第491話「宮司登場……禰宜と言ったら豆腐じゃ無い?」


「ベグラー宮司さんの言う通りですね……僕の知り合いもダンジョンで死んで『魂の祝福』を求めましたし……ダンジョンで苦しみ死んで彷徨い更に苦しむのは間違ってます。ですが、宮司さんボーザーさんの言い分も間違えてます。故郷に帰ってきた娘を『追い出す』のは『間違い』ですよね?」



「ボーザー!!お前はそんな事を言ったのか!!我々は『修行中に勝手に出て行った娘の巫女戻りは認めない!』と言ったのだ!冒険者になる分には問題などないだろう?その娘が故郷に帰ろうが、両親に会おうが問題ない!!現に妹の『巫女入り』は姉の不始末で流れたのだ!これ以上事を荒立てるなら禰宜から降格させるぞ!!」



「だけど兄貴………」


「水鏡の社を扱う時は、ベグラー宮司と呼べ!!」



「は!はい!!ベグラー宮司!!彼等は冒険者の階級を偽って……『黙れ!!』………あ!あう……………」



「彼等が冒険者である事は間違いはない!階級をどう言おうが我々には問題はないだろう!この村を潤してくれる村外のお客様だ!この馬鹿者どもめ!!ならば聞くが……S+ギルドだったらどうするつもりだ?何と言い逃れするのだ?この馬鹿者どもめ!もし力のある冒険者様なら森に巣食う『ジャイアント・センティピード』を駆除してくれるかもしれんのだぞ!」


