第498話「罠で瀕死の村民と自分勝手なリーダー」
「今からそっちに行きます。絶対に動かない様に!!罠が発動しますから……壁にも触れない様に!!」
「助けが!!助けが来た!!ベギラー……もう大丈夫だ!」
「マジか?こんな場所に助けが?死ぬかと思った今回は流石に……」
「分かった!!助けてくれ早く……矢が太腿を貫通して動けないんだ。私の名前はプラマホだ!助けてくれれば禰宜のボーザーに口利きしてやろう!!絶対に損はないぞ!」
目の前に噂の『リーダー』のプラマホがいる……
全員が背負い鞄を持っているので、すぐに回収しないと浮かばれない魂が出来てしまう……
僕は通路に踏み込んで次々に罠を斬り払う。
『シュキン!……シュキン!!』
定期的に槍が飛び出る壁が見つかった。
槍を斬り落としても新しい槍が飛び出てくる。
よく見ると人が通れるサイズの隙間が下にあるが、太っている場合は確実に通れない……プラマホを見た感じ横幅があり大変危険だ。
僕は片方の壁から出る槍を『ウォーター・スフィア』で爆散させて通り抜ける。
『シュ!シュシュ!!シュ!!』
『キン!キキン!!カン!』
交わした後に追撃する段階的な罠だ……どうやら『プッシュニードル』の罠だが槍と違って一度限りの罠だった。
飛んで来るニードルを弾き返すだけだが、3人はそれを見て非常に怖がり声を上げる。
「ひぃぃぃ!!大丈夫なのか?あんな速い罠を何故かわせるんだ?弾き返すなんて………」
「ひぃぃ……こっちに飛んできそうで怖い!」
弾き返す金属音が非常に怖い様で、頭を抱えて泣き始めている。
しかし一人は声を出せない様だ。
よく見るとかなり出血している……このままでは死んでしまうかもしれない。
と思い『簡易鑑定』をすると『失神』『失血(大)』『重症』と出ている……急がないと死んでしまうのは明白だ。
「今からそっちに飛びますが、後ろの罠はなんでしたか?」
「後ろの罠は仕掛け矢だ!でももう出ない!バックを置いて確認済みだ!!」
声を出したのは話に出た『ゴーゼム』と言う男だろう。
一気に僕は残りの通路部分を罠を弾きながら駆け抜けて到達する。
「く!!槍罠がまた!」
『ウォーター・スフィア!!』
『ズガガ…………ガン!!!』
槍の罠が彼らの側に無かったのは助かった……
万が一あった場合吹き飛ばしていたかもしれないからだ。
そして不幸中の幸いだが、罠壁は今出した咄嗟の魔法で破壊することが出来ることがわかった。
「これを飲ませて下さい。失血中の男を抱えるゴーゼムに初級ポーションを渡すが、プラマホが奪い取って飲み干してしまう……」
「あ!プラマホ!!ベギラーを見ればコイツが優先だろうが!!ああ!くそ!死んじまう!!」
僕はもう一本初級ポーションをゴーゼムに渡してベギラーに飲ませる。……と、ようやく容態が安定して『衰弱』『失神』となっている。
「ああ!何だこれ!足の傷が治ったが矢が邪魔で治らないじゃないか!!がぁぁぁ!!いってぇぇぇ!何しやがる!冒険者風情が!!」
「貴方は馬鹿ですか?せっかくのポーションなのに矢を抜く前に飲んだら意味ないでしょう!見てください、効果は薄いですが傷は塞がっていきますよ!全く……乞食じゃ無いんだから!順番守って下さいよね!ポーションが無駄になったじゃ無いですか!」
「ポ!ポーション!?ポ!?すまない……取り乱した!……ベギラーに変わって礼を言う。代金は責任を持って払うが……今即金で払えないんだ。すまない。」
「……ポーションだなんてそんな高価な!!あの仕事何回分だ……だが命には……ううポーションか……高そうだ……」
素直に頭を下げて礼を言うゴーゼムに比べて、プラマホは『代金』の心配だけをしている。
「それより聞きたいことが!今貴方達の背後にあるのは『人骨』ですよね?どっかでばら撒いたり落としたりしてませんか?」
「何でそれを!?」
