第593話「薬草採集の特別ボーナスにつられて現れた少女」


『通常報酬は貰ったのかな?』と聴くと、何故かそれは『利子』で回収されたと言う……絶対におかしい。



 僕は渡すのは渡すが少し待って欲しい……一刻だけ待ってくれと言う。



 すぐに一緒に来たミクにお願いしてマッコリーニを、そしてカナミにお願いして氷菓屋のフラッペ、そしてソウマにはテッキラーノ商団のハリスコを呼んでもらう。



 呼んで貰う間にユイナには彼女用のご飯を作って貰う。



 年齢の割にこの子は痩せすぎなのだ……身なりから見て浮浪者とほぼ変わらない。


 満足にご飯は食べてないのは見て分かる。



 マグネもガウスそしてテムバイも急いでいた様だが話を聞いて黙り込み、僕の表情を見て側の長机の椅子に腰掛け沈黙しながら話を聞いている。


 僕はせっかくなので、彼等の分も用意してもらう。


 オルトスの肉で料理をする話をしたら、彼等4人は採集が忙しく食べていないと言ったので、時間的に丁度良かったからだ。



「できたよぉ〜!ゆっくりよく噛んで食べるのよ?ちゃんと野菜も食べてミルクも飲んでね!ああっと!食べる前に手洗いして、このタオルで顔を拭くといいわ!」



 ユイナがそのマラライと言う娘に蒸しタオルを渡す。


 マラライは手を洗いに向かい、顔をタオルで拭うと一心不乱にご飯を食べ進める。



「美味しいです!2日ぶりのご飯です………グス……」



「おかわりあるから!どんどん食べなさい!ちゃんと夕飯の分もあるからね!」



 ユイナが日持ちする黒パンに、オルトスの炙り焼きを挟んだサンドイッチを見せる。



「良いんですか?私……まったく持ち合わせが……」



「良いのよ!気にしないで?全部このお兄さんの荷物から出ているものだから、それに元はタダなのよ?それに昨日なんか皆が無料でたくさん食べたんだもの!それにね、魔物でも美味しく食べれるものが居るの!オークとか良い例でしょう?」



 そう説明されたマラライは頷きながら『オークって美味しいですね!』


 と言って笑われていた。



「おじちゃんはマグネって言うんだけど、お嬢ちゃん!コレは『オルトス』って言う犬のバケモンの肉だぞ?たらふく食うといい!俺らには絶対倒せない魔獣の極上肉だ!王様だってこんな肉をこの厚さでそうそう食えないんだぜ?って言っても、俺の肉じゃ無いけどな!がはははは!」



「王様も食べれないお肉?そんな物を私が?だめですそんなお金払えません!!」



 マラライがそう言うと、絶妙に龍っ子が『私も食べる!』と言い出した。



 非常にちょうど良いタイミングだ。


 同じくらい幼い子が食べていれば気兼ねなく食べれるだろうと思うと、ユイナも龍っ子に肉の乗った皿を出す。



「はい!今日もいっぱい食べるのね?大きくなってね!」



「はい!食べます!ママみたいに大きくなるよ!マラライって言ったわね?貴女も食べなさいよ。そんなんじゃ大きくなれないわよ?お腹すいて飢えて死んじゃうわ!それにどうせ肉が無くなったらママが取ってくるもん!気にする必要は無いわ!ハムハムハムハム………」



 素晴らしく良いセリフだ。


 同じ背格好の女の子が遠慮なく食べるんだから、マグネって人の冗談だと思い食べ始めるマラライだった。


 暫く食べていると、マッコリーニとフラッペそしてハリスコがすっ飛んでくる。



「お呼びでしょうか!ヒロさま!!このマッコリーニ!飛んできました!」


「ちょっと!マッコリーニさん!ギルド入口で足を引っ掛けるって……ひどくないですか?……ふぅ……今到着しました!ヒロ様!!」


「お前ら!!狡いぞ!!店員に言って障害物を店の前に置きやがって!!覚えていやがれ!今到着………ゼェゼェ……ハリスコで御座います!!ゼェゼェ……」


 呼びに行ってもらった3人を残して、彼等はダッシュして来た様だ。



「実は聞きたいことがあって……」



 僕は席を離して座り、そう言ってからマラライの事を話す……



「ぬぬ!?」


「まぁ?」


「許せんな!」



「「「その手口はラット商会ですね!!」」」


 3人の言葉が被った……



 どういう事ですか?僕がそう聴くとフラッペがすぐに話し出す



「私が聞いた話では、貧民でめぼしの付けた家族に近寄り家族を買うそうです。そのあと親には仕事を斡旋して無きものにするか、強制労働の条件に追い込むそうです。娘は……そう言ったお店に流すと……多分彼女が目的でしょうね……その手の店に売るためでしょう」



