第594話「罠のプレゼント?暗躍人より心を込めて」


「えっとまず罠についてですが、マラライには悪いのですが……そのまま売られて貰います。そして罠の肝にはスラを使います!」



 そう言って始まった、題して『ネズミ狩り作戦』内容はこうだ。



 マッコリーニ商団に氷菓屋そしてテッキラーノ商会には、僕が用意した壊れ易いガラス細工を彼等の店の倉庫に配置して貰う。


 そしてマラライをその場所で、彼等の3人の誰かに買い付けして貰う予定だ。


 誰に話が行ってもいいように、ガラス細工は3商団とも同じように用意しておく。



 ちなみに、テッキラーノ商会がその手の暗躍人に詳しいので伝手を用意できるという話があったので、この策を思いついた。


 なぜ周りくどい手かと言えば、ラット商会には立ち直れないお灸を据えてやるつもりだからだ……


 僕的には、力でねじ伏せると言うより、自業自得という感じに持っていきたい。


 だから、マラライの買取はテッキラーノでも氷菓屋でもマッコリーニ商団でも良い。


 ひとまず罠について話を戻そう……


 向こうの商団員がガラス細工に興味を持ったら御の字で、そうでなかった場合近くでガラス細工の出来栄えを自慢しつつ、その付近で会話をして貰う。


 ガラス細工のそばで話す手段としては、『この商材をとある王都貴族相手に販売する予定の品だが、ラット商会が買い取り自分たちの代わりにその貴族とコネクションを持つ気があるか』と話をさせる予定だ。


 正直その話には乗っても反ってもどっちでも良い。


 疑って来たら、この人身売買を機に両者の太い関係を……とか言っておかせよう。


 不審がられずガラス細工付近で話せれば、方法や内容は正直何でも良いのだ。



 重要な事は、取引場所は絶対に彼等3人の倉庫且つ、ガラス製品の側でやる事を前提に話を進める事だ。


 彼等は真っ当な商団なのでマラライが必要な理由を聞かれたら、とある貴族の無理な願い……とか言い、人身売買現場を余所者に見られない為とでも言っておかせる。


 マラライの用途は、とある貴族の黒魔術の生贄とか言っておくくらいでいいだろう。


 とある貴族は彼等も面識があるドクリンゴ元女公爵とでも言っておこう……今頃恨みを募らせている筈だ。


 言い訳には丁度いい。


 そして僕の事前処理としては町中にスライムを配置して、マラライ達の様な奴隷候補を買い付けしようとする輩は前もって殲滅する。


 いわゆるスライム狙撃のウォーター窒息大作戦だ……マウス商会と接触する際は、死なない程度に窒息してもらおう。



 その時スライムにはこれ見よがしにその存在をアピールする為に、大腕を振って出て行ってもらおう!スライムに腕はないが……


 何だったら捕食の真似事くらいは許してしまおう……


 しかし実際にそんな輩を食べると穢れでばっちぃので、後程衛兵の牢屋に放置になるだろうが……


 その場合その衛兵にも協力して貰い、翌日にでもマウス商会の店の中で、他の魔物に擬態する危険な魔物が忍び込んだとでも言っておかせよう。


 裏の事なので、彼等は被害を表立って言えないので、泣き寝入りなのは間違い無い。



 この際、買い専門の人身売買を秘密裏にやる輩には、多少痛い目を見てもらおう……


 僕的には一時的な窒息程度じゃ無くもっと痛い目を見てほしいが……また話がずれた……元に戻そう!



