第506話「エクシアの企みと周囲の反応」


「アタイが連れてってやるよ!万が一暴れたらアタイが抑えてやるから!な?神子さん!!ぶははは!!」



「さっきからその笑いが気に食わんが……まぁ森でワライタケでも食った事にしておいてやる!村長会議場まで早く連れて行け!」



 エクシアに抑えられれば間違いなく逆らえない。


 逃げれば絶対に追いかけてくる『笑いのため』に……そして逆らえば制圧される……当然『笑いの為に』……



 たまにエクシアさんの悪ノリが面倒になるが、何かしたいのだろう……エクシアさんのやろうとしている事が上手くいかなかったら、2倍働いて貰おう!!全員のしてエクシアさんにはラミア形態で運んでもらおう!!


 そう思って大人しく従って会議場へ向かう。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「長老様にオババ様!貴方達が道を誤ったので、水精霊様は我々に『この印』を与えてくださいました!!ご覧下さい第一神子のボーザー様を!良いですか?我々は水の精霊様に『神子』に認められたのです!!」



「………ムムーラ……不本意じゃが此ればかりは庇い立て出来んぞ?何故あんな危険な物を家の前に飾っておった?話では『ダンジョンの封印』だったそうではないか?何故我々に一言も言わなんだ?」



「オババ様!!わ……私は水輝石だと思っておりました!あの巨大な水輝石を北の宮へ奉納など出来ません!娘が巫女になった時に東の宮に奉納したいのは親の願望ではないでしょうか!」



 僕達はボーザーのどうしようもない妄想に付き合わされていた。


 ルームが、伯爵家のエンブレム付き短剣を見せてミミを強制的に連れ出した事に、ボーザー禰宜は怒っていた。


 村民と東の宮関係者は、完全に勘違いした状態であった様で未だにそれは続いている。


 考えてみれば、一部の『水精霊』に纏わる関係者以外には発現しないのだから、勘違いは必然だった。



 エクシアは楽しそうに眺めているが、多分意地悪い切り返しがあるに決まっている。



「ミミとその家族はこの村を混乱に陥れただけで無く、あの最低最悪なダンジョンを解放したのです!死刑以外はないでしょう!彼女の師匠と呼ばれる『ヒロ』と言う冒険者にはそれ相応の責任を取ってもらい、ダンジョンの攻略及びダンジョンから手に入れた宝は我ら『神子7人衆』の保管をするべきだと思うのです!村長如何でしょうか!」



「ボーザー……如何でしょうかも何も……ないんじゃないかい?アンタは『既にそうするつもり』なんだろう?ならばジジ様もこのオババだって言う意味はないだろう?」



 おばば様は諦めた感じに話をする……


 ミミはキョロキョロ周りを見回しなんで僕とエクシアが何も言わないのか様子を伺っている。



「我々村民の言葉も聞いてください!我々はボーザー神子様が、禰宜を務めていた時からしきりに言っておりました!ミミの水輝石の件は『イカサマ』だと!それにオババ様も長老様も『人骨』への祝福は賛成なさったじゃないですか!あれはボーザー神子様が得た仕事で御座います!!」



「「「そうだ!そうだ!!」」」



 どうやら美味しい思いをさせて貰っていた『リーダー格』の村民はボーザーに加担する様に言われている様だ。


 僕の目を見ずに逸らしたまま、あれこれと話している。



「ちょっと良いかい?質問なんだが……その『人骨』って言うのは何なんだい?祝福とか言ってたが……アンデッドにしない為にって事かい?」



「そこの女冒険者!!よく聴いてくれた!我々は『古戦場』に散らばり土に埋まった『人骨』を集めて祝福して居るんだ!それはあの地をアンデッドから解放して……『プラマホ!!』…………あ!!いや………神子様!これは我々のした事をちゃんと明確にする事でですね!……『いいから黙るのだ!!』……」



