第448話「新たに手にした力」


 しかし、飛び跳ねまくった結果、やっと手に入れたエクシアのスキルスクロールも、手に入れたそばから消えてしまう。



「ちょっと………なんだい?これ!消えちまったじゃ無いか!?どうなって………あ!……モノクル!モノクル貸して!ハラグロ!」



 エクシアは納得いかない顔をするが、何かを気がついた様にハラグロ男爵からモノクルを回収して『自分』を調べる。


 しかし、それとほぼ同時にロズが珍しくあやまってきた。



「エク姉さん!すまねぇっす!俺もやらかした!!勲章が……勲章が………崩れて消えた!!」



 僕はモノクルを使うエクシアより先に、その内容を把握した……目の前で変化するステータスを見ていたからだ。


 今回の事で、スキルブックには数種類ある可能性がある事がわかった。


 前とは得る方法が全然違うのだ……いい勉強になった。



 今回この宝箱に入っている物を手に入れられるのは、討伐者の場合は欲望の書のスキルを手に入れ、トーテム像は討伐に関わらずこの部屋にいる者に特殊ステータスだった。


 そして問題は勲章効果が誰に渡ったかだ……



 僕が周りを見回すと、ロズにソウマとエクシアにベンの4人が『夜叉転化』を手に入れていた。


 どうやら、戦闘にて傷つき『死にそう』になった事が起因なのかもしれない。



 夜叉からの獄卒まで込みなのかは分からないが………




 ちなみにその勲章効果には、当然その中には僕も含まれている……あの獄卒に僕は気に入られたのだから、当然かも知れない。


 問題はエクシアだ……チャンティコと夜叉になれると言う事だ……もう悪鬼まっしぐらでしか無い……目指す所は『阿修羅』だろうか?


 そうれはそうと……アーチがやらかした問題のスキルは、冒険者にとって素晴らしい物だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


  スキル名『帰還の魔法陣』 


 『死属性・獄卒スキル・LV1』


 ・対象人数 スキル使用者のみ


 自分の還るべき場所へ戻るスキル。

本来は、使役者や領域へ還るための物。


 同種スキル及び魔法の『リターン』

と異なり、制限無く還る事が出来る。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 さすが獄卒……地獄に戻っただろう奴だったが、獄卒まっしぐらな物を残していった……



「うぉぉぉぉ!マジかー!ダンジョンから自由に地上に帰れるスキルだよ!?あれ?持ってる奴と持ってない奴がいるね?何でだい?何か取れる理由があったのか?」



「あの獄卒と戦ったメンバーだけですよ多分……前もスキルはそんな感じでしたし、トーテム像が変なんだと思いますよ?」



 僕がそう言うと、ソウマが……



「トーテム像って種族シンボルだからかもですね?そのシンボルが出た場所に、居た人のみ影響が出たと考えるのがそれっぽく無いですか?スキルは討伐ボーナスみたいな感じかな?」



 エクシアはそれを聞いて納得した様だが、ハラグロ男爵が言った言葉で僕達は慌てることになる……



「そう言えば『名前持ちホブゴブリン』は倒せたのか?それ含めてこの宝箱だったら、ユニークモンスターの討伐部位を一眼見たいのだが?それと、そこの魔物の討伐部位は拾った方が良いぞ?」



 後ろを振り返ると中級魔石とモールベアーの毛皮(大)など討伐部位が落ちていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


モールベアーの毛皮(大) 1

モールベアーの爪 1

モールベアーの牙 1


中級魔石 1


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「モールベアーのアイテムが多いですね?獄卒が落としたのは『中級魔石』だけですかね?」



「それがアタイに分かれば苦労はしないよ?でも見た感じだとそうだけど……あの獄卒なんかさ死んだと言う感じじゃ無かったよね?だってさ……『地獄で待ってる』って言いやがっただろう?」



 エクシアの割には、かなり分析的な考え方だった。


 あの戦闘中は割と冷静だった様だ。



「死んだ事は死んだけど……モールベアーみたいな『死亡』と言う感じじゃ無い気がするんだけど?それより問題は『名前持ちホブゴブリン』がこの部屋に『居なかった』って事だよ!」