 そして当然3商団にもスライムリングを用意する。


 マラライを連れてきた時にスライム達は、彼等の元を離れてラット商会の人身売買担当者の身体にへばり付き、隙を見て近くのガラス細工を破壊して貰う。


 人数が多ければ、それだけ多く破壊して貰う……


 そして破壊された現場に、テカーリンそしてデーガンが衛兵を伴い予定外の訪問……


 するとあら不思議、そのガラス細工品は何と『王様献上品』だったと言う寸法だ。


 そして献上品破損について激怒からの、人身売買の事実確認でラット商会をお縄にする……そういう流れだ。



 悪辣貴族の妨害対策の為に、商団を経て信頼がおける貴族から納品予定だった……


 とか言わせておく……ヤクタの時に使った似た手法だが、今度はそれを三商団に増やすだけだ。


 犯人は安定の王様に対しての不敬罪で捌こうと思う。



 下っ端が来た場合は、繋がりやら商会について内容を話させて見るが、ゲロしなかった場合街の外でゼフィランサスか龍っ子にお願いして、丸焼きにすると脅すつもりだ……


 トレンチのダンジョンの最下層のボス部屋目の前に放置でも良いかもしれない……多分最下層ならばボス部屋の扉を開けて延々と見せておけば、間違いなく下っ端のソイツは改心する。



 此処までが今回の罠だ。



 こちら側の商団の事についてだが、当然商団側に変な動きをされては困るので、3商団には倉庫内でガラス細工を破壊する内容は伝えずにおく。


 絶対に物欲に駆られて、さほど高そうでも無い他の適当な物とすり替えそうだからだ。


 信用してないわけじゃない、信頼してないだけだ……あれ?同じか?



 何はともあれ続きだが、



 マッコリーニ達へのガラス細工の罠についての説明だが、先程の理由をそのまま使う。


 ラット商会に販売した製品の架空の取引相手貴族は、最近知り合ったリーチウムや、王都に行く予定のザムド伯爵あたりで良いだろう……



 リーチウムは王都に兄がいるし、ザムド伯爵も王都貴族になるからだ。


 あくまでも架空なので、その名前に信用性ある貴族だったら誰でも良い。


 取引をさせて、受け渡しの際に壊れている状況を作り出させ、貴族の不況を買わせると言っておく。


 方法はスライムでと言っておけば適任だろう……


 どんな場所にも擬態できるし、張り込みできるし、忍び込めるし、隙間から逃げられる。


 荷物に張り付いて移動して、その後に天井に張り付いて溶解液を垂らしガラス細工を溶かして……とか言えば言葉にも現実味があるし。


 ラット商会の彼等は同じものを二度と手に入れられない以上、伯爵の不況を買うのは確実だ。


 マッコリーニ達もそこにはすぐに気がつくだろう。



 そしてその伯爵に全力を持って叩き潰されると言うくらいで良いだろう。


 一連は企みであるので、3商団には貴族もグルだと言っておく必要はある。


 結果的に破壊はされるが、彼等的には売った後でその代金はラット商会から回収済みだから、文句など無いだろうと言える。


 ちなみに献上品の裏事情についてだが、数日後に王都を出る王の側近話を利用する。


 来る話は本当なので、前もって王様に連絡しておきさえすれば捌くことは可能だ。


 ダンジョンで手に入れた宝石の一つも贈れば文句も無く協力してくれるだろう……王妃様が。


 目撃者は『マラライ』本人で、スライムにその会話を代弁させればマッコリーニたちが仮にその場にいてもに被害はない。


 そのように仕向けて、スライムに話させるだけだ。


 折角なので余ったガラス細工は、ラット商会を捌いた後に彼等商団から献上させても良いかもだ。


 彼等を騙した謝罪がわりに、『嘘から出た誠』にしてしまうのも良いだろう……


 事が済んだら、ガラス細工は間違い無く2つの倉庫には残っているだろうし……それを連名で贈らせれば良いだけだ。


 ちなみに本当の事を知っているのは、テカーリンとスライムそれに考案者の僕だけだ。


 僕は別部屋を借りて異世界から特急便を使ってガラスの靴を10足依頼する。


 金額は1足あたり金貨4枚でかなり高額だった……それを10足なのでクレジット40枚が無くなる……金貨にして40枚で異世界金額に換算すると40万だ。



 僕はクレジットが尽きかけてたので、金貨を200枚追加で入れクレジット残高を増やすと、ポチがすっ飛んできた。



「毎度ありー!呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!ワテの事呼びましたかね?」


「そのセリフ……地球でバカンスですか?なんか芸人見てるみたいです!」



 そう言った僕の言葉に笑いながらポチが『地球はいいなぁ!ホンマ住みたいですわ!老後の保養地候補ナンバーワン!』と言う。



 しかしポチは適当なこと言いながらも、仕事はしっかりこなす猫だ。


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