第439話「トロルの怪力で切れない鎖』
僕は鎖の鑑定内容を再確認する。
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嫉妬の拘束具「鎖・マジックアイテム」
『ユニークアイテム』 (ランク:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎)
錬金可能マジックアイテム
・拘束具『鎖』
マジックアイテム『特殊』
全長は対象に合わせて自動変更される。
嫉妬深い女性貴族が思い人を独占する為
に作らせた魔道具。
素材に魔王種の『嫉妬の蛇姫』の鱗粉末
が使われている。
捕縛された男性貴族は、解放する手段が
無く衰弱死する事になった。
女性は絶望し、その後自ら命を絶つに至
った、曰付きのマジックアイテム。
特殊効果 対象を捕縛可能「サイズ無限」
対象の解放条件
A級魔道具以上の『回収』『収納』『破壊』
『切断』のみ可能
必要素材
※開示条件不足により表示不可。
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たしかにこの『ユニークアイテム』らしい能力だ。
自動収縮され対象を捕縛できるらしい。
捕縛方法は不明だが、鑑定できるなどとは言えないので黙っている他はない……
ひとまずは誤魔化す方向で、対応策として回収しか無いだろう。
「すいません。今の僕の持っている手段では、この鎖切れ無いかも知れませんね……個人的にもこの鎖は、使用不能になるよりはこのまま欲しいくらいなので……」
「千切レ無イノハ見タ……何カ方法ハ?鎖ナド好きニスレバイイ!!勝手ニ持ッテ行ケ!」
「この鎖だけ回収出来ればな………出来る可能性がない事はないですが……まぁ、ちょっと試して見ますね!!」
僕は鎖を強欲のグローブで触りながら回収する様に『念じる』……強欲のグローブは『生命体』は回収出来無いがマジックアイテムは別だ。
収納のシステムはよく分から無いが、大きさに関係なく『吸い込める』ならば『物理法則』も無視しているのでは?と思ったのだ。
そもそも、マジックアイテムの『ランク』などは勉強不足で知らないのだ……僕の持つユニークアイテムが、そのA級魔道具以上である事は確かだとは思うのだが……
『ズシーン』
急に身体を支える鎖が無くなったので、崩れ落ちる捕縛されていたトロルだった。
万が一にも僕の方に倒れていたら、僕は圧死していた。
「イデェ!急ニ鎖ガ無くなったゾ!グルグア!自由ダ!我ハ自由ダ!」
「王子!!良くヤッタゾ!ニンゲン!!」
2人のトロルがバタバタやるもんだから、僕は逃げ回るしかなかった……
「無事で何よりですが!!僕が潰されそうになった事を忘れ無いでくださいよ!折角助けたのに潰されたら堪りませんよ!?」
「スマン……我ハ!トロール山脈ニアル王国ノ王子『ギムドロル』ト言う!感謝するゾ!ニンゲンノ子ヨ!」
「それにしても流暢に話せますね?違いがあるんですか?」
つい気になったので聞いてしまうが、すぐに王子に鷲掴みにされる……
『ズシンズシンズシン…………』
理由は明白だった……王子が救われれば、他のトロルが一斉に集まるのは目に見えていた。
「間一髪ゾ!今度ハ間に合ったナ!?ニンゲンノ子ヨ!?ガハハハハハ」
「ソレデ……ドウヤッタ!?ニンゲン!ミナオシタゾ!!」
あれだけ怒っていたウボォ迄もが上機嫌だ。
「理由は企業秘密です!ひとまずは無事に助けたんで……鎖は貰っていきますよ?」
「構わんゾ!?忌々しい鎖ナド見たくモナイ!我ガ人族ノ言葉ガ上手いノハ、人族ト交流ガアッタカラダガ!?何故ソンナコトヲ聞く?」
「話せる魔物と今まで出会った事がないので……話せれば無用な戦いは回避できるじゃないですか?」
僕はトロルの王子と呼ばれた『ギムドロル』と少しばかり話をしていた。
ギムドロルの話では、彼の父が治めるトロルの王国には僅かだが人間が居るらしい。
そして彼が何故此処に居るかと言うと、お付きと森に狩りに出た時に急にあの魔道具で捕縛されて魔法で『昏睡』にされたらしい。
彼のお付きは戦ったが同じように『昏睡』になり、同じ様に此処に連れてこられたらしい。