「………人骨といえばね!あたしゃ面白い奴らを捕らえたんだ!ロズ!連れて来な!」



「ヘイ!!エク姉さん!!」



 村の多くの人間が見守る中で、ロズに連れてこられて長老と村長の目の前に転がされる『黒ずくめの男』……



「おい!お前!アタイに言った事をここで白状しな!別にアンタじゃなくてもまだ仲間はたくさん居るからね?話さないなら『パウラー』ってやつと同じ様に首を刎ねる!」



 そう言ってエクシアは、マジックバックから首を一つ『黒ずくめの男』に向けて放り投げる。



「良いかい?あたしゃ胸糞悪いアンタ達を生かしておきたいとは思わないんだ!!ザムド!ウイン!邪魔したら殺すよ伯爵でもだ!!おいオマエ!!話せ!だがな……言葉を選んだ時点で殺す!嘘を言った時点で殺す!誰かに助けを求めた時点で殺す!!わかったね?この国を売った背信者!分かったらさっさと言いな!!」



 ザムド伯爵とウインディア伯爵は首をすぼめて『コワイコワイ』と笑って見せる……


 多分これは、エクシアと既に打ち合わせ済みなのだろう……



「ひぃぃぃぃ!!言う!言うから!お……俺達は……水鏡村から『人骨』を買い取って、賢王の森のダンジョンに持っていき『アンデッド』を養殖するのが仕事だ!ボーザーって奴が小国郡国家との取引で、この国で『人工ダンジョン』のテストをしているんだ!言ったぞ!!この首を退けてくれ!!早く!!」



「それで?………アンタもボーザーだったよね?神子さん?んで?精霊使いなんだろう?精霊見せてくれよ?」



「お……同じ名前などどこにでも居るだろう?それに言った筈だ!水の精霊を下民などに………」



「ローリィ!エイミィ!風っ子を今すぐ見せてやんな!」



「………は?……何を言って……」



「おいで!私の可愛い風の精霊!」


「来れ!風の精霊!その偉大な姿を今此処に!!」



『ゴォォォォォォーーーーーーーーーー』



 ローリィとエイミィの性格が現れた呼び出し方法だった……


 全員が風の精霊を見て口を開けている……



「皆さん!そしてエクシア姉さん!私の可愛い風っ子です!」


「エク姉さん!皆さん!私の新しい精霊のパートナー風精霊です!!」



「ありがとうね!お二人さん。風っ子達もあんがとさん!……それで?ボーザーアンタの可愛い水精霊は?」



「ま……まさか……か……風精霊………ぐ……精霊使いだと?……く……み……水精霊は呼ぶのが大変なのだ!そ!それにその精霊は話せないじゃないか!下級精霊の印だろう!!」



『痴れ者め!我らを侮辱すとは!この村へ風を送っているのは我が眷属ぞ!!』


『いけませんよ?お姉様?人などが我々を見て判断できるはずもありませんから!』



「「「「直接頭に!?話された!?中級の風様だぁぁぁ!!」」」」



「わぁぁぁぁぁぁ!!」



 村民はそれを見て大騒ぎを始める……しかし直後にエクシアに叱られる……



「悪いね外野は黙っててくれるかい?今『ボーザー』に聴いてるんだ!アタイはね!……ボーザー!さっさとアンタが大好きな水精霊だしな!出来ないのかい?まさか……それで精霊使いだって?ご大層な印があるんだろう?」



「私は必要以外には出さんだけだ!!馬鹿にするな!」



「はいはい!分かったよ!ミミ!下級水精霊出してやんな!」



「は!はい!………え?出しちゃって良いんですか?出しちゃダメだって……前言っていたじゃ無いですか!エクシア姉様は?」



「アンタ……実力を理解してないのかい?まったく……ミミがこの村の人間を『皆殺し』にするのにかかるのは1刻で『全員溺死』だよ!アンタはもう既に『銀級冒険者』の技術は持っているんだ……問題は『殺意を強く持てない心根の優しさ』って事だけさ!まぁそこがアンタの魅力なんだけどね!」



 そうエクシアに言われたミミは感動のあまり泣き出した……

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