第460話「分散……憎い敵を前に別れる目標」
「じゃあ話を纏めると、ダークフェアリーはあのトレンチのダンジョン最下層のコアの部屋のみあの出鱈目な力が使えるって事で、それ以外はフェアリー種のちょい上くらいって事だな?」
「そうですね!それもあそこの部屋は既に僕らがあそこから出たと同時に封印状態になったそうなので、開ける事は出来ないようです」
「転移とかは?どうなんだろうね?……」
「ハセガワくんはそれも加味している筈ですよ?そもそも入っても、あのコアの権限は全部この『漆黒の球体』に移したそうなので、穢れは使えないようですし……」
「じゃあ領内巡りの護衛は………」
「エクシア!言い忘れたが……さっきザムド伯爵とウィンディア伯爵から貴族依頼があったぞ?なんでも『鉱山』に名前付きホブゴブリンが逃げ込んだそうだ!各階層のチェックがメインだが……最終目的は討伐だ。今回の見回りで討伐出来ればそれに越したことはないが……と言っていたぞ?」
僕達全員で『ああ!それもあった!』と相槌を打つ。
『バタン!!』
「皆様!お帰りなさいませ!!このビラッツ!ディナーに腕によりを掛けさせました!使いに様子を見にいかせたら、ギルドへもう戻ったと!!お食事はまだですよね?食べながらゆっくりお話しをしたら如何でしょう?」
突然大きな音を立てて入ってくるビラッツと店員達……
店員がギルドで話を聞いたらしく、それを知らされたビラッツはファイアフォックスへ急旋回して戻ってきたようだ。
「おお〜ビラッツ丁度よかった腹減ってたんだよ!いつも悪いね!?」
「何を仰いますか!エクシア様!我々の今があるのは皆様のおかげなんですから!水精霊御用達、精霊の喜ぶ味のホーンラビット亭と人気が止まりません!!」
「お前は……早いな情報が!?」
「勿論で御座います!その為に冒険者へ弁当を配布してますからね!?」
ビックリだった……どうやらホーンラビット亭のスパイが冒険者の中にいるようだ……言われてみれば、水精霊の一件で数人冒険者が外へ飛び出していたが、『そういう事』だったのか……と感心する」
「まぁ私はそんなこと驚きませんでしたよ?ヒロ様だったら精霊王様と仲良くしててもおかしくないでしょうし!」
ビラッツの言葉で全員が『たしかに!しれっと言いそうだ!』と言い始める。
「じゃあ折角だから飯食いながら話そうや!どうせビラッツも、もはやギルドの料理番みたいなもんだしな?」
「!!!S+プラチナギルドの料理番!!このビラッツ!命をかけて拝命致します!!栄養価は重要だとユイナ様に勉強させて頂いてますので!皆様の栄養管理は我々にお任せを!!」
多分明日には呼び名が『S+ギルドの料理番ホーンラビット亭』に変わっているだろう……
「じゃあ、貴族依頼で……アタイ達と輝きの旋風は『鉱山決定』だよな……ヒロの仲間はまだ入れないから『銀級』目指すか?」
「そりゃそうしたいが……今は危険じゃろ?ダークフェアリーがおるんじゃぞ?他のダンジョンに攫われたらいかんじゃろ?」
「アルベイ!なかなか読みが深いじゃないか!確かにそうだね……じゃあヒロと一緒で長期ギルド任務受けて、領内巡りで見回りって感じかね?」
「そうっすね?エク姉さん。危険だから一緒の方がいいと思いますぜ?俺もベンも一緒にいられませんしね?」
「ならば我々が同行しよう!」
声の方を向くと、エルフ3グループにユイとモアにスゥそれにチャックとチャイも一緒にいた。
「あ!!姫さん!!ちょっと!どう言うことかちゃんと説明してくれんだろうね?」
「ははははは……エクシアさん、今チャックとチャイには説明して……一緒に来るって言ってついてきたんですよ彼ら……」
モアがそう笑いながら言う……
「姫ですぜ?エクシア姉さん!そんなん聞いて『ハイ、そうですか』で済まないっすよね?」
