第492話「水鏡村は水精霊信者の修練の村」


「悪いな!カーデルは昔は素直な娘だったんだが……あの家も大変でな……あんな目で睨む様になっちまったか……ボーザーが帰ってきてからだ……あの子もおかしくなったのは……」


「その……再婚相手ですか?その間にできた娘さん?あ!すいません……そんな事聞くべきじゃないですよね!」



「はははは!違うわよ!!カーデルのお母さんはカーデルを産んですぐに死んだのよ。ベグラー宮司も……っていうかこの水鏡村は最低2人の妻を持つ村よ?妻の片方は『巫女』で片方は『猟師』か『砕石師』とか……そうね村に関わる女よ」



「全員が奥さん2人ですか?」



「あら!アンタ!すごい食いつくわね?ソウマって言ってたわね?アンタならすぐ嫁の貰い手付くわよ?なんなら紹介するけど?」



「「「「ソウマさん……」」」」


 ユイナにミク、カナミにアーチまでが白い目でソウマを見る。



「もしかして……奥さん欲しいんですか?ソウマさん?」



「おい!ヒロ!馬鹿言うなよ!奥さん2人とか言われれば……気になるだろう?」



「「「「ソウマさん……」」」」


 再度ユイナにミク、カナミにアーチが白い目でソウマを見たが、先程と異なるのは白い目で見た後に、食器を持ち別の席に移動した事だろう。


 代わりに押し出されて席移動させられた『輝きの旋風』4人にしてみれば良い迷惑だ。



「その……ちなみに宮司さんは今、娘と二人暮らしになっているって事ですよね?」



 その質問にはテラリナ(奥さんB)が答える……



「そうなのよ……だから可哀想でね……宮司の父親とすれば『神託の巫女』と『神舞の巫女』はそれぞれの娘に分けたかったの……でもね、今更どうにもならないからね……カーデルも可哀想なのよ。全部を一身に受け止めて父の念願を叶えるんだ……ってね……だからミミへの風当たりも強くなったみたいなのよ」



「ああ!確かにな!村長の妻様はオババ様があんな事言わなければ……カーデルも巫女の特訓に影響出なかっただろうにな!」



「あんな事?」



 食堂の亭主は困りつつも話をする……どうやらミミを『私の後を継ぐ神舞の巫女の一人に推薦する』と言った様だ。


 そのせいで席が決まっている『神託の巫女』と『神舞の巫女』の継承問題に発展したらしい。


 『神託の巫女』の座は2名そして『神舞の巫女』の座は4名そして『水鏡の舞姫』が1名らしい。


 神託巫女は1家族から重複して選ばれてはならないと言う慣わしがあり、神舞も同様らしいが『同一人物』であるならば良いとされる様だ。



「え?席があるんですか?複数?ならば……問題にはならないんじゃ?」



「今のベグラー宮司は水鏡東の宮の宮司なんだよ、だからこそ問題なのさ。水鏡天満宮には東西南北があってな……『渓谷集落』『森林集落』『平野集落』『丘陵集落』さ、今いるこの場所は渓谷集落だよ」



「こ!この村そんなに大きいんですか?」



「何言ってるんだ?自給自足で数十人だと暮らせんだろう?基本は物々交換がメインだけどな……ジェムズマインの街が発展して行く中、今時パッとせんよ……」



 僕はクロークから『アルブル・モンドの見渡しの魔法地図』を取り出してみると、名称が浮かぶ……


 家にしてみれば15件程度平均だが、4集落ともなれば1人でも60名だ……奥さん2人で旦那さん合わせれば3人これだけで3倍の180人……こごもを入れれば200人を超えるかもしれない……



「水鏡天満宮って言いましたが……本殿みたいなのが?」


「おお!あるぞ?巫女か水の精霊使いか水鏡天満宮関係者しか入れんから中はどうか知らんがな?水輝石を採っているミミの親父は外輪迄は立ち入りを許されているから、場所はミミに聞くと良い。そもそも巫女の修行をしている場所が本殿だからな!」



