第536話「完成!!新兵器スライム弾」
群れの中心で突如発生する水竜巻……
スライムは分体なのでダメージを受けても本体は痛くも痒くもない……
上手くいった事に喜ぶスライムはどんどん最小サイズで分裂する。
水竜巻は僕が使う時ほど大きくないので詠唱者に依存するかもしれないが、ゴブリン相手には十分すぎる威力だ。
即座に10球程のスライム水竜巻弾が出来上がる……
スライムにゴブリンの声帯を再現してしまったが為に、酷い生体兵器を作り上げた様だ。
肩に勝手に登ってくるので自動装填だ。
「雷の次は水竜巻かよ!危なっかしくて群れ中央で闘えないじゃないか!!」
『ソウダ!ソウダ!アナホッテニゲナカッタラシンデタ!!シャザイニ!チョコレートヲヨコセーー!!』
エクシアは御立腹の様だが、どうやらアリン子も御立腹の様で穴を掘って避難して難を逃れた様だ。
しかし謝罪にチョコを求めてくる時点で平和だ……
僕はエクシアにスライム弾を渡すと『好きな場所に投げ込んでください』と言う。
投げた先でなかなかデカイ水竜巻が発生するので、楽しくなったエクシアは僕の肩にいるスライムを掴んでは放り込んでいた。
その間に僕はチョコを出してアリン子とスライム本体にあげる。
少し休憩中だがエクシアはそれを見て口を開けて待っている。
仕方ないのでエクシアの口にも放り込む。
『有り難う!エクシアより優しい……そっちに移ろうかな………』
などと念話が伝わってくる……ビックリした事に口を開けていたのはエクシアではなくチャンティコだった様だ。
チャンティコなのかエクシアなのかが分かりずらい。
「ビックリしたわ!急に身体の支配権が無くなったかと思ったらチョコ食ってんだもん!!人のチャンティコに餌付けすんなよな!!」
餌付けしたつもりも無いし、するつもりも無い。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
化現組二人で戦った結果ゴブリンやホブゴブリンは圧勝できることが分かった。
問題は途中で新たな『生体兵器』の開発に成功したことと、アリン子の運動不足解消が大きかった。
アリン子は大きさのせいで宿屋裏の畑に居たが、余りにも暇で抜け出しては森を駆け回っていた様だ。
折角なので暴れるだけ暴れていいと言ったら、嬉々としてゴブリンとホブゴブリンを相手に連戦連勝だった。
元々魔物の脅威度が違いすぎるので、ゴブリン程度ならば大したことは無いのだろうが、クイーンの命令で動かない現在は戦う楽しみを覚えてしまった様だ。
エクシアを見せ過ぎたのは、良くなかったかもしれない。
そうこうしていると、知っている場所が見えて来た。
鉱山戦をした例の場所だ。
「結構片付きましたね!鉱山坑道入り口までもう少しですでよ!懐かしい魔獣と戦った場所が見えて来ましたし!」
僕は魔法の地図を見つつ、エクシアにそう伝える。
「ようやくスタート地点か!後はザムド達が来るのを待つだけだけど……アタイ達で何とかなりそうって言えば、なりそうなんだけどね………」
僕が言わないでいた事を平然と言うエクシアだったが、出てくる魔物の殆どがゴブリンでそれ以外は稀にオークウォーリアー、程良くてホブゴブリンと言う状態だった。
僕とエクシアは交互に戦いながらチャンティコとトラロックでの闘い方を覚えていたが、化現で戦うのは正直ここまでだろう。
鉱山内部で範囲魔法など、自殺行為に近いので肉弾戦は必須だ。
そもそも化現して体が大きくなっているので、このままでは崩れる可能性のある坑道は入ることさえできない。
ダンジョンに入っても、大きい部屋以外では化現さえ出来ないかもしれない。
「ひとまず僕達はある程度魔物が出終わるまで、此処で魔物の総数を削った方が良いかもしれないですね。僕等がここにいる事知ってる人いませんし!」
「なかなか冴えてるじゃないか!確かにそうだね。アンタの言った通り、中に入っちまったらアタイ達が此処にいるって事を知っている奴もいないしね!」
