第466話「薔薇村の新しい特産品・高級香木チップ」
村長の行動が気になるのか、周りの村民はチラチラコチを見る。
それを感じた執事のマークラが、『ヒロ様というのはお避けください……今ヒロ様の妙案を実行中です……この村を前の状態に戻す為に協力を……』と村長にのみ聞こえる声量で言う。
しかし心配するまもなくローリィ達が帰ってくる。
「なかなか良い香木が集まったよ!見てくれる?」
渡したマジックバッグをひっくり返すと、中にはかなりの量の香木が入っていた。
「じゃあアタイ達はこれを仕分けするね?何が何かわからないでしょう?」
食堂の女将と道具屋のおばちゃんは半信半疑で枝を仕分ける……
「疑う訳じゃないが……こんな匂いしかしない木材何に使うんだい?……疑う訳じゃないんだよ?」
「実は私も思ってたんだ……匂いの木なんか薪にすれば匂うし、それ以外の使い道なんかなさそうでさ……すまないね無知だから疑うことしか出来なくて……」
知らない事なので疑うのは仕方がないが、彼女達の心配事はそこでは無かった……
意を決した顔でエイミィとローリィに向き直ると話をする……
「それにだよ?私等はアンタ達二人に『嫌われている』としか思えなくてさ。私は道具屋で扱う森の幸を……大分安く買い叩いただろう?」
「それを言うならアタシもだよ……食堂で使うキノコ類を危険な森に取りに行かせて半値で買ってたんだ……流石にアンタ達だって知ってただろう?なのにアンタ達は健気に持って来てて……本当にすまないと思ってたんだけど……あのクソ副村長のせいで生活がやっとだったんだよ……旦那も死んじまって……アンタ達に構う余裕がなかったんだ。本当にすまないね……」
ローリィとエイミィは苦笑いしながら……
「追い出されたおかげで、彷徨った末ヒロさんと会って……輝きの旋風の皆と出会えたんだ……その上、今はファイアフォックスのギルメンだよ?何がどう転がるかなんかわからないよ」
「ローリィの言う通り……白状するとあの時はすごい恨んだけどさ、ヒロに出会って冒険したら、何事も『自分次第』なんだって思ったんだ。だから故郷を少しでも良くしたいから来たんだよアタイ達は……墓参りもしたいしね!」
エイミィは『悪いと思うならどんどん仕分けしてください!先は長いんですよ?』と言う。
今までの罪滅ぼしなのか、すごいスピードで仕分ける道具屋のおばちゃんは、流石商品を扱う眼力がある様だ。
僕はその中の一番太い一本を取ると、肉仕分けをしている子供も含めて全員を集める。
「この香木で乾燥肉に匂いをつけます。すると、あら不思議すごく美味しくなるんですよ?やり方ですが……皆さんは手作業ですが、僕は時短の為に魔法でやっちゃいます」
「「時短?」」
うっかりしていた……時間の概念がないので『短縮』と言うべきだった……しかしこの際だから、僕の所領では『時間』概念を学習させよう!
「『長い時を短縮する』と言う意味が『時短』です。覚えてくださいね?」
そう言うと僕は魔力容器を作り中に表皮を削る刃をつけて、一気に表皮を剥がす。
「まず、表皮をこうやって剥がします。やり方はなんでも構いません。僕は魔法使うのでこうやりますが、皆さんはナタで削るのが早いはずです」
そして、また魔力容器に放り込んで粉々に粉砕する。
粉砕サイズは、丁度いいチップサイズになる様に調整する。
「皮を剥ぐ理由は匂いの関係です。青臭さを除く為と言われますね……そして剥いた木を今度はこんな風にチップにします」
僕はチップにしたものを皆に見せる。
そのチップを皆に見せた後、また魔力容器に入れてチップを入れた容器を回転させつつ、全部に乾燥をかける。
「そして、乾燥させます。これは自然乾燥で問題ないです。僕は『乾燥』の生活魔法で出来ちゃうのでこうしてます。ちなみに皆さんが今見ていたのは『魔力容器』ですが、出来る人はいないと思うのでメインは手作業ですが、逆にこれであれば誰でも出来ます」
そしてクロークから『香木で燻したジャーキー』を皆に配って食べさせる。
「「「「「 !!!!!! 」」」」」」
言葉にならない言葉をあげる村民は、2個3個とジャーキーを食べる。
