第499話「要救護者と憤慨する村民」
「ヒロ様!大きな音がしましたが?」
「シャインさん!壁に連続罠がある場合『破壊できる』事がわかったんですよ!だから水球で破壊をして安全を図りました」
轟音にビックリしたシャインが走ってきて、僕の身に怪我がないかあちこち見る……
「ひとまずあの十字路まで戻り、チャックを呼んで残りの人数を把握しましょう!地図を彼に預けてあるので、それが無いと分かりませんから!」
「そうですね!話して情報を得た結果、どうやら此処は『水鏡天満宮』の建物の様です。皆さんはこの建物内で働いていた方々で権禰宜という方々と出仕という方々の様です。ヒロさん!情報を集めたシャインを褒めてください!!」
突然『褒めて』と言われたので、どうすれば良いかわからないので、僕はテレビで見た『頭をぽんぽんした後、撫で撫で』をしてから
『シャインさん!ありがとう……お陰で助かりました、でも無茶はダメだからね?』
と言うと、誰も居ない壁に向かって手をブンブン激しく振っていた……まさか感知に引っかからない魔物のゴーストでもみえたのだろうか?
そんなシャインさんを放置して、僕は助けた巫女に不思議に思っていた事を質問する。
「巫女様、聞いて良いですか?巫女様と神子様それに舞姫は同じ意味だと思うのですが……違いがあるのですか?」
「巫女と神子様が同じですと?そんな事はありません!水精霊は全て女性なのです!水精霊は男性との契約は基本結びません!!神子様が現れたと言う事であれば、その例外にあたり水精霊様が契約者された特殊な男性と言う事になります!舞姫に関しても……(云々カンヌン)………」
しかし水っ子は念話で『普通に契約するしー?』と送ってきているので、完全に巫女達の思い込みによる勘違いの様だ。
ちなみに水っ子は、スライムのウォーターでリュックの中で化現してモンブランと談笑中の様だ。
何はともあれ、どうやらミコ違いに関する事はこの異世界特有の決まり事の様だ。
僕自身も自分達の世界を元に考えすぎていた……
此処は異世界だったのだ……決まり事などその土地の人間が決める事だ、此処で違いがあってもそれは当然のことだった。
僕はチャックを呼ぼうとするが、モアが僕に何をするのか聞き始めた。
僕が地図が必要なのでその事を話すと、モアはチャックを弄りたいらしく……大声で……
「チャックー!戻ってきて!!ムラナームさんは救出したから、この後の予定を考えるのに地図がいるから!!ダッシュ!!」
僕は大声でチャックを呼ぶと、彼は一目散に戻ってくる。
チャックのパブロフの犬現象を垣間見る光景だった……
「一度彼らを地上に連れて行った方が良いかもしれないな……魔物が出た場合、全員無傷で地上へは難しいんじゃ無いか?更にこれ以上村民が増えたら階層移動で歩いて帰るんだ……帰すのも大変だしな!」
普段意見をしない輝きの旋風のトンバが話し始めた。
彼は弟が魔物になった事を今でも想い悩んでいる……だからこそ彼らを此処に居させたく無いのだろう。
「トンバさん、貴方の言う事は正しいです!万が一を考えれば地上に連れ帰った方が僕達としても安心です!一度二手に分かれましょう。捜索班と護衛班で!」
僕がそう言うと、エルフのエルオリアスがその役を買って出てくれた。
「皆さんは先に進んでも大丈夫です。私達には追跡スキルがあるから間違いなく後を追えるから……ヒロ殿は村民を救うことに注力してください。」
そう言うとエルオリアスは4人の兵士を護衛に任命して二人の護衛で地上へ向かおうとする。
「アルベイ!俺も行ってくる!村人達が弟の二の舞になるのはゴメンだからな!!」
「トンバ!だったら俺も付き合うぜ!魔物が居ないから暇だしな!」
そう言ってドーイも一緒に護衛組に回る。
「そうじゃな!少しでも手が空いている者は地上と此処を繋ぐ役になった方がいいかも知れん!ローリィとエイミィはヒロのお目付で一緒におるんじゃ!ワシらは交代で村民を地上へ送ろう!そろそろレッドアイズの奴らも2階層くらいには来る頃じゃろうからな!」
