第447話「獄卒が残した宝箱」


「マジかよ………なんなんだ今回の戦いは……熊の様な体躯で走り出すと目視出来ないモグラに、オーガかと思ったら『獄卒』だと?此処は地獄の入り口かなんかか?」



 ベンは今日散々だったので文句がひどい。



「それにしても……モグラの魔物はあんな巨体なのに、見えない程のスピードはどうやって出してたんですかね?この巨体で見た感じ全滅する脅威は無さそうなんですがね?」



 僕はロズの発言で『鑑定結果』を再度調べてみる……『猛突撃』・『狂乱突撃』・『瞬歩』



『あ……これ多分突撃特化している魔物か……だから脚止めて攻撃すると勢いを殺されて攻撃出来なかったのか……』



 僕は結果を隈なく確認してそう仮定する。



「多分スキルじゃ無いですか?僕達もスキルを使って攻撃しますよね?見えない程に移動が速いのはそのせいだと思いますね……」



 戦闘が終わり部屋の中央に宝箱が現れる。



「ちょっとヒロみてくれ……絶対箱がヤバイよ……色が『真っ黒』とか!見た事ないし!!」


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


      『漆黒の宝箱』


   宝箱(ランクS+) (罠・なし)


特定条件1:

  1パーティ7名以上でフロア入場

特定条件2:

  迷宮の主人と会話

特定条件3:

  迷宮の主人の正体解明


※以上の条件をクリアした場合宝箱はS+の

報酬に切り替わる。


S+確定ドロップ 

『スキルブック』『トーテム像』『勲章』


        入手方法

 ・ダンジョンの魔物を倒した場合。

 ・特殊な状況下で魔物を倒した場合。

 ・その何かで稀に入手。


  箱にはランクがある。

 ランクが上がる程、良品が詰まっている。


 箱には罠がかかっている場合がある。

 ランクが上がると箱内部は複合罠になる。


 解錠方及び罠の解除方は箱ごとに異なる。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



「コレは……実際見てもらった方が早いですね?『モノクル』で見てください!」


「な!なんだい!?コレは?勲章ってなんだい?………スキルブックにトーテム像?……トーテム像ってアレだよね?5階層で『再生』貰った………」



 モノクルを使い皆で回し見をする。



「エクシア姉さん……コレは?特定条件ってのはヒロが言っていた奴ですよね?マジかよ……嘘じゃなかったんだ!!」


「ちょっと!ベロニカさん?僕が嘘を言う意味無いでしょ?」



「何を言ってるんだい?アタイ達にはそれを信じる方が無理ってもんだよ?ですよね?エクシア姉さん?」



 エクシアは『お大臣だよぉ〜』と言ってドアからすっ飛んで出ていく。



「おーーい!鍵師……連れて来たよ!後メンバー全員とハラグロも連れてきた!」



「こ!コレが漆黒の宝箱?ワシも初めて見ますぞ?コレを開錠出来るか調べれば良いのですか?鍵師冥利に尽きます!罠は『既に無い』と調べたと言ってましたが……念の為ワシが調べますぞ?」



 そう言って、ギルド職員の鍵師が調べ始める。


 騎士団員達は入り切れないので、部屋には入らず外で待機中だ。



 輝きの旋風のアルベイは『コレが例の特殊宝箱か!』……と、非常に興奮している……



「開きましたぞ!!普通の鍵では無く手こずりましたが問題なく!こんな珍しいものが開けられるなど……来た甲斐が有りますぞ!!」



 そう言ってエクシアに話すが、エクシアは僕に開ける様にまた促す……周りも何故か僕に開封させようとする。



「コレはヒロが開けるのに相応しい!魔物も言ってたじゃ無いか!それにそもそもメインで闘ったのはヒロだ!」



 エクシアが駄目押ししたので、僕は箱の上蓋に手をかけてから声をかける。



「で……では皆さん開けますね!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『欲望の書』 1


『歪なトーテム像』 1


『漆黒の勲章』 1


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「な……何じゃ!3個しか入ってないじゃ無いか!これじゃ分けられないじゃろう……とんだくたびれ儲けじゃな?エクシア……まぁ気を落とすで無い!」



