第441話「鑑定!魔法の地図とその効果」


 ソウマ口を直ぐに塞いだユイナの行動に、意味深な物を感じるも……誰も聴いてはならない空気が流れる。


 このダンジョン内の遠征飯や、休憩中の飲み物類全般はユイナが作っているのだ。



 冒険者の料理番冒険者などは本当に一部の上級冒険者や貴族騎士団にしか居ない……その上、味は絶品で『踊るホーンラビット亭で食べる同じ物より格段に美味い』のだ……機嫌を損ねたらいけない……


 と言うふうに『ミオとメイフィ』が耳打ちして回っていたのは、この階層に着く前の話だ。



 ギムドロルの家臣である、頭足らずのトロル達も気にはなったが、小さい部屋などは自分達など入れもしない……気にするだけ無駄だ。


 何より今は、ユイナが大量に焼いてくれたゴブリンの丸焼きを食べねば、ダンジョンに吸収され消えてしまう。



 入れない部屋より『食欲を満たす事』が第一優先だ……次腹一杯食べれるのは、何時になるかわからない。



「ギムドロルさん!トロルの皆さんの『色』が戻って来てます!多分食欲を制限されていたせいで、ダンジョンに付け込まれたんだと言っていました!なので腹一杯食べて満足する事から始めましょう!彼等は助かります!」



「オオオオオオオオ!!ソウカ!我ガ仲間!!大切ナ友ガ!本当ニ戻ッテ来てイルゾ!ウォォォォン!!」



 大粒の涙が周りの降り注ぐ……誰か傘持って来てくれ……



「あ!あと皆さん……あの事は内緒でお願いしますね?誰でも見せられる物でも無いですし……」



「師匠!!ミミは絶対に言いましぇん!ミミに水フェムメイ……モゴモゴ……ヌーーー!ヌーーー!!クヒー!!クヒハー!!ヒムーー!!」



 ミミは同じメンバーの回復師ルーナに口を塞がれるが、片腕が完全に首に決まって踠いている。


 グッタリしたミミをそっと離したルーナは……



「何言うんだか!もう……一度そこで寝てなさい!全く……」



 チョークスリーパーが見事に決まり、ヨダレを垂らしているミミだったが、なんか彼女のキャラ的にコレが自然な感じがしてしまう。


 おバカ犬を見ている気分だ。



『ユイナさん準備はオッケーだから……多分此処には戻って来れるから調味液はコッソリ渡しに来るよ。それが彼等の為になり、いずれは僕達の為にもなりそうだから!』



 これもあまり聞こえない様に、小声でコッソリ伝えておく。



 ハッとして、耳の良いトロル達をみるとギムドロルがウボォの口を押さえて耳元で『話すなよ?あの娘みたいになって、ゴブリンの丸焼きが食えなくても良いのか?』と脅されていた。


 当然ウボォは、言葉をゴブリンの肉と共に飲み込んだのは言うまでも無い。



 言い出しっぺのソウマは『ユイナコワイ……ユイナコワイ……』とトロルの様な語彙力で言いながら、集めて来た歪に割れた木材破片を薪へと加工していた。


 僕は貰った魔法の地図を鑑定する。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


    アルブル・モンドの見渡しの魔法地図


  (ランク:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎) マジックアイテム『特殊』


    『地図・マジックアイテム・製作可』 


 周囲の状況を全て把握する魔法の地図。

 アルブル・モンドが世界中を渡り歩く為に作った物

とされている。


 作成された総数は多くない。


・特殊効果(世界地図)周囲地形全表示『距離100km迄』


・特殊効果(ダンジョン内)周囲全表示『階層全て』


 ◎人間・友好種族(種族・個人名)


 ◉魔物・敵対種族(種族・名称)


 ◯精霊種・中立種族(種族・属性)


必要素材

  ※開示条件不足により表示不可。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 地図はなかなかに素晴らしい物だった。


