第571話「蠢く魔物と悪意の固まり」
「前衛アルベイ!少しだけ持ち堪えてくれ!!神よ不浄な魂を滅せよ!『天啓の祝福』」
部屋だった為に、オリバーの範囲祝福が功を成した。
レイスの群れは、金級冒険者がおこなった『祝福』をモロに全身に浴びる。
「ぎぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!」
「おのぉぉれぇぇ!!魂喰ろうてやるぅぅーーー!!」
レベルが低めのレイスは焼けタダレ絶命するが、数匹のレイスはダメージを受けた瞬間に、ターゲットをアルベイからオリバーに切り替える。
僕は何故そのレイスが死ななかったのか、その個体を鑑定する。
するとダメージを受けたレイス達は、25レベルを超えていた。
「生き残ったレイスはレベルが25オーバーです!!オリバーさん気をつけて!!」
僕がそう言うと、オリバーは腰に下げていた皮袋から何かをレイスに浴びせる。
「ひぎぃぃぃぃぃ!!よくも!聖水なんぞ!!」
「口惜しやぁぁぁ………ぎぃぃぃぃ!!」
数匹のレイスは聖水を浴びて全身が溶けていく……
断末魔をあげながら死を待つレイスは、オリバーに『道連れの呪怨』を浴びせかける。
しかしオリバーは、祝福の加護を自分にかけていた為に難を逃れていた。
「まだ数匹居ますね……聖水も切れた!!万事休す!!」
オリバーがそう言うのも当然だ。
生き残ったレイスのターゲットは、ほぼ全てがオリバーなのだ。
「冥土へ帰れ!!」
そう言ってレイスを切り裂いたのは、エルフレアだった。
霊体特効の剣を一文字に振り抜き、レイスの首を刎ねる。
ターゲットがオリバーに移動したおかげで、エルフの3人的には距離的に優位な位置だった。
エルフレアに続き、エルオリアスとエルデリアも次々とレイスの首を刎ねる。
「アルベイしゃん!危ない!!」
そう言ってレイスに、山程の祝福の矢を打ち込むのはミミだ……
彼女はこのダンジョンに、かなり適正が合っている様だ。
アルベイに近寄る事もできず、レイスは『ギィィィィィ!!ぎやぁぁぁぁ!!』と断末魔を上げる。
レイスはアルベイに『呪怨』をかける前に、重なる祝福効果に負けてその身体が消えてしまった。
僕は何かをする事もできず、単純に鑑定で相手のパワーレベルしか調べられなかった。
予想外の魔物だった事もあったが、多分居るのはゴーストだ……という思い込みにも問題があった。
「困ったのぉ……ここまで危険な魔物が群れをなして居るとは!流石に冷や汗が出たわい!!」
「そうですね!流石に危なかった!今回のレイスは……。今の戦闘で聖水も使い切ったので、今すぐ作る必要があります!それにしてのも2階層でレイスとは……それも20レベル帯の魔物ですからね。並の冒険者なら即死でしょう。」
そう言って、オリバーはマジックバッグから予備の水筒を取り出して、祈りを込めて『聖水』を作っている。
「オリバーさん!聖水って簡単に作れるんですか?」
「入りを込めて作るのは簡易聖水です。祈りだけでは効果は1日で消えてしまいますが……このダンジョンでは無いよりは遥かにマシです」
僕は全員で聖水を持っていれば、最悪対処できると思ってその事を話すが、オリバーは肝心要の『水』が無いと言う。
生活魔法の『ウォーター』を定案すると、オリバーは水魔法適正が無く使えないそうだ。
僕はウォーターで水を生成して、魔力容器に込めてオリバーに見せる。
その一見宙に水が浮いている様に見えた水は、魔力容器に入れてあったので詳細を説明をする。
オリバーは不思議そうな顔をしつつも、魔力容器に祈りをあげ聖水を完成させる………
大容量の聖水が出来上がった瞬間だ。
僕はその聖水を、皆の皮袋の水と交換した。
