第535話「会議は周りに任せてエクシアといざ鉱山へ!」
「なぁ!アリン子と話しているのは良いけど早く行こうぜ!」
エクシアと一緒にアリン子の背中に跨ると、振り落とされないスピードで鉱山に向かう。
『アルブル・モンドの見渡しの魔法地図』を広げて、どの進路からゴブリン達が来ているかを確かめる。
溢れ出たゴブリンの緑の雪崩は二方向に伸びていた。
片方は森の中で、もう片方は鉱山から街へ伸びる直通路だった……当然早く到達するより危険な方を退治するべきだ。
鉱山路を選択し向かうと、まるで緑色の津波のようにゴブリンが押し寄せて来ていた。
「マジか!すげぇ居るね!でもちょうど良いや!力試しにはもってこいだ!」
そう言ったエクシアはチャンティコを化現させる。
「おいで!焔蛇!もう一人の私……『炎の女神!山神たる力を!』街の脅威を共に焼き尽くすよ!来れ!『チャンティコ』」
チャンティコはエクシアを依代として化現した途端、太く長い尻尾でゴブリンを纏めて薙ぎ払い両手で巨大な火球を作り放り投げる。
すると緑の津波の真ん中にポッカリ穴ができる……しかしその穴も、あっという間に後続のゴブリンに埋め尽くされる。
ゴブリン達は、自分の仲間達がまだ生きていようが関係無く、その上を気にせず踏み潰しながら迫ってくる。
『クワンダ・エストルァテス・ラ・ローボア……アクアパイソン』
僕は念の為にアクアパイソンを召喚しておく。
万が一横に逸れた個体が居た場合、アクアパイソンなら追いつけるだろうからだ。
外で呪文を使った事もあり天井が無いので、アクアパイソンの大きさは8メートルを超えていた。
下手すると大きさは10メートルくらいになっていたが、大きい分には今は助かる。
「アクアパイソン!ゴブリン達は好きなだけ自由に喰っていいよ!エクシアさんの側に行かないでね?ノリノリでゴブリンで新スキルの試し切り中で危険だからね!蛇は蛇でもちょっとおかしいから!」
「ちょっと!どう言う事だい?アタイもソイツも一見蛇だろう?蛇迫害はよくないぞ?迫害反対!!」
そういうとエクシアは、尻尾を勢い良くゴブリンの群れに打ち付ける……『べチン』と地面に叩きつける音と共にゴブリンの悲鳴が響き渡るが、エクシアは気にせず突撃をかましゴブリンの群れの深い所まで食い込んでいく……
「ギヒィィ………」
「ギエェェェェ!!」
直撃を免れたゴブリン数匹が、苦しそうに呻き声をあげると、周辺のゴブリンに『恐怖』が伝播する……しかし後ろから押し寄せる他のゴブリンの歩みは止まら無いので、あちこちで将棋倒しになり勝手に被害が膨らんでいく。
「馬鹿な奴等だね……背後から来てんのに急に進路塞げば、倒れるに決まってんだろう?大した知能が無いんだから死ぬ気で進めや!文字通り死んでもらうけどねぇ!!」
エクシアはそうゴブリンの群れに言うと………両手に直径10センチほどの火の球を作る。
『フレア・バード!!』
エクシアは両手の火の球を融合させそこから巨大な焔の鳥の形をした魔法を撃ち出す……
周囲のゴブリンを巻き込みながら、まっすぐ羽ばたく焔の鳥は、直線上のゴブリンの群れを火だるまにした。
暫く焔の鳥は周辺を焼き尽くしながら羽ばたく……
エクシアは自在とまではいかないが、その焔の鳥を幾らか動かすことが出来るようだった。
焔の鳥が消えると、真っ黒に焦げたゴブリンやホブゴブリンだった『モノ』が転がっていた。
「ようやく試せたよ!範囲魔法って……なかなか操作が大変だね!何度か使ってコツを掴まないと実践で使うには難しいね!アンタは初見でそれをボコボコ撃ってるんだから……もはや変人だね!」
そんな事をいうエクシアだが、『既にこれは実戦では?』とは言い辛い……何故なら2発目の焔の鳥を撃ち出したからだ。
迂闊に変な事を言ったら、エクシアは絶対に焔の鳥をこっちにけしかけてくるだろう……
周辺は逃げ惑うゴブリンの群れに変わり、ゴブリンもホブゴブリンもエクシアの凶悪な魔法の前には、街になど向かえる状況ではなかった。
