第507話「ミミの精霊の化現と精霊に起きた異変」
「うそ!?水精霊様だ!!」
「「「ミミが!?」」」
水精霊はミミをヨシヨシとしている。
「水精霊しゃん!いつもごめんなさい!泣き虫で頼りない契約者で!………ふえぇぇぇぇ………」
『良いのよ!ミミちゃん!貴女は貴女のままでいいの!私はそんなミミが大好きよ?………あれ?話せる?』
「ふえええん………あ……あれ?ふわぁぁぁあ!水っ子ちゃん!大きくなってますよ!?何でですか?」
『多分ミミのおかげですね?この村の民に『信者』が出来たのでしょう!ミミ……貴女の行いに感謝します!これからも泣き虫なミミのままでいてね?』
「はい!水っ子ちゃん!」
「ハイじゃない!ミミ!!水っ子も甘やかすなミミを!!………『うわっぷ!!』この水っ子め!水かけやがって!!飼い主にそっくりじゃんか!!」
ミミの代わりに水っ子が、エクシアに水をかけて『あっかんべー』をして消える……
「マジでやられたわ!飼い主が自由なら精霊も自由かよ!!」
周りにいる村民はミミを悪者と取れなくなっている……それは当然だろう。
巫女でさえ『精霊契約』など出来ていない。
唯一声が聞けるだけだった……
それが自称神子様のボーザー達が現れた事で、歴代巫女や村長そして長老とのパワーレベルが狂っていたのだ。
だが今はミミの精霊が『全員に見えるように』化現をした……多分わざとだろう……
しかしミミの実力に加えて『信者』の数で、下級から中級に上がった精霊の事を聞き逃さなかった『オババ様』は、一気に形勢逆転を計る。
「ボーザー神子様?水精霊様は出せるか出せないかは別として……精霊の契約者を『死刑』などには出来ますまい?それに精霊使い様のその家族を死刑など……あってはなりませんぞ?あとエクシア殿が言ってた事件……これは到底捨て置けませんぞ?『人骨』は今どこに埋葬してありますか?」
「その話が私だと言う確証はないだろう!人骨の事はお前達が知る必要はどないが……無実の証明に教えておいてやる!私の依頼主から『共同埋葬地』に埋葬したと報告が来ておるわ!」
「ならば、その依頼主は明らかにするべきですぞ?今は既に大事になって居ますからな!ダンジョンを人工で作ったとなれば、この村の民は全員打首の上『魔の森に遺棄』されますぞ?まさか知らなかったとは言いますまい?まさか村と信者を見捨てて、水精霊に関係ない依頼主を庇ったりしないとおもいますがのぉ?」
ボーザーは苦し紛れの言い訳をしようと、しきりに思考を巡らしているようだ。
しかし答えを言う前にオババ様が追い討ちをかける。
「トレンチのダンジョンや王都周辺のダンジョンは、多くの冒険者を雇い国を挙げてダンジョンの破壊に努めているんですぞ?既に目の前に『ザムド伯爵とウィンディア伯爵』がいらっしゃってます!幾ら『精霊使い』でもダンジョンを作ったとなれば、タダではすみませんぞ?」
僕はその事を聞いて折角なので付け加える。
「ボーザーさん……精霊使いなんですよね?だったら『ここのダンジョン攻略』をして貰えるんじゃないですか?その後その彼が言う人工ダンジョンを踏破して貰えば済みますし!精霊使いといえば『精霊魔法』『属性魔法』『属性召喚』は学べば使えますし!それに『水棲召喚術』なら僕が教えられますし!!」
『クワンダ・エストルァテス・ラ・ディープ……アクアプリン』
僕は召喚魔法を唱えると……1メートルサイズ3匹のアクアプリンが魔法陣から湧き出る……
今の魔法詠唱を唱えれば『アクアプリン』が出せますよ!