「あ!…………」



「…………あ!?………………??」



 僕の言葉にボーザーがヒクヒクっと反応する……


 だがそれどころではない……まさかの名前が出てきた……ルモーラが嬉々として全滅させた『ジャイアント・センティピード』は異常繁殖した個体らしい……


 それを金銭面の関係で駆除依頼出来ずに困っていたが、僕達はルモーラの戦闘センスの確認に使っていた……


 そして当然だがルモーラが倒したのだ……こうなるに決まっている……



「それならルモーラが全部倒したよぉ!!感謝しなさい!!村人達よ!此処の村では私森のフェアリー『ルモーラ』を祀ると良いわ!!」



 ルモーラとスライムは魚をエイミィに解してもらっていた……


 スライムは焦げた所も美味しそうに溶解させているが、ルモーラは爪楊枝を使って一生懸命頬張っていた。


 しかし自分の活躍話に火がついたら、黙ってなどいられないのがルモーラだ。



「ギャハハハハハハ!!フェアリーが?ジャイアント・センティピードを?ギャハハハハハハ!!」



「オオムカデの間違いだろうそれは?確かに大きさだったらフェアリーでもジャイアント・センティピードだがな!!ギャハハハハハハ!」



「どうだ!兄貴!嘘吐きだって自分で言ったじゃないか!!間違ってないだろう!俺は!ハハハハッハ!!」



 ルモーラが言った事は当然信じてなんか貰えなかった。


 それもその筈ジャイアント・センティピードは前に倒した『アーマー・センティピード』と比べて大きさは倍近くある完全なる化け物だ。


 だからこそ僕達はその魔物をフェアリーが倒すことに驚愕していたのだが、実際に目で見ない事には理解などできるはずがない。



「冒険者様……こればかりは宮司と言えど……『だまらっしゃい!!今見せるわ』………」



 ベグラー宮司の言おうとする次の言葉を、耳元に飛んでいき大声で辞めさせたルモーラは、マッコリーニとフラッペそしてハリスコに向かって飛んでいく。


「アンタ達!あのムカデ全部店の外に積み上げない!今すぐよ!じゃないと買取話は無効よ!!!」


「このマッコリーニ!!直ちに!!」


「私も!!今すぐ!!」


「ルモーラさん!今すぐ積んできますぜ!!また他の魔物もよろしくお願いします!!大先生!!」



「分かったわ!ハリスコ!口動かす前にさっさと積んできなさい!!」


 マッコリーニ達はエルフの3グループと契約をしたようで、魔物の討伐部位をエルフ特性のマジックバッグに入れてもらっていた。


 すぐに飛んで行き頭を下げてお願いする。


 エルフ達は箸やフォークを置いて店から出て行くと三つのムカデ山を作る。


 その総数24匹それもジャイアント・センティピードだけでだ。


「見て驚きなさい!偉大なる新緑の森の妖精ルモーラ様の力よ!上空から『感知』して全て叩き潰してやったわ!!感謝するのね!!」



『ゴォォォォォォォォ!!』



 無駄にルモーラは上空に突風を起こす……この魔物達よりも『自分が一番強い』と言う演出だろう。



「「「「ひ……ひぃぃぃぃぃぃぃなんて数だ!」」」」



「が……………な何だ……これは!!」



「ジャイアント!!ジャイアント・センティピード!!…………何匹居るんだこれは!?」



「だ……だからお前達に言ったではないか!……私も俄には信じ難いが……目に前に積まれれば、もうコレは認めなければならんぞ?」


「嘘だろ!?コレをこのちびっ子が?」


 食堂の亭主も焼いていた魚を落とすぐらいびっくりしている。


 しかしスライムとルモーラは、それを逃さず足元に向かう……



「フェアリー様!疑って申し訳………あれ?………フェアリー様?ルモーラ様?」



「ベグラー宮司さん!今スライムと一緒に、食堂の亭主が落とした魚に向かって一直線しました……」



 全員が見ると、落ちた魚をじっと見つめるルモーラとスライムがいた。



「ヤベェまたやっちまった………うぉぉぉ!!ビックリした!踏んじまう所だぞ?これも今焼いて出してやるから皿の方で待ってな!!数匹まとめて焼いてやる!あの魔物のせいで森の幸が取れなかったんだ!礼には少ねぇが、俺も羽振りが良いわけじゃないからな!」



「ルモーラ様、冒険者の皆様……何とお礼を言ったものか……それに村民の非礼をお許し頂きたい!まさか我々が願う前に退治して頂いてたとは!!」



「「「有難う御座います!!ルモーラ様!!」」」



 若干名の村人は若干ルモーラ贔屓へ傾きつつある……目の前のジャイアント・センティピードの山を見れば理由もわかるが……


 お礼の言葉は主に猟師で、山に関する幸を多く仕留めるので否応にもルモーラの尊敬バフは非常に早く積み上がる。



 面白くないのは禰宜のボーザーとその一派だ。


 言葉では礼を言うが、心はこもっていなかった。



「おい!ボーザー禰宜とお前たち!これ以上迷惑を此処でかけるのは私が許さん!普通に対応出来ないものはさっさと散れ!ボーザー!お前たちはまだ古戦場の人骨集めが済んでないだろう!浮かばれぬ魂にためにさっさと集めてこい!無駄な時間などないぞ!」



 ベグラー宮司がそう言うと、ボーザー禰宜一派は不満を残した顔でその場を去る。


「お父様!水輝石の件は?」


「その話は後だ!今は森の脅威が無くなったのだ……村長会議の議題になってた案件が片付いたのだから、今のうちに猟師達に山と森、そして渓谷入りの許可を出さねばならんのだ!村の収入と収穫がかかっているのだから、ミミの行動など二の次だ!」



「そ!そんな!お父様!!」



「宮司の娘であり、『神託の巫女』と『神舞の巫女』の候補者であれば学ぶのだ!死んだ腹違いのお前の姉のように!思慮深くなりなさい!!」



「また……またお姉様の事を!!私は………『神託の巫女』にも『神舞の巫女』にもなって見せます!!いい加減死んだ母と娘の事は忘れて私を見てください!!お父様!!」



 親子喧嘩を垣間見たが、何やらコレはコレで問題が深そうだ……


 そう思いつつもなぜ此処までミミを憎むのか……その理由には行きつかない。



 そんな風に思案を巡らせているが、カーデルと呼ばれた娘は『キッ!!』と僕を睨むと渓谷の方面へ姿を消した……

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