 ハラグロ男爵はそれを聞いてビックリして声を上げる。



「であれば早く探さなければならないでは無いか!」



 僕は『空間感知』を最大で使うも、この部屋には魔物は何も居ない。


 そして僕はとある物を思い出す……『アルブル・モンドの見渡しの魔法地図』だ。


 これを試すには丁度良い……僕はクロークからアイテムを取り出して広げて隅々まで見る。



「ああ!居た!2匹とも!」


「なんだって?何でわかるんだい?」


「トロルのギムドロルから貰った、アルブル・モンドの見渡しの魔法地図の効果です」



 エクシアは覗きながら『こりゃ便利だ!』と感心して言うが、困った事に感心している場合では無い。


 地上への転送陣に2匹とも乗っているのだ。


「エクシアさんわざとだですよ…この階層に居たのは!僕達が此処の階層ボスを倒した時点で『転送陣』を使用して地上へ逃げるつもりだったんです!!だから此処の転送陣に!」


 地図には、転送陣が書き込まれていて『地上への転送陣』と御丁寧に書いてある。



「くそ!逃してたまるか!あんな魔物を2匹も逃したら……何処でホブゴブリン集落を作るかわかんないよ!全員準備だ。奴等がトンズラする前におっかけるよ!」


 エクシアは非常に焦っていて、喋り方が早くなっている。



 しかし……思い通りに全く事が運ばなくなる……



『逃すと思っているのかい?アンタ達………好き勝手やってくれて……準備が台無しじゃ無いか!』



 急に僕の頭に直接声が響く……


 周りを確認すると、皆があちこち見て周り口々に疑問を口にしている……『全員同じ』状態らしい。



『全員呼ぶのは面倒だから、散々邪魔してくれやがったアンタ達だけおいでな!………サモンゲート』



「何だこれ頭に声が……うお!なん………うおぉぉぉぉ!!」



「さっきからアタイの頭に直接声が……何なんだい?一難去ってまたいち…………うわぁぁぁぁぁぁ!!」



「エクシア姉さん!アタシに頭に何か聴こえて……きゃぁぁぁぁ!」



 突然僕達の足元に穴が開き、落ちる感覚に陥る……全員ほぼ同じ反応で、穴に落ちる様に姿を消す。



「さっきから声が……むむ!?どうした!んな!?何だこれは………エクシア達が落ちていく?これは一体……ヒロ男爵!!急いで手を掴め!………手を……………」



『馬鹿かお前たち……これは『穴』じゃ無い。落ちてる様に感じているだけさ!』



 そう聴こえたと思ったら、見知らぬ場所の床で僕達はしゃがんでいた………



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 周りを伺う限り、同じ石畳で石壁だ。


 多分いる場所はダンジョン内の『何処か』だが運が良いのか悪いのか、穴に消えたメンバー全員がいた。



 エクシアグループに異世界組全員だけだが、ユイとモアにスゥは居なかった。



 思い起こせば、魔法陣が地面に浮かんだ瞬間、彼女達は横っ飛びをしていた。


 立ち位置を変え、魔法陣を咄嗟に回避したのは今となればよく意味がわかる……3人は反射神経がズバ抜けて良さそうだ。



 しかし今は、そんな事を感心している場合では無い。



 目の前に黒い球体と男性に何か小さいものが飛び回っている。



『ご到着!さぁ……私の邪魔をしてくれたアンタ達……覚悟はできているんだろうね?』



 また頭に声が響くが、目の前の男が話している様には思えない。



「おいアンタ!アンタが此処に連れて来たのかい?アンタが黒幕って事で良いんだよな?どうせその様子なら協力的じゃ無いだろうし、そもそもダンジョン側って事だよな?ならば覚悟しな!!」



『ハハハハ!そっちの男じゃ無いよ!だから人間は!!』



 僕は、その言葉を聞いてすぐに飛び回る『何か』鑑定する。



 鑑定結果……………『ダークフェアリー』



 どうやら、ギムドロルの会話に出て来た『ダークフェアリー』と『謎の奴』の様だ………

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