3匹はボーザーに近寄っていく……
「魔物!?まて!これを……魔物を退かせ!!化け物だ!コイツは人間ではない!化け物だ!人の皮を被った化け物だ!!」
「「「「そうですよ?だから?」」」」
困ったことに、ソウマにユイナそしてローリィとエイミィが同時に答える……
「おっとっと?なんですか!皆さん!それ本音ですよね?」
あえて皆僕のセリフを無視しているようだ………
「だがヒロ男爵の言い分も良いかもしれんな?流石ヒロはこの地域の領主だ!なぁ?ウィンディア伯爵よ!」
「そうですね!ザムド侯爵様……おっと!伯爵様!ヒロの所領故村民は協力するべきですし、そもそもヒロ殿は3精霊と契約した『化け物』ですからね!」
わざとらしくウィンディア伯爵はザムド伯爵の爵位を間違えて言う……
多分『侯爵爵位』をこれから賜るのだろう……
そして僕の情報も知れ渡っている様だ……多分テカーリンギルドマスターの仕業は間違いが無い。
「さん?3精霊だと?馬鹿な事を!!其奴等もどうせ伯爵でもなんでもなくインチキの詐欺師だろう?」
「ヒロ!見せてやんな!この村を助けた『水っ子』は何度も皆見ているからね!ついでに新しい子をみせとくれ!アタイにね!!」
『ウォーター!!………バシャバシャ………シュルシュル……シュルルン……』
『言われなくても出るわよ?エクシア!大変だったんだから!本当に!』
「きゃぁぁぁぁ!あ!あの御姿!!さっきダンジョン入り口で、皆に逃げる様に説明された精霊様よ!!」
「俺も見たぞ!上級精霊様の最後の言葉を伝えてくれた……この村の守護者様だ!!」
「「「見えないぞ!後ろにも居るんだ!!前のやつ!しゃがめよ!!見せてくれ」」」
水っ子はもはや凄い人気だった……
そしてあの状況を見て居たのか、長老と村長は跪き頭を下げる。
オババ様は僕の顔を見てから、頭を抱えて『やっちまった!!』と言う顔をしている……
しかし、まだ終わりでは無い……
『シュルシュル……バキバキ……パキパキ……シュルシュル……シュルル……』
『初めまして!私は森の中級精霊で、ご主人様から森っ子と呼ばれております!皆様お見知りおきを!!』
周辺の木を取り込み人の形を作る森っ子は非常に礼儀正しく挨拶をした。
目の前で見て居た村民は驚きのあまり腰を抜かす。
『ゴォォォォォォ………シュルシュル……シュルシュル……シュルシュルン』
『私を呼んだかしら?偉大なる風の第一位中級精霊を?それはそうと……さっきからヒロの側でその男の話を聴いてましたが……精霊契約?祭壇も無しに出来る筈が無いでしょう!!それに背信者が契約?失礼極まりない!!……水っ子!ちゃんと説明してやりなさい!『背信者』であるその者達の事を!他眷属であろうが背信者は絶対に許されません!!』
水っ子が出てくるなり大人気で歓声が上がったが、激怒する風精霊に村民はしょぼくれた顔をする。
そこからは水っ子の説明だった……『背信者の烙印』から始まり、封印水氷塊を割った禰宜の話そしてダンジョンで起きた上級精霊の最後の言葉……『雷雨のトラロック』の話をした時には、エクシアが『外で対決しよう!』と物騒な事を言っていた。
かなり掻い摘んで話したが、全員のボーザーの見る目が180度変わっていた。
この村を危機に陥れたのは他でも無いボーザーだった事と、水精霊との契約などされていない事。
そして一番言葉に説得力を持ったのは僕の言葉だった………『神子様であり新領主であり救援隊リーダー』だったのだから否応無く信頼バフはマックスまで上がる。
「まぁそう言う事で……ダンジョンと精霊の話は終わりです!皆さん、この村は明日には危険地帯になります!なので……隣村に場所を貰い巨大な『街』を作ろうと思います!」
「街ですと?」
「「「「「おおおおおお!!!」」」」」
「ちょっと待て!ヒロ……本気か?たしかに私達は協力すると言ったが……そんな『街づくり資金』は無いぞ?」
「そうだぞ!ザムド伯爵の言う通りだ!今は冬に向かっているんだ!そんな中で街づくりの着工など!」
「今すぐでは無いですよ!順次です!先に食べ物の確保、そして住居や店順次建てていきます!そしてそこを拠点に此処のダンジョンを破壊して土地を奪還します!」
一瞬静まり返った後、村人の大歓声が上がった………
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