「大丈夫です……鞄を開けてませんので落としてません……何故でしょう?」
「ゴーゼム勝手に答えるで無い!!全くコレは我々としては、大変な金になる仕事なのだぞ?秘密を守れ!!マッタク!」
あくまで協力的では無いプラマホに、ほとほと愛想が尽きた僕は究極の選択をさせる。
当然背負い鞄は回収するが、彼が望むなら『死んだ後回収』するしか無いだろう……ちょうどこの先には槍罠がある。
彼の体格ではあの罠は死ぬまで通れない。
アンデッドになれば槍の罠も関係ないから通れるが、だがそこまで僕は待つ気もない。
「貴方は此処に共に残り魔物になりますか?それとも僕の言う事を聞いて『人間として此処』から出ますか?今此処で選んで下さい。言葉次第では置いて行きます」
「待ってくれ!答えるし金も払う!勿論ポーションの代金も払う!!落としてない。この中に入っている人骨は一度も落としてない!!」
やっと答えたので、僕も理由を言っておく。
本来その必要など無いが、彼と同じにはなりたく無いからだ。
「良いですか?此処はダンジョンです。貴方達は今ダンジョンに飲まれたんです。ならば人骨が散乱すればダンジョンに飲まれて『アンデッド』になるでしょう?重要な話なんですよ!だから聞きました」
僕は今まで壊した罠を指差して、説明に現実味を持たせる。
そしてダンジョンなのだから、急に魔物化してもおかしく無い事も説明に付け加える……
「どこかでばら撒かれても困るので、今は僕が預かります!コレはこのダンジョンでは一番危険なのです!魔物と戦いたいんですか?今の貴方達だったら間違いなく負けますよ?」
そう言って否応なしにマジックグローブで回収する。
渋々従った彼等だが、僕は人骨に興味はない事を説明して、ダンジョンから出たらお仲間のと一緒に返却する事を伝える。
その言葉に安心した様で、彼等は怪我の様子を確認する。
彼らに手を貸しすが、起こす時に気がついた……プラマホの手の甲に『波型渦紋様』の背信者の烙印があった……
彼は紋様の意味を理解していないが『背信者』だったのだ。
しかし今その事を言っても仕方がないので、僕は通路の先にいると思われる住民を救いに向かう。
「ああああ!水の精霊様!感謝致します!無事生きられた事を心より感謝致します!!」
僕を見るなり感激して水精霊に祈りを捧げる女性はどうやら『巫女』の様だ。
そしてその脇に『権禰宜のムラナーム』と思わしき女性がいた。
「父は!父は?無事ですか?母は?」
「ムラナームさんですね?大丈夫ですよ壁の向こう側に待機させてます此処は罠だらけで危険ですからね!直ぐに移動しますので準備を。壁には絶対に触れないで下さいね!」
「あの!神子様はどちらに?」
「それは後でにしましょう!此処から逃さねばならない人間が山ほどいるんです。まだ此処以外にも人が多くいますし、あの人達みたいな怪我人もいるかもしれません。魔物が居ない今だからこそ助けられるんですから!」
「大丈夫です!水精霊の加護があるこの神殿……魔物の脅威など跳ね返しましょう!此処に神子様がいらっしゃれば尚更です!貴方は何処にいるか今直ぐ教えなさい!!」
僕はあまり刺激しない様にそう伝える。
しかし狂信的な巫女だった様で、僕の意見など聞く気もない様だ。
僕を冷たくあしらって、命令をした。
僕は自分勝手だな……と思いつつ、強めに巫女に意見をする……これ以上無駄話に付き合っている時間的余裕はないからだ。
「此処はダンジョンの中ですよ?精霊の力が衰える。意味のない事で言い争っている暇があるんだったら、村民を救う手伝いをしたら如何ですか?ムラナームさん行きますよ!」
『ウォーター・スフィア!!』
僕は巨大な水球を、残る槍罠にぶつけて破壊すると、さっさとその場所を離れる。
当然だが残りたく無い巫女は文句を飲み込みついてくる。
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