 しかし、そう言われたエクシアは、既にロズと小躍りしていた。



「トーテム像!!うぉぉぉ!やったぜ〜!今日2個目のトーテム像だ!それにこの本ってばさ、トーテム像と同じ感じの可能性があるんじゃ無いかい?どうなんだいヒロ?」



「コレは蒼い箱を手に入れた時の『スキルブック』と同じ物ですね……名前はかなり違いますが……」



 そう言って僕はまたもや『モノクル』を渡す。



「何だいコレは?欲望の書?歪なトーテム像?漆黒の勲章?どれも危険な名前じゃ無いかい!」



「ヤバそうなんですか?エク姉さん?じゃあ諦めっすか?トホホホ……前みたいに『再生』みたいなの貰えると思ったんですけど!」



「ロズ!?何バカ言ってんだい?此処まで苦労したんだ!諦めるわけないだろう?」



 エクシアは諦めない様で、念の為シャインに『祝福』をかけて貰った。


 僕は箱の外から詳しく鑑定をする。



 『欲望の書』は、討伐者に対して恩恵を与えるマジックアイテムで『歪なトーテム像』については、前に手に入れたトーテム像と同じ様に特定範囲に『恩恵』を与えるアイテムだ。


 問題は『漆黒の勲章』だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『漆黒の勲章』(レア度・⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)


  (マジックアイテム・勲章)


 勲章に認められた者に特殊能力を

授けるアイテム。


 一次的に『夜叉』に転化する。


    『化現・1時間』


  効果・『力の解放・夜叉』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 夜叉とか……鬼だコレはどう見ても『獄卒』へのフラグでしかない。



「どれも呪いは無いみたいだね?モノクルで見る限り、歪なトーテム像は名前由来なのかね?この『圧力無効』って……いまいち意味がわからないよ?」



 エクシアがそう言って歪なトーテム像を手に取ると………急に頭の中に声が響く……



『我は歪なトーテム像なり……力ある者へ恩恵を施す……ラフテ・リエル・レム・グラビティ………』



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


   獲得  『圧力無効』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 目に前のエクシアを見ると、ステータスに『圧力無効』獲得の文字が浮かぶ……すぐに周りを見回すと、全員同じように文字が浮かんでいる。



「何だいこの文字は?『モノクル』で見ると……あ!『鑑定』効果で見えるのかい?もしかして……」



「エクシアねぇさん貸してください!モノクル!アタイも見たいです!!」



 ベロニカはモノクルを使って皆を見て、口を開けて見ている。



「すまぬ!ヒロ男爵!次は私にモノクルを貸して貰えぬか?………」



 今度はハラグロ男爵がそう言って、ベロニカからモノクルを受け取り周りを見回した後自分を見始める。



「コレは……まさか私も貰うことが出来たのか?何という……こればかりは普通の礼ではすまぬな……困ったもんだ!」



「こりゃ流石に不味ったかね?触った瞬間発動するなんか思わないからね……まぁ手に入れられるなら、人数は多い方がいいだろ?此処まで一緒に戦ってきたんだ!」



 エクシアの言う事は最もだ。


 そして安定の『アーチ』と『ロズ』が連続でやらかす……



 エクシアがトーテム像を手に取って見たので、つい『自分も』とばかりにロズは『漆黒の勲章』を、アーチは『欲望の書』を手に取る。



「あ!!アーチ!それは開けたらダメ!!発動………」



「え?」



『バサバサ!!!!』



 前と同じように本から紙が舞い上がり、僕達の手元に降ってくる……



「え!マジ?うそ!!またやらかした!!アタシ!?うそぉぉぉぉ!!」



 吹き出すように舞い上がった紙の一枚が、僕の手元に落ちて来て何故か直ぐに消える………


 横に居たエクシアは、舞っている紙を飛び上がって取ろうとするが、残念ながら取れる物では無い。



 手元に来るのを待つしか無いのが、このスキルブックの特徴だ。

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