僕とエクシアで鉱山内部から途切れず出てくるゴブリンとホブゴブリンを倒していると、ようやく先発隊と思われる鉱山直通路を上がってくるグループが到着した。
「こんな所に居たぞ!!お前たち何をしておるのだ!」
「だってさぁ……アタイ達も一緒にちんたら話してたら、ゴブリンの群れは町付近まで来てたぞ?それにアンタ達は見てないから分からないだろうけど、1匹ずつなんか倒してたら疲弊して負けるのはアンタ達だったよ!」
ザムド伯爵は物凄い剣幕で怒るが、そもそもダンジョン・スタンピードの時は魔物を纏めて倒す手段がないなら、出来る人間に任せるべきなのだ。
しかし僕達がトラロックとチャンティコに化現した姿を、ドワーフの戦士団とドワーフの王は見たことが無い。
ゴブリンやホブゴブリン相手にしている僕等の姿を見た彼等は武器を構えて近づいてきたが、ザムドは危害がない事を説明する。
「エルフの皆さんすいませんゴブリン達の相手変わって貰えますか?化現を解くので!」
「ロズとベン前衛にいきな!ベロニカ遠距離で援護だ!アタイは休憩するよ!」
僕とエクシアは直ちにゴブリン達の相手をエルフ一行とファイアフォックスメンバーに代わってもらう。
まずドワーフ戦士団の彼等には実際に僕等が誰か見せた方が早いからだ。
「姉さんにヒロ兄はやる事が相変わらず出鱈目っすね!でもおかげで街の被害は最小ですよ!今森方面からくるゴブリン達を街の冒険者と衛兵で頑張って倒してますからね!ドワーフ戦士団の半分は街で防衛戦になりました!」
ロズがエクシアに報告したあと、ベロニカが僕に伝言を伝えてくれた。
「おいヒロ!ユイナ達は街担当って事になったから、鉱山の方はよろしくだってさ!ダークフェアリーの問題もあるから、あまり奥に進んだりするなだってよ!アタイがユイナから預かった伝言だよ!」
僕が化現を解くのと、ドワーフ王とスレイヤーのアラヤトムとキングケリーは、開いた口が閉まらなくなってしまう。
「まさか……このお方は……焔と山の神のチャンティコ………様!?」
「ヒロ殿は嵐の雷鳴を司るトラロック様を化現なさるのか!?………なんと我等スレイヤーは戦神を敬うドワーフ族にございます!数々の御無礼何卒ご容赦を!」
ドワーフ王はチャンティコに過剰反応して、スレイヤーは戦闘馬鹿なのでチャンティコとトラロックの両方を敬っている様だ。
トラロックは平和主義者だと言っても多分聞かないだろう……それだけキングケリーの圧は凄かった。
「ドワーフ戦士団よ!戦神の御前だ!マヌケな姿を晒すな!全てのゴブリンとホブゴブリンを滅せよ!!」
「「「我らが戦を戦神へ捧げるぞぉぉぉ!!」」」
ドワーフ王の一言で、戦士団は坑道入り口付近に居る物凄い数のゴブリンに果敢に突撃をする。
キングケリーもアラヤトムも斧を振り回して突っ込んでいく……
「ザムド伯爵……これが作戦なのですか?」
「そんなわけ無いだろう!鉱山入り口までの活路をドワーフ戦士団が切り開くと言ってくれたのだ!だが既にもう通れる様になっていたがな!誰かのお陰でな?」
「暇だったので……少し減らしておこうと思っただけですよ!そしたら意外と綺麗に肩がついただけなんですよ!エクシアさんも範囲魔法を試したかったようなのであの群れはその練習台に丁度良かったし!」
「そうだよ!ザムドー!変に兵士が居たら範囲魔法なんか使えないだろう?だからアタイとヒロで……『ちょいちょいちょい』と数をだね………」
「その『ちょいちょい』の数には全く当てはまらんからな?これは……だが……まぁ助かった!礼を言うエクシアにヒロ男爵よ!」
僕達は本当に、自分のスキルを使いこなす為に先行しただけだから、この件で礼を言われる必要などない。
しかしジェムズマインの街とすれば助かったのは事実だろう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。