 魔物名称までわかる上、世界地図とダンジョン内の切り替えができる


 問題は僕にも空間感知がある事と、これで確認する為にはわざわざ取り出して確認する必要がある。



 名称や敵対関係迄わかるこんな便利な物があれば、犯罪者が狙わない訳がない。


 目立たない様に使うしかない……僕は目立たない様にそっとクロークの収納へしまう。



 僕はのほほんとした空気で忘れていたゴブザックの件をむし返す。



「それにしても……あの鉤爪のゴブザッグと大牙のコブザッガルだけは、エクシアさんの言う通り確認したかったですね……まぁこの状況なら、生きてても瓦礫が退かせずに数日であの世に行くでしょうけど……」



「ニヒキノホブゴブリン、シタニニゲタゾ?ナカマミステル、ゴブリンハ、アタリマエ!!」



「「「ウボォ!!」」」



 僕の言葉でウボォが問題発言をしたので、つい僕達は突っ込んでしまう。



「ナンダ?ニクハヤランゾ?オデ!モットクイタイ!」



「肉じゃ無い!奴等が逃げたのはなんで知ってるんです?」



「オレタツマキノマレタ………ナカハスゴカッタ!!………トチュウデ、ウズカラソトニ、ナゲダサレタ!!ダカラ、タスカッタ!デモ、ソノトキニオレミタ!ヤツラ、ナカマミステテ、ニゲタ……マチガイナイ!」



 渦に巻き込んでゴメンと言いたかったが、僕とすればそのお陰で奴等の消息が掴めた。


 彼等が仲間になる事が分かっていたら、魔法は使わずに共同で殲滅出来ただろうが、今更それを言っても始まらない。



「ギムドロルさん僕達はそこへ向かわねば!此処のゴブリン掃討のお手伝いはできなくなりそうです……」



「構わナイゾ?アノ2人ハ、何カ理由ガアッテ行ッタ筈ダ!俺達ハ下へ行けナイ……門ガ狭く進めナイ!手伝えナクテ本当ニ、スマナイ……」


 ギムドロルは割と流暢な人族の言葉を使いつつ謝罪をする。


 僕達は階層を自由に移動できる危険な魔物、鉤爪のゴブザックと大牙のゴブザッガルだけは、なんとかしなければならない。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 荷物を纏めてから僕達は階層を降りる……


 ちなみに9階層では、残念ながら魔物の討伐部位は手に入れられなかった……多分瓦礫の下敷きになったのだろう。



「この階層は相変わらず辛気臭いダンジョン式だね……上みたいな『街並み』だったら少しはマシなんだがね!あのホブゴブリン2匹は、仲良くお手て繋いでどこ行きやがったんだ!?」



 この階層では上階層と違って、まさに『ダンジョン』と言う様な石壁に石畳の階層になっていた。


 階段を降りてすぐ、4メートルくらいの横幅の通路が奥に続いていた。



 少し歩くと『安全エリア』と呼ばれる休息部屋があり、中には飲料水になりそうな水受けが付いていた。



「見ての通り、此処がこの階層にある安全エリアだよ。そしてこの先にダンジョン主の部屋がある。魔物は『オーガ』で問題がある……ソイツは武装してやがるから、かなり危険だよ!」



「エクシアさんはその魔物と戦った事があるんですか?ちなみにその部屋にホブゴブリンの二匹が入ったら、オーガの仲間になったりしますかね?」



「あの名前付きが仲間になるかはアタイには分からないよ?そもそも階層移動をする魔物なんか聞いた事ないしね?」



 エクシアに聞いても答えが出る訳では無いが……流れで聞いてしまった。


 そもそも僕達の目的はホブゴブリン2匹であって、オーガでは無い。



「あとこのダンジョンのボスと戦った事はあるよ?何回か倒してるしね……問題は何度倒してもダンジョンが無くならないって事だよ……隈なく探してもボス部屋ってだけだからね……」



 僕はエクシアの言葉に対して不思議に思った。


 ダンジョンの主を倒せば、ダンジョンが無くなると思っているのだとすれば、それは間違いだ。



 水精霊のダンジョンで『ダンジョンコアが地下水脈に沈んでいる』と、聞いたのだ……だとすればこのダンジョン内にもある筈だ。



 それに、アラーネアが居たダンジョンでは『階層主』と思ったら『ガーディアン』だった事もあったから尚更注意が必要だ……

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