相手は『ダーク・フェアリー』と他の『何か』だったそうだが、木の影に居て見えなかったらしい。
彼等は非常に耳が良いのに『異変に気が付かなかったのか?』と聞いたが、森はかなり『雑音』があるらしく、耳が良い彼等は全部拾うものだから、仲間の言葉にのみ耳を傾けてそれ以外は『聞かない』様にしていたらしい。
そして仲間達が目を覚ますと、捕縛された王子は壁に鎖ごと貼り付けられていて、ホブゴブリン2勢力が取り囲んでいたそうだ。
彼等は当然戦ったが、ゴブリンの波状攻撃と増えるスピードが尋常ではなかった様で、お付きはどんどん減ったそうだ。
減る理由は主にダンジョンの穢れに飲まれてダンジョン個体になってしまい、敵勢力に加わったと言う事らしい。
グルグアは『5階層』にダークトロルが召喚された話を王子にしたが、怒る事もなくただ黙って聴いていた。
ひとまず『仲間にその説明をする』必要があるので、事情を話して連れて行ってもらう事にした。
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「ニンゲン達申し訳ナイ……襲いカカッタ上ニ飯マデ作ッテ貰ッテ……」
彼等は魔力だけでも当分は暮らせるらしいのだが、実際腹が減るとどうしようもない様で『何か食べ物は無いか?』と聞かれたが、巨体のトロルが満足する物など持っていないのでそれを説明した。
するとユイナが『なんでも良いなら、ゴブリン持ってくれば味付けしてあげる』と言った途端全員が出払い、頭がもがれた遺体を持って来た。
ユイナは彼等が出た途端、すぐそばの瓦礫ですぐに火を起こしていて、調味液を作り始めていた。
ちなみにメニューは、ゴブリンの丸焼き生姜焼き風味だ。
「コレ……ウマイゾ!ゴブリン……モグモグ……モウイッピキヤイテクレ!ユイナ!」
「モグモグ……ガリガリ……オレモホシイ!ユイナ!」
「オレ……ゴブリンナクナッタ!!ツカマエテクル!ダレカイカナイカ!?」
僕達は彼等がゴブリンを食べている間木材を集めて来ていた。
「それでギムドロルさん此処からどうやって出るんです?」
「ヒロ!畏マッテ話さナクテイイゾ?此処カラ出ル方法、コレカラ探ス。オ前達ニンゲンガ、コノ階層来ル時ハ安心シテ寝らレル様ニ家臣ニ護らせル!!我々恩ヲカエス!!」
「ウボォハ、スマナカッタ、オモッテル!!アルジタスケテクレタ!メシクレタ!オマエタチニンゲンハ、ウボォガマモル!!ココニキタラ、イエ!」
ウボォは片言だが必死になって感謝を伝えている。
「でも此処にある調味料だけじゃ足らないのよね?これからだって自分たちでご飯で焼く分は必要でしょう?」
「なら僕が届けますよ?スキルで此処まで直通で来れるだろうし……ひとまずは『トレンチのダンジョン』までは馬車で来ないとダメでしょうけど?試しに扉作って上に行ったら試してみますよ」
僕がそう言うとエクシアは……
「お前達ってさ、魔物の胃袋掴むの上手いよな?ヒロは既にスライムとトンネルアント・タイラントに悪魔っ子だぞ?トロルまで増やす気か?」
それを聞いたギムドロルが不思議そうに訪ねて来たので、スライムをテイムした時の話をする。
「ガハハハハハ!面白イ奴!ソノスライムガ、ゴブリン捕食シテ回ッテイル『アレ』カ?」
指をさした方にはスライムが居て、竜巻で死んだゴブリンとホブゴブリンを捕食して回っていた……いつに間に……自由か!!と突っ込んでしまいそうになる。
良く確認すると………『ゴブリン溶解率32%』『ホブ・ゴブリン溶解率17%』と出ている。
0%スタートしている筈だからどれだけ回収していたのか……と思ってしまう。
スライムは僕が見ているのに気がついた様で、身体の一部を伸ばして『手を振る』仕草をしている。
指の様に広げた身体の一部は指が一本多く6本指になっていた。
僕はひとまず暇なのだろう……と思い、手を振り返して放っておく事にした。
「ヒロニハ、助ケテ貰ッタ!御礼ダ!コレヤル!魔法ノ地図ダ!」
人には親切にしようと言う意味がよくわかる……コレは本当に素晴らしいアイテムだったが、トロルのギムドロルにして見れば、小さすぎるマジックアイテムだったが、良く破かずに持てた物だ……
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