「どうですか?この味はこの香木を使って燻した物です。これは日持ちもするので、この村の特産にも出来ます。木材だけで無く、香木チップの販売や燻製肉の販売それの他にも色々作れます」
「この村でも暮らし向きを変えられるのか?」
「それがあれば!冬に飢えなくて済む!!」
口々に希望を口にするが、僕は言葉を挟む。
「今の皆さんにはコレは譲れません!何故ならば、不幸な子供が目の前に居るのに助けないで『自分たちだけ裕福』になるつもりですよね?あの副村長と同じ位置の人間を育てても、この村を救う冒険者はこの先誰も居ませんよ?」
すごく暗くなる村民だったが、食堂の女将と道具屋の女将が……
「ならばこの村で『孤児院』を運営しようじゃないか!皆で住居を立てて全員が父親と母親になればいい!!今までアタイ達は『見ないフリ』をして来た……それなのにローリィとエイミィはこの村を救いに戻ってくれたんだ!コレはアタイ達が変われる最後の時なんじゃないかい?」
「私も賛成だ!孤児院の子が仕事をした物を売って還元すればいい!全員で協力して新しい村にするんだ!前みたいな仲の良い村さ!あのヤクタと副村長のせいで疑心暗鬼になっちまったこの村を私達で作り替えるんだ!」
彼女達がそう演説したところで『碌でなし』が帰って来た……
「なんだと?今までこの村で『飯屋』と『道具屋』の営業許可を出してやっていたのに……私に不満があったのか?ならば辞めて良いぞ?『代わりなら沢山いる』からな?次に鉱山戦ではお前達の長男を推薦しようじゃないか!?なぁ?」
碌でなし副村長は食堂の女将と道具屋のおばちゃんに凄む。
「何だと?………貴様……何を言って……ウグ………」
イスクーバが剣を握って飛び出ようとするが、僕はあっという間に彼の『下半身を一時的に麻痺』させる……
何気なく動きを止めようと脚を強く握ったのだが、痺れて動けなくなった様だ。
「イスクーバさん!何ズッコケてんですか……働きすぎですよ?『少し休んだら』如何ですか?」
僕はマークラに指示をしてから、ソウマに手伝って貰い馬車に連れて行かせる
「おお!何だそれは?彼奴は何か文句を言おうとしたよな?今のはお主だろう?なかなか気が利く冒険者だな!私が『男爵家』と仲を取り持ってやろう!!どれ……今そこにある素材やら、その全てを私に任せておけ!仲間にそう説得すると良い!」
副村長は『僕が誰か知らない』ので言いたい放題だ。
「其れにしても村長……まだ分からないのですか?もう貴方はこの村で支持されてないのですよ!だからさっさと村長の座を私に譲ってください!貴方が不甲斐ないせいで村民は鉱山に送られるんですよ?」
「ここ暫くは『ヤクタ男爵様』から徴兵指示をが来ませんが……税を納められない貴方のせいで、また『誰か』が鉱山兵士で行く羽目になったらどうするんですか?」
副村長の言葉で周りの村民が『行きたくない……行かせられない』とざわめく……
そして親が鉱山に行った孤児達は泣き始める。
「うるさいぞ!ガキどもめ!メソメソ泣いている暇があったら、持ってきた木材を早く積まんか!!役立たず共め……目つきの悪さと言い親と同じじゃないか全く!!」
孤児を殴ろうとする副村長だったが、僕は『辞めさせないと!』と思い歩みよる。
その途中で彼の動きを予測できて、最短で彼を制圧できる動きが思い浮かぶ……
副村長の殴ろうとするその腕を取り、グルリと一回転させて地面へ叩きつけると、クロークからミスリルダガーを引き抜いて首筋に刃を当てていた。
アルベイとカナミそしてユイナが我慢ならず飛び出ていたが、誰よりも早く行動した僕に……
「は…………なにぃ??」
「え?」
「うそ……?」
そしてぶん投げられた副村長は………
「いでぇ……はひ!はひ………何をするか!相手は孤児じゃないか!なんで私を?副村長だぞ!ヤクタ男爵様に顔が効くのだぞ!!さっさと離せ!!」
そう文句を言ってから、自分の首筋を冷たい物が触れている事に気がつく。
「ヒィィィ………ナイフ!ナイフが!」
そこに待っていた人が到着した……
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