道あけんだぞ?お前みたいなのは俺の後ろに隠れていろ!俺の後ろな?分かったか!?」



 と言ったところで、カナミの蹴りが炸裂した……



 一撃で天井近くまで蹴り飛ばされ、落ちて来たところを今度はミサが蹴り飛ばして、龍っ子がぶん投げた壁にぶち当てその位置を元に戻した……僕も蹴りたかったのに……非常に残念でならない……

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