第490話「ミミが入ったギルドに驚愕する村民達」


「おとーちゃん!ボーザーさん……ビチョビチョだよ!きゃははははは!」


「かーさん!ボーザーさん水精霊様に怒られたのかな?」



 唖然とする母2人と亭主だったが、今僕の目の前では魚が焦げているので危険だ………アレを食べるのは僕達なのだから胃袋の危険が危ない!!



「亭主さん!魚!魚!焦げてるよ!!」


「ああ!いけねぇ!折角の魚が………コレは周りを剥がせば食えるが客には出せねぇな……」



 その言葉を聞いた、スライムとルモーラが飛び出てくる。


 スライムは僕のリュックだが、ルモーラはエイミィのクロークのフードからすっ飛んでくる。



「ま……マジかよ……これアンタ達の?………かい?まさか……この魚を?捨てる位なら食ってくれた方がいいけどよ!まさかの魔物かよ!!すげぇパーティーにミミは入ったもんだな!ちなみに何級ギルドの名前は何だい?」



 亭主の話にレッドアイズのパーティーリーダーのルームは、胸を張って説明する。


「あれ?さっき話してないのかい?ミミは何時もおっちょこちょいだからな……俺達が所属しているのはS+のプラチナギルドで『ファイアフォックス』だぜ!あの王様から直接プラチナギルドを拝命したんだぜ!!」



「「「ミミが!プラチナギルドのメンバー!?」」」



 それを聞いて驚いたのは、ミミが帰った事を聞いて丁度食堂に集まった村人達だった……



「これはたまげた!!今すぐ皆に知らせるぞ!!俺は森側に伝えててくるぞ!」


「じゃあわしは、渓谷側の者に教えてくる!!」


「こりゃもう村きっての出世頭じゃの!馬鹿にしてた奴らの顔が見ものじゃ!!はっはっは!!」



 集まりの中から3人程村民へ知らせに向かって行く……お爺さんが多めだったが、年寄りだから仕事を終えて早めに戻ったのだろう。


 他の人はルームにあれこれと聞いている。


 自分達のパーティーも自慢できてルームは嬉しそうだし、パーティーメンバーは酒を奢ってもらえてご機嫌のようだ。


 僕らはご飯を食べつつ会話を楽しんだが、此処の食堂に集まっているのはどうやらミミ応援組の様だ。



 何故それが分かったのかと言えば、ミミをイカサマ師呼ばわりするグループが現れたからだ。



「ボーザーの言う通り来てみたら、何だ!詐欺師の集まりかこいつ等は!何がプラチナギルドだ、こんな冒険者どもがそんな凄かったら、俺なんか渓谷の王になってるぞ!はっはっはっはっは!!」



「ほんとだぜ!世も末だな!こんなインチキ冒険者の言うこと信じて!水輝石だって何かタネがあって光らせられてるんだよ!インチキだったらS+だろうけどな!ははははは!!」



 口々に悪口を言う村人達………何があったら此処まで邪険に出来るのか、そこがすごく気になる。


 折角村の食堂でお金を落とす客の機嫌を損ねれば、それら冒険者が落とす金が少なくなり、村の収入など少なくなるのが分からないのだろうか?



「せっかく飯食ってんのにすまねぇな!消化不良になっちまうよな?アイツ等は『ボーザーの紹介する仕事』でひと山当てた奴らなんだ!稼ぎが良いから馬鹿にしやがるんだ!!俺達を!!」



「そんなに儲かる仕事なんですか?あんな風に天狗になるってことは?何してるんでしょう?」



 僕はあまりにも気になったので、素直に聞いてみると、



「この先に『古戦場』があってな、文字通り昔にこの周辺で大きな戦があった時の戦場だ。そこで『人骨集め』してるんだよ……供養すればゴースト系の魔物が居なくなるとかでな?それをする事で領主様から『礼金』が出るって言ってたんだ。やらない奴は俺等みたいに爪弾きさ!!」



