第440話「魔法の地図とギムドロル」


「よく破かずに持ってましたね?こんな小さい紙破いてしまってもおかしく無いのに……」



「ガハハハハハ!ソノ地図ハ、保護ノ魔法カケテアル言ッテイタ。前ニ野垂レ死ニシソウナ冒険者タスケタ礼デ貰ッタ!デモオレニハ、字ガ小サクテ見えナイ!!」


 詳しく聞くと、トロルキングダム周辺で魔物に襲われていた冒険者を、以前救った事があるらしい。


 その時に酷い怪我を負っていたので城まで連れ帰り、面倒を見たらしく帰り際に礼にと置いていったそうだ。



 ギムドロルは割と面倒見がいいタイプらしい。



「トロルって言う魔物は割と人を襲うイメージがあるのですが……違うんですか?そのなんと言うか気分を害したら謝ります……」




「野生ノトロルは我々ト違ウ血族ダゾ?アレハ、ダンジョンスタンピード個体ガ繁殖シタ結果ノ系譜ダ!」



「マジかい!って事はアンタ達はどう言う流れで生まれたんだい?気になるよあたしゃ?……あ!すまない気分を悪くしないでくれ!」



「構わんゾ?我ハ小サイ事気にしナイ!我々ハ古き5系種ノ陸族末裔ダ。オ前達モ同じダガ………」



 そう言って説明してくれたのは、陸・海・空の系統種の他に死系統種と精霊種で、それをトロル達は5系種と言うらしい。


 妖精種、竜種、不死族、鬼族、エルフ族、亜人種、有翼種、魚人種等はそこからさらに分類分けされたものらしい。



 当然トロル族に伝わる話なので全てを鵜呑みには出来ないが、神話的な物が存在する事だけは分かった。


 何より知能が高い『トロル種』が居て、彼等は集まり国家を築いているのは紛れも無い事実だ。



 そしてトロル事トロールは『妖精種』である事は間違いない様だ……◎ーミンもいるかも知れない。



「僕が知っているのは『トロル』ではなく『トロール』ですけどね……もっと小さくて悪戯好きと言うか……」



「ヒロ!オ前トロール知り合いカ?アノ小さい眷属ハ元気カ?アイツ等ハ俺達見るト必ず『肩ニ乗せロ!!』言うんだ……言ットイテクレ……『自分デアルケ』ト……」



「言い辛いんですか?」



「ケチクサイ言われタクナイダロウ?ヒロダッテ?」



 どうやらギムドロルはガタイはデカイがメンタルは繊細な様だ。



 ひとまず会話を他の人に任せて僕は『倉庫の扉』を階層の壁に設置する。



 そして中に入ると『アンタまた変なの懐かせてんじゃないよ!?帰る気あんのかい?』と唐突に声をかけられた。



「アナベルはん!そない言っても無駄やろ?おっと!すいません!お客様に失言を。あそこの棚にご希望の物は納めさせて頂きました!」



「アナベルさんにポチさん!」



 部屋には先客のアナベルと『猫なのにポチ』の二足歩行猫がいた。


「今は忙しいのはよく分かります!モノリスプレートで見てましたから!次のオーダーはまた今度ですよね?……ハァ……」



「あ!丁度よかった……ポチさん新しい異世界仲間が増えたので1セット追加でお願いします同じ物ってまだありますか?」



「毎度あり!金貨2枚お買い上げですね!?大丈夫ですよ!すぐに買いに行きますから!」



 僕はすぐにモノリスプレートに触れるとポチが決済する。



「とりあえず同じもん買いに行きますから安心してください。追加注文あったらモノリスプレートで購入予約と決済了承押して下さいね!すぐに買って来ますから!ほな!さいなら!」


 仕事熱心なのか、それとも守銭奴なのか……ポチはあっという間に出ていってしまう。


 僕は倉庫の壁にドアをつける……行き先は勿論『トレンチのダンジョン9階層』だ。



「アンタ……本当におかしな奴だね?まぁいいさね……あそこに居るトロル達をアソコから出すのは至難の業だよ?今のままじゃ『ダンジョンの主』は手放さないからね?」



「アナベルさんは何かわかるんですか?」



「あそこに連れて行く方法はアンタの持つ『空間魔法』でしか連れて行けないよ!だからこの世界に『アンタ』の持つ空間魔法の使い手がいるって事さ!まぁ稀にいるからね……でも悪さをする奴だ!充分注意しな!」