「アタイもビックリしたよ!まぁ弓が上手いし、建物に駆け上がるし、三角跳びで弓撃つし………ぜってーーー怪しいって思ってたけどね?」
チャックは横でジト目になる。
エクシアもモア達の運動神経の良さと弓の扱いが良すぎるので何かを感じていたが、『姫』であったことは予想外だったようだ。
僕も彼女達の簡易鑑定で『人間』と出ているので、今現状でも不思議しかない……
「それですよ!鑑定にも出ませんでしたよ!?なんでですか?」
「「「鑑定したの!?」」」
「いえいえ簡易鑑定って言う状態があるんです!名前とか簡易表示で出る状態の事なんですが……エルフのエの字も無かったです!」
彼女達の説明では、今は『人間』になっているようだ。
文字通りエルフとしての力を全く使えず、『人間』になる秘術だそうだ。
エルフの身体に戻る事もできるが、その場合は次に使用できるのは『二つ月の満月』まで待たないとならないらしい。
ひと月に一度月が2個並ぶらしく、その日は特殊な魔法が使える日でもあるようだ……まさに異世界だ。
彼女達は示し合わせた訳ではなく、偶然であった事を教えてくれた。
その事を初めて聞くエルフレアにエルオリアスそしてエルデリアはかなり驚いていた。
そして、エルフ達へ料理を運ぶビラッツも、自分たちの料理が『エルフが好む味』と聞いて凄く驚いていた。
「ビラッツさん、同胞が旅をしていた場合は貴方様の店に立ち寄る事を許して頂きたい……エルフは人間の店などは特に嫌われることが多い……ですがこの味は是非同胞に根付かせたいのです!」
力強いエルフレアの説得でビラッツは了承する……因みに了承は『即答』だったので、ビラッツは一切悩んでは居ないが……
「私達の事より先に明日からの予定を話した方が良いのではないですか?エクシアさん?」
ユイのもっともな言葉と丁寧な口調で、エルフの姫を意識してしまう……しかしエクシアは……
「たしかに!ユイちゃんの言う通りだね!じゃあヒロ達の同行者にはエルフの旦那達で良いのかい?アンタ達は銅級依頼どうするのさ?」
「私達の依頼は、『ゴブリン殲滅依頼』を受ける予定です。一定期間ゴブリンを狩る依頼ですが、最低30匹狩ればいいので皆さんは基本ダンジョンへ行くようですが、フィールドにも出ますし、ゴブリン以外でも総数にカウントしてくれるので!」
「チャックとチャイも一緒に行くと言ってくれたので……」
「そりゃそうでしょう!?身元が割れたからさようならは悲しいし、そもそも前にあちこちで得たアイテム類は、パーティー分配で個人分配じゃないっすからね?アイテムが欲しい訳じゃないっすよ?持っているのが俺達だと不公平って感じじゃないっすか!?」
「素直にパーティー組みたい言えばいいのに?チャックは素直じゃないわよね?ユイとスゥもそう思わない?」
「「だよね!」」
見透かされて急に恥ずかしくなったチャックは、近くの皿から大盛りで肉を取って口に詰め込み、『今は話せないアピール』などをする。
「まぁ、かまってちゃんのチャックは置いといて、チャイもそれでいいって事だよな?」
「そうですね!エクシアさん……今までお世話になったし、鈍臭い僕に優しくしてくれましたからね!役に立てる事があれば、彼女達の手伝いをしようかと……」
エクシアとチャイの話を聞いていたスゥは意地悪く……
「聞いた?チャック?こう言うのが『正解』なんだよ?手伝いと言えば一緒にいられるでしょ!」
「お……おれは前から同じ事言ってるだろう……お前達肉食え!折角作ってくれてんだから!!」
苦し紛れの『肉食え』で大爆笑されるチャックは、既に『彼女達の仲間』だと言う証だ。
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