「人骨集めですか?領主が礼金を?ではその遺骨はこの村で埋葬を?質問ばかりですいません」



「いやこの村で埋葬せずに、領主様が『共同墓地』を建てる……とかだった筈だぜ?」



 僕はイスクーバとマークラに、何故そんな事をするのか聞こうとするがマークラにこれまた耳打ちされる……




『我々では無いですね!何か秘密と黒幕がいそうです』



 薔薇村の『人身売買』に続き今度は『人骨集め』と来たら、こ僕の所領は問題ばかりな気がする。


 そもそも何か裏で動く組織的な企みも感じられる……こんなのばかりで本当に頭が痛い……



 そう思っていると……着替えたボーザーが再登場する。



「さっきは水をかけやがって!!何だお前達は!!誰がやった!言ってみろ!」



「何だと!?ボーザー!!俺等がやったみたいな事を言いやがって!お前が水精霊様の好きな水輝石を馬鹿にしたからバチが当たったんだろうが!!」



 禰宜と食堂亭主の喧嘩が始まり、周囲を巻き込み大きな喧嘩になりそうだ……


 責任の全ては水っ子にあるので止めないとならないが、約1名の水精霊がボーザーが嫌いなのは間違いない。


 僕は割って入り喧嘩を止めようとするが……



「ボーザー!!辞めなさい!彼等はこの村に来た冒険者達ですよ!ちゃんと村の施設を利用して頂くためにも、丁重にお持て成しをせねばならないのに!間違って居るのは貴方でしょう?村人の喧嘩に外部の人間を巻き込まないように!」



「兄貴……あ!いえ……ベグラー宮司……ですが、ミミはこの村の者ですから!言うのは当然かと!」



「『何度言わせるんですか?』ミミはこの村を出た娘ですよ?ちゃんとした手順を踏まずに!貴方がそんなでは、彼女は『神託の巫女』と『神舞の巫女』の『次代を継ぐ者の試験を受けられる』と言っているようなものでは無いですか!良いですか?『勝手に村は出て行ったが、実力は付けました!!』では巫女は務まらないのです!ちゃんと考えて言葉を選びなさい!」



「だけど兄貴!!……あ!宮司様!…………」



「あの村長夫婦が言った事を忘れたのですか?我々は村を出たミミの『巫女戻り』は断じて許せないのですよ?一時の感情で起きた怒りなど捨て置きなさい!ボーザー!!何度説明すればわかりますか?その地位に見合う行いをなさい!!」


 どうやらボーザーは目の前の宮司の弟らしい。


 感情で行動が左右されるのは、兄のベグラー宮司との会話から理解できる。



 会話の内容からは、ミミをこの村に『戻したく無い理由』が宮司にはあるが、弟の禰宜の方は自分より弱い存在のミミを『インチキの悪者』に仕立て上げたいようだ。


 こんなのが2人も水神に仕えて居ると聞いて呆れるしか無い。


 精霊の言葉を聴けないのは当然だろう……



「お父様!叔父様!インチキの方法は分かりましたか?」



「カーデル!!貴女まで……口を慎みなさい!!!水輝石を光らせることが出来たかどうかを今こうして確認に来たのではないですか!カーデル!貴女は叔父であるボーザーに肩入れし過ぎです!!この村を担う者の言動では無いですよ!?」



 僕は不思議に思った……ミミを『追い出したい気はある』が悪い人なのかいまいち分からない。



「ベグラー宮司!アンタには悪く言うつもりはないが!!弟と周りの奴をどうにかしろ!!『如何わしい仕事』だの自分に与しない奴の排除をする奴が禰宜でいいのか!?」



「クラッパ申し訳ない……愚弟のせいで迷惑をかけた。我々はお前達が用意するお神酒やお供えを嬉しく思って居る。愚弟なりに『領主』へ掛け合い見つけた仕事なのだ。君にとっては『如何わしい』かもしれんが、供養を欲する者に其れをするのも我々の役目、死んで彷徨う魂などあってはならんのだ!」



 すごく意外な解答が帰ってきた……まさか死んだ人への供養を真面目に考えていたとは意外すぎだ。


 てっきり金目的な不真面目な人かと思ったが、どうやら目が曇っていたのは僕のようだ。

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