 急激に問題が膨れ上がる気がしてならない……今日帰る気満々だったが……間違い無く帰れない気がする……


 ミクちゃんにお願いしてクルッポーを派遣して、ザムド伯爵とウィンディア伯爵、それとエクシアさんに謝りを入れないと絶対に後で怒られる……


 僕は話しながらそれを決心していた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 色々話を聞きつつ問題にも直面したが、食堂を後にする。


 現代と違って大手コーヒーショップと違い長居はできない。


「ミクちゃんまたお願いが………」



「伝書クルッポーちゃんですよね?なんと無くわかってます……この村も大きそうですね……問題も村の規模も。でも久々に森林浴できて嬉しいです。林間学校に来た感じがたまらないと言うか……」


 僕は必要な宛先へ先程手紙を書いていた。


 それをミクに渡すとクルッポーの脚にある不思議な筒に収納する……ビックリした事にそれは手紙用の異次元収納だった。


 僕はチョコを出して食べるか見せるが見向きもしない。



「鳩はチョコ食べないよ?食べないと言うより食べさせちゃダメなの!異世界はどうか知らないけど、教える前に食べないから危険なんだと分かっているみたいだね?」



 ミクはビックリした事に鳩にチョコを与えてはいけないと言う……どうやらそれはちゃんと根拠があるらしい話の様だ。


 僕は今度倉庫のモノリスプレートでお礼の品を買うと、クルッポーに話してお願いする。



『クルッポー!!!バサバサバサバサ…………』



 今まで暇だったのか、勢いよく飛んで行くクルッポー……運動不足なのかも知れない。


 僕達はひとまず村の様子を伺うために出歩く事にしたが、なんせ大所帯だ……



 ひとまず宿泊先を探すと大きな宿屋があるのは、この渓谷集落の様だ。



 理由は簡単で、この水鏡村の入り口に値する場所らしいので宿も大きかった。


 しかし残念なことにこの村の宿は既にマッコリーニ達が押さえていた……素晴らしい手際の良さだ。



「すいません……ですが空けられますよ!我々奥の集落でも問題ないですから!」



 その回答はすぐに無かったっことにされる……あのテントの味をしめた女性陣は『テントがいい!!』と言い出したのだ。


 今日はマッタリ元夫人とストレイ伯爵は不正の後始末でまだ来ていない……


 だが問題が起きた時の為にマークラとイスクーバは同行中だ。



 テントを出して誰かが中にいれば持ち去られたりはしないが……


 僕は食堂の亭主にお願いをしに行く……



「この食堂の裏手の空き地にテント立てても良いですか?」



「テントを?構わんが……人数分には狭いだろう?村の宿は?」



 僕はマッコリーニ商団たち3商団が居ることを説明して、奥の集落でも宿があると聞いたが、全員バラバラになるので……と説明しておく。


 許可をもらったので、僕はテントを出して宿泊準備をするが女将さん2人と娘さんが気になってみに来ていた。


 子供は2人かと思ったが、下にまだ1人ずついた様でまだ3歳だと言う。



 テントに入り中を確認するが、何故かベッドメイキングされている……掃除されたかの様に綺麗なので『鑑定』すると……


『宿泊利用後、5時間で元の状態になる。置き忘れた物はテントの備品になり、入り口から外へ持ち出し不可能』と書いてあった……備品になるのは知らなかったので忘れ物は厳禁だ!



「コレはたまげたねぇ!あのフェアリーを連れて歩くだけあるって事だわ……ハァァ凄い!!」


「もし良ければ……部屋使いますか?25部屋あるし空いてますから!」



「本気で言ってるのかい!?……テラリナ!テラリナ!!ちょっと来て!!」



 奥さん二人組は気に入った様で各1部屋を貸し出した。


 その代わり食事は今日の分の他に明日も3食(弁当付き)を提供してくれる話になったので、空き地を借りられて空いてる部屋で飯を用意して貰い棚ぼただった。

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