「では皆さん……申し訳ないですが、地上迄の護衛お願いします。魔物は居ないとは思いますが……充分ご注意を!」
彼ら4人は強く頷いて、村民を連れて上の階層を目指して向かう準備をする。
「あと、人骨回収の皆さん。人骨の入った背負い鞄のお渡しは、申し訳ないですが僕が地上に出た後になります。今は人命優先なので申し訳ないです」
僕のセリフを聞いた、上の階層で助けた四人は声を揃えて……
「「「「ヒロ様!ありがとうございました!」」」」
「地上に出たら奴等の悪行を村の全員に暴露しますから!!この村を滅茶苦茶にしたボーザー達だけは許しません!!」
周りの村民は、同じ村の住民の突然の発言に戸惑いと好奇心が隠せない様だが、地上に出れば否応無く知る事になるだろう……どうして村がこうなったのか知るのは時間の問題だ。
「ヒロの旦那!この先下層へ向かう階段は直ぐ見つかる場所にあったぞ!罠も何故かこの周辺だけに密集してて、奥に行くと無くなるんだ!本当に変なダンジョンだぜ!」
チャックが言うのだから間違いないだろう……罠に関しては彼の右の出る者はいないだろう。
今までに彼が得た経験に関しては右に出る冒険者など、そうは居ないからだ。
魔法の地図を見るとまだ名前が6人も名前が残っている。
それも困った事に居場所がバラバラだから、地味に時間がかかる。
「名前がまだ6人も載っているので急いで救出にいきましょう!下手すれば怪我をしてて動けないかもしれませんし!」
チャックが罠を片っ端から解除してくれていたおかげで、時間が短縮できた。
地図を見た上で、奥の指示を待っている間に救出の優先順位を立てて解除していた様だ。
当の僕は、面倒臭いプラマホやら巫女に捕まって無駄に時間を費やしたので、その時の話をするとチャックは『なんかそのプラマホってのは胡散臭いっすね?此処に飲まれた巫女の関係者でもないんでしょう?』と言う。
確かに『リーダー』を務める程の人物だ……何か人骨について聴けたかもしれない。
そもそもその人骨は『水鏡天満宮』へ持っていく途中だったから、今この中に飲まれたのだ……
封印水氷塊が破壊されたのは偶然だろうが、人骨と水鏡天満宮の繋がりは間違いない。
そして水精霊の背信者と言うのも気にかかる。
「ひぃぃぃ………誰ですか!そこに居るのは誰でしょうか!?」
僕達は話しながらも不用意に近づいたので、状況を把握出来ていない村の住民を驚かせてしまった様だ。
「安心してください。偶然村に居た冒険者です。ダンジョンに飲まれたと聴いたので救出に来ました!」
「わ……私は『第25代水氷の舞姫』ミセラです。助けて頂きありがとうございます。私のお付きが周りの状況を確認に行っており、その間に私は魔物避けの結界を張っていたのですが……何故か結界が張れないのです」
「僕は冒険者のヒロでこっちはチャック、後ろにいるのは輝きの旋風パーティーのリーダーアルベイです。結界が張れないとは……どう言う事でしょう?」
「水精霊の御力を持って私が結界を張るのです。しかし鍾乳洞内に感じられた水精霊の力が全て無くなったのです!!今は微弱な反応を感じるだけです……それも貴方様が此処へ来て初めて感じるくらい希薄な反応なのです!」
僕は今起きている事情を説明する。
ボーザー禰宜のやっかみでミミの家にあった封印水氷塊を彼等が破壊して、その結果多くの天満宮関係者がダンジョンに飲み込まれた事だが、舞姫は信じられない様な素振りをする。
それもそうだろう自分が感じていた力の源が、この地を守り続けていた。
そしてその守護者を、同じ志を持った自分達の身内と呼べる『水鏡天満宮の禰宜達が破壊した』事を知ってしまえば、その心はどうなるだろう……
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