「人身売買って事ですか?」



「「「そうなりますね……」」」



 またもや3人の言葉が被る。



「利子については、この子が幼いため言いくるめたんでしょうな……腐ってますね!完全に!」



 マッコリーニが憤慨する……そしてハリスコが……



「汚らしいフン以外は証拠を残さねぇので、俺らは害獣商会って言ってますね……人間の販売履歴は全部闇の中って事なんですよ……彼女も忽然と姿を消して、どっか知らない場所にって事ですね……」



 汚らしいフンとは何だろうと聞くと答えは簡単で、被害者の親しい家族を見つけて更にマーキングを残す事だと言う。



「罠にかけて潰しましょう!協力お願いします……そうですね……ポーションをひとまず渡して、怪しい動きを見せない様にしましょう。どうせあの子を買い取るつもりならまた何か問題を起こす気でしょうから!」



 僕はスライムに言って最小単位に分裂をしてもらう。


 その大きさはピンポン玉サイズだった。



「マラライ!良いかい?このスライムは敵じゃない!僕の仲間だだから安全で平気だからコレを肌身離さず持ってると良い……」



 僕がそういうとスライムは、腕輪の様な形になって腕に絡まると半透明になって、ほぼほぼ見えなくなっていく。



 しかし突然スライムは話し出す。



「マラライ!よろしくね!私はスライムだよ。危険があったら主に知らせるから安心してね!でも人前で私に話しちゃダメだよ!私が居るってバレちゃうか、とても変な子って思われるから!」



 その言葉に皆がビックリする……スライムなのに知能が高すぎるのだ……



「ヒロさんの影響って大きいよね?周りがどんどん変な方向に育っていくよ?」


 アーチがミサに言う……


 ミサはミクに……



「よくずっと一緒に居たね?ミクちゃん……貴女は魔物になったりしてない?」



「最近動きがやたらスムーズなんですよね……ヒロさんみたいにって思っていたけど……考え直さないとダメな時期かもです!!」



 ミクがミサにそう返すと全員が……



「「「「「見習っちゃダメな人だよねー」」」」」



 と声をそろえる……


 僕は3商団に罠の全貌を話す為にギルマスに部屋を借りる話をしに行く。



「何だ!?お前また厄介ごとを見つけてきたのか?見ていたが……あのマラライって娘の事だろう?何となく雰囲気で分かったが……俺もその話し合いには参加するからな?責任者が知らん……では不味いんでな!!そのあと戦略会議だからな?皆もう意気込んでるんだ!忘れるなよ?」



 ギルマスはそう言って職員のオレンジに会議室の鍵を渡す様に言う。



「俺は先に部屋へ行っているぞ?仕事が山盛りだからな……お前のせいで!あ!そうだミミックサファイア!お前絡んでるだろう!!あれは今大変な事になってるぞ!!ドーイが王国と帝国の板挟みだ!!まったく!!」



 それは僕が聴きたい!!何だその王国と帝国の板挟みっていうのは………しかし今はそのラット商会の方が優先だ。


 ドーイにはもっと頑張ってもらおうじゃないか!



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 それから僕は先にポーションの受け渡しをする。


 彼等は大喜びで、周りにいた駆け出し冒険者はそれを見て『デマカセで無く本当に貰っている!!』と、慌てて受付に採集依頼の受付を出していた。



 光草と光鈴蘭それと光苔は最終的に


 光草1984束・光鈴蘭1968束・光苔2128袋が納品された。


 うち4000束は彼等が毎日、日が登る前から採集を始めて夕暮れまでずっと回収し続けていた物だ。



 どの薬草も成長が早く翌朝にはまた伸びているとはいえ、良く短期間でこんなに集めたものだ。



 安全に収穫できる柵で区切られた薬草エリア以外にも、街の外壁に沿って薬草が山程自生しているが、連日そこは大賑わいというのだ。


 参加者が冒険者だけで無く、マラライの様な冒険者登録したての貧民層も参加しているのかも知れない。


 余程高額で売れるポーションが魅力なのだろう……



 僕はギルドの売店に行き薬用の瓶と木の蓋をありったけ買う。


 そして次回入荷分も全部取り置きをして貰う。



 残念な事に木の蓋と瓶をセットにすると、209対しか手に入らなかった……


 次回入荷分は更に少なく今の時点で150セットだと言う。


 採集した数と比べるとまったく足らないので街を走り回るしかないだろう……


 僕は代金の金貨2枚と銅貨90枚を払いを払い、マッコリーニ達と会議室へ向かった………

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