『契約者!チャンティコだけに良い格好をさせるで無い!この雨と雷の神であるトラロックを呼ぶのだ!!』
僕は『獄卒』があるので良いです……と言いたかったが、それは其れで後が煩そうなので仕方なく呼ぶことにした。
「雨と雷の神!化現せよ!トラロック!」
呼び方を忘れた僕は適当に言ったが、今度呼ぶときはもう少し気の利いた呼び方を考えた方が良さそうだ。
僕を依代に化現したばかりのトラロックは、僕の身体の主導権を奪い何の前触れも無く凶悪な魔法を展開する……
『アトモスフェリク・ライトニング・ディスチャージ!!』
地面に次々と魔法陣が浮かぶとそこを起点に周囲に放電が起き、雷が繋がっていく……ゲームで見るチェインライトニングの様ではあるが、範囲が尋常では無く鉱山の上の方まで雷が伝っていく。
そしてトラロックはその魔法陣目掛けて、更に容赦無く雷を落とす……当然ゴブリンの群れは逃げ惑う事に必死だ。
因みにエクシアも一緒に逃げ回っている……『ビリビリってする!ビリビリってする!テメェ覚えておけよ!後で絶対に仕返しするからな!!』と念話を送ってくるが、やっているのはトラロックで僕では無い。
下手するとエクシアでは無く、チャンティコの方が怒っているのかも知れない……そうなれば僕の命が危険で危ないので、そろそろやめて欲しいものだ。
放電が収まると、トラロックもとい僕はチャンティコの渾身のフルスイングを腹に喰らう事になったが、出来れば僕の身体に影響のない所でやり合ってくれたらいいな……と思った。
だが、言葉に何も出せず悶絶しているトラロックには哀れに思うしかなかった。
因みに痛いのはトラロックで、僕は無痛なので良かった……
「おいヒロふざけてないでさっさと上に向かうよ!見てみなよ?アリン子の方がまともに闘ってるぞ?」
そう言われた僕はゴブリンに群れを見ると、大きな鉤爪で次々とゴブリンを仕留めていた。
数匹のゴブリンは、スライムの溶解液をかけられて生きたまま溶けている。
2匹とも今まで暇だったのか、この戦闘を割と楽しんでいる様にも思えた。
スライムに至っては、分裂した半身が倒した個体をどんどん捕食しているので、容積がぐんぐんと増えている。
僕の使役するスライムは、分体がさらに分体を生み出す危険な状態になっている。
簡易鑑定では『ゴブリン溶解率120%』と出ている……
僕はスライム本体を鑑定をして確認すると……
『ゴブリン溶解解析終了……溶解率100%毎に部位再現を1箇所可能。『容姿(頭部・右腕・左腕・胴体・右足・左足)』『声帯』』
スライムが必死に捕食していたのはこの為だったのかと思うと、スライムの生体は奥が深いと感じる。
僕は折角なので『声帯』を選ぶ事にした。
そうすれば念話でなくとも話は出来るし、コミュニケーションが取れれば今迄よりパーティーのマスコット的存在になる筈だ。
それにスライムの色味のゴブリンなどが側にいると正直気味が悪い……それも1箇所しか現状再現出来ないのだ部位では……。
「マスター!!話せる様になったーー!!ゴブリンいっぱい。ゴブリン経験値稼ぎ頑張るー!………ウォーター・ジャベリン!!」
スライムは分裂すると次々と詠唱し周辺のゴブリン目掛けて投擲する。
今まで雑魚としてゴブリンスライムを対処して来ただろう……
しかしウチのスライムは一味違う……水魔法を使うだけで無く僕がなんと無く再現した水魔法も器用に真似をするのだ。
あちこちで致命傷を受けて絶命するゴブリン達は、危険なスライムから距離をとり始める……
スライムは再度分裂し最小サイズになると、ヨジヨジと脚を登り僕の肩に登ると『群れに投げてくれ』と言う。
僕は言われた通り、野球ボールサイズのスライムを群れの奥に投げると、『ウォーター・トルネード!!』と投げた先で、スライム分体が詠唱する声が聞こえた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。