 アナベルは僕贔屓をしてくれている様だ。


 此処までの間にちょこっと話して形見の剣を渡したくらいだが、その剣の効果が思ったより大きい様だ。



「アンタももっと空間魔法に励めば『彼等を連れ出せる日が来る』と思うよ!まぁその前に何か手段を見つけないとダメだろうがね?」



「なんでですか?」


 僕はおもわず、思わせぶりな発言に質問を返す。



「簡単な話だろう?あそこは9階層だよ?最下層が近いんだ穢れだって濃いんだよ……ずっとなんか持つわけもない……まぁお前達がトロルを『満足』させちまったから、誘惑の再スタートって感じだけどね?」



 質問の答えを返しながらも、アナベルは笑いながらそう言った……そして……



「あの穢れたダークトロルを見てご覧?ゴブリンの丸焼きを食うたびに色が普通のトロルに戻って行くのがわかるかい?彼等は『空腹』から知らない内に、ダンジョンの穢れを飲み込んでしまったんだよ。」



 そう言ったアナベルは、笑いを堪えているがすぐに答えを教えてくれた……



「それを仕組んだ奴がいるが……『怒り心頭に発する』って奴だろうよ?坊やの何も考えない『親切』で折角の計画が水の泡だからね!それもユニークアイテムまで持っていかれちまって……ぷ……ははははは!面白いったらありゃしない!」



「此処で見てたんですか?アナベルさん……人が悪い!」



 僕は怒ってはいないがわざとそう言ってみる……



「すまないねぇ坊や!知ってても言えない『掟』なんだよ……でも結果オーライじゃないか!親切にしてアイテム貰って、それに言っただろう?『向こうからやってくる』ってさ……アレはね、アンタ達個人を狙った訳では無いが『結果的』に巻き込む手段だったんだよ」



「巻き込んでって事は……あのトロル達を利用しようとしてたって事ですよね?………って言うか……王子様らしいですよ?彼をもしなんとかしちゃった日には………あ!!」



「分かったかい?だから充分注意するって事だよ!坊や。結果的にアンタは自分で選んだ道が『良い方』に向いたが今度はそこを利用する場合だってある……用心に越した事はないが、気が張り詰めてれば人間なんかあっと言う間に壊れちまう!だからアンタは自然体で頑張りな!」



 そう言ったアナベルは指を刺して………



「彼等にも頑張りな!って言っておやり。私にゃ何もしてやれんが……頑張れば夢が叶う日も来るかも知れないからね……」



 僕は振り返るとそこには、透明な壁に張り付いて中を見る異世界組と、エクシアにロズそしてギムドロルまで覗き込んでいた。



「ほら!用事は扉の設置だろう?……早く戻ってやりな!説明待ちって顔してやがるよ?」



 僕がアナベルに急かされる様に出口に連れて行かれる。


 アナベルは全員に手を振って僕を送り出すが、そっと僕の手に何かを握らせると……扉から押し出そうとする……


 そして僕が出る直前に……



「何時迄もこのスキルを見せちゃダメだよ!危険なスキルだからね!あ!そうそう!向こうに別の部屋ができた様だよ?倉庫スキルのレベルでも上がったんじゃないかい?そこから帰ったら確かめな!」



 僕が部屋を出ると、意味を理解したのですぐに扉を消す。


 騎士団やギルド職員、ハラグロ男爵にエルフ達やトロル全員が扉を凝視していた。



「なんて言ってたんだ?ヒロ!あの人は『あの部屋』………ムグ……ムイナ?らなふむんら!!」



『ソウマの馬鹿!アンタ何口走ってんだい!!黙って薪でも作ってな!』



 聞こえたセリフで一瞬ユイナがエクシアに見えた……ロズの頭の加減はエクシアとの死闘の末、ショックで髪が抜け落ちたのかも知れない。


 ソウマの未来は非常に明るい……視覚的にだが……

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