「アルベイさん……彼はいつもこうなのですか?実はこの量の聖水を作った事など未だかつて無いですから……それも1日しか持たない聖水をメインでなど……あまりにも突飛な考えすぎてですね……。何というか武器に頼らない想定の斜め上をいくこの感じがですね……」
「がはははは!漸く分かってきたか?此奴は効果的面なら容赦なく使うぞ?冒険は剣じゃ無くても出来るということじゃ!!ヒロ的には、ここのダンジョンがお主と特性が合っていると思った訳じゃな!」
そう言ってアルベイは、僕から受け取った聖水をオリバーに見せる。
オリバーは苦笑いしつつも、自分が役に立ったことが誇らしい様だ。
それから僕達は、レイスを倒した後に出たドロップアイテムを『祝福効果』で消滅させた。
出たアイテムはとても物騒で、『呪怨箱』という名前の通り危険な箱に『怨霊の誘い』と言うネックレスが出た。
鑑定結果ではネックレスはかなりのレアアイテムだったが、触った瞬間『レイス』に転身してしまう極悪なアイテムだった。
当然怨霊箱も呪いのマジック・アイテムで、解除不可の致死性の呪いだ。
この階層にいたレイス達はもしかすると、前に来た冒険者がなんとか倒したレイスが落としたそのアイテムを手に取ってしまったのかも知れない。
今の僕達にそれを知る術はないが………
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕達は注意深く下層への階段を降りる……
目の前は広い空間になっているのが見て取れるが、今はまだ連絡通路に値する下り階段なので3階の地図詳細が出ない。
アルベイを先頭に階段から、その開けた場所へ入ると通路では無く広間だった。
しかしアルベイの叫び声で状況が一変する。
「武器を取れ!何かおるぞ!!………あ……あれは!!ダーク・フェアリーじゃ!!」
そのアルベイの言葉に反応する様に、僕とそのフェアリーの目が合う。
「貴様!!あの時の人間じゃねぇか!!あの人間と結託しやがって!さっさと私の本体を返しやがれ!」
こっちが身構える前にダークフェアリーは、風魔法を僕達に撃ち込んできた。
万事休す!と思ったのも束の間、エルデリアの風障壁の魔法で魔法が相殺されてしまう。
「くそ!!エルフ如きの魔法に負けちまうなんて!あのコアの……私の力さえ使えれば!!擦り潰してやるのに!!」
ダーク・フェアリーは風魔法を使ったエルデリアに悪態をつく。
長谷川くんの言った通り、本来の力など当に使えなくなっていたダークフェアリーは、既にフェアリーのちょっと強い奴程度にまでなっていた。
問題は居る場所だ……
ダークフェアリーは自己魔力は使えないが、周りの穢れを自在に使用することが出来る。
いっぺんに使えば以前の様な凶悪さになるが、今はその身体に見合った穢れしか使えないので威力は格段に落ちる。
しかし特定地点を繋げる魔法で、メンバーをバラバラにされてしまった場合、此方の立場は一気に悪くなる。
アイツがそれに気がつく前に、勝負を付ける必要がある。
倒すのでは無く、例のマジックアイテム『魔眼牢獄』(458〜459話参照)に封印するのだ!!
「くそ!この不便な身体じゃまともに何もできねぇ!お前らの相手は別の奴やらせるしかねぇ!!くそぅ!この私とした事が!!ゴミ共を頼るなんて!!」
そう言ったダークフェアリーは、自分の真後ろに黒いゲートを作り中に入ってしまう。
僕等をバラバラの場所に転移させなかったのはある意味救いだが、何処に行ったのか分からない以上事態は悪い方に向かった様だ。
それも『別の奴』と言うのが何かも分からない。
このダンジョンはアンデッドの巣窟だ。
アンデット系の特別種が相手になった場合、ダークフェアリーも戦闘に混じると一気に形成が向こうに傾く。
僕は慌てて地図を開く……運が良ければ、あのダークフェアリーは名前を思っている可能性もある。
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