第433話「スケルトンの門番」
「剣士隊!『グレートソード』抜刀!スケルトンを一掃せよ!!」
ハラグロ騎士団の剣士隊は、男爵の指示で武器をロングソードから背中に担いでいた『グレートソード』へ持ち替えて、力任せにスケルトンを一掃する。
ソウマとエクシアにアルベイが3人で連携しながら『スケルトン・ウィザード』へ斬り込む。
ソードマンのアルベイが……
「うらぁ!コレでも喰らわんか!」
そう言ってグレートソードを振り上げて打ち下ろす。
それをユラユラとかわすスケルトン・ウィザードだが、エクシアが……
「そう来ると思ったよ!だからアタイはここにいるんだよ!!」
避けて来た方に居たエクシアは、逃げる場所を無くす様に剣を横一閃に振るう。
『ガシャン……』
乾いた音と共に砕け散る片腕……
エクシアのその攻撃を、片手を犠牲にして避けるスケルトン・ウィザード。
魔力を集中させ硬度を上げた状態で、わざと刃に打ちつけた事で剣の軌道を無理矢理変えていた。
「それで良いのかい?そっちはもっと痛い武器なのに?」
エクシアのそのセリフにスケルトン・ウィザードは窪んだ眼をソウマに向ける……
「潰れて消えな!このスレッジハンマーでな!」
巨大なハンマーは、スレッジハンマーと呼ぶサイズなのかは分からないが、ソウマの一撃でスケルトン・ウィザードは頭からグシャグシャに砕かれる。
そして2撃目で残った腕も粉々に粉砕される。
「カルシウムが足んねーよ……スケルトン……次会う時はもっと牛乳飲んどけよ?」
ソウマはそう言うが……カルシウムをいくら取っても、10kg近い巨大ハンマーの一撃は耐えられないと思う……
スケルトン・ウィザードを倒したものの、スケルトンで出来たゲートキーパーは健在だった……
どうやらこのスケルトンの門番は、ゾンビとは違う形で生み出されたもので親玉スケルトンが居なくなっても、その存在は何も変わらない様だ。
騎士団とロズ達は防御に徹しながら、攻撃は剣士隊に任せて力尽くで破壊をする。
「気色悪い門だな……エクシア姉さん!例の物凄いパワーで焼き尽くして下さいよ!」
「うるさいなロズ!アタイは脇腹刺されたんだよ?ヒロは土手っ腹に錆びた剣をぶち込まれたんだ!アンタも少しは役に立ちな!」
剣士隊は笑いを堪えながらも頑張ってスケルトンの門を破壊する。
『再生能力』が異常に高いこのゲートキーパーは勿論錆びた武器に『痺れ毒(小)』が塗られている。
だが、武器を落とした瞬間に足で踏んで背後に蹴る騎士団と、後ろでそれを破壊する弩部隊の連携で状態異常を起こす兵は少ない。
時間にして半刻もかかり漸く『スケルトン・スウォーム・ゲートキーパー』を殲滅することが出来た。
「やれやれ……コレは大変な戦闘だったな!まさかこの階層が『アンデッド』の巣窟になり、こんな硬い魔物が居るとはな………」
『ゴトン……ゴトン…ゴトンゴトン…ゴトン……』
「こ……今度はなん………ん……んな!?宝箱だと?」
ハラグロ男爵はその様子に慌てふためく……下層階段の入り口を埋める様に積まれている宝箱に、全員が驚愕する。
「これって……まさか……ゲートキーパーってガーディアンって事は有りませんかね?」
僕の一言で一斉に全員が喜び始める。
「ヒロ男爵!その通りだ!ゲートキーパー!門を守るもの!ガーディアンで間違い無いでは無いか!!流石ヒロの観察眼はピカイチだな!!」
ハラグロ男爵は大喜びだ。
積み上げられた宝箱総数は16箱にもなっていて崩れたら危険なので一度全部をマジックグローブで回収してから平坦な場所へ全部並べた。
後で安全な階層で確認しませんか?と言ったが、エクシアが……
「暴動起こすよ?アタイが!!」
という事で、回収した物の拾得権利を話す事になった。
ちなみに参戦確認作業はメイフィがしてくれた。
「ハラグロ男爵の参加部隊は3部隊ですね?えっとエクシアさんのファイアフォックスが……7部隊?7……なな?ヒロさんパーティーに銅級3に銀級2に援軍でシャインさん……た……確かに居ますね………ユイさんにモアさんとスゥさんは3人で1グループでエルフさん達が3グループあれ?箱が2箱多いんですけど?何でですか?」
そのセリフに皆が僕を見る……『僕はソウマグループもしくはエクシアグループでは?』と言ったが、ゴーレムを放牧して単独で勝手にあれこれやっていたので、皆が満場一致で『僕』だろう……と言う事になった。
ゴーレムであちこち破壊して回っていたので『功労賞』と言う事になったが、それでも一箱多い……
いろいろ話しているうちに、その謎が解けた……『イーザ』だ……
彼女は剣を持ちゾンビと戦っていたらしく、この場所では6匹のゾンビを両断して倒した上に、前の戦闘でもちょくちょく戦っていた。
「ならこれはイーザのだな?」
エクシアの一言で箱の権利が彼女に決まるが、両腕を振って『辞退する』と言って聞かなかった。
「ならばイーザさんが『迷惑』を一番かけた、部位欠損の酷い冒険者さんに配って歩けば良いのでは?それで罪滅ぼしにはなりませんが、相手は冒険者です。イーザさんから何かが貰えて、それが冒険者として役に立てば、相手は喜ぶはずですよ?」
そう言ったら渋々受け取っていた。
箱の罠と鍵開けにはそこそこ時間がかかるので、僕達は休憩をする事にした。
オーク肉が上層階で手に入ったので、ユイナが調理する事になり、食事内容はオーク肉のステーキになった。
ブラックペッパーは異世界箱で随分前に手に入れ死蔵中なので、この際使ってもらう事にしたら、ハラグロ男爵はびっくりして……
「胡椒をそんなふんだんに使うだと!?ヒロ殿はもうダメな奴だ!剣士と騎士達よ!味わって食うのだぞ!胡椒などは貴族でも滅多に手に入らん!!」
という事でやらかした様だ……
ちなみに胡椒を使うと言ったら、ハラグロ男爵は『自分たちが狩りで得たオーク肉を提供する』と言う事になったので、正直肝が冷えた……管理が悪いとユイナは鬼女になる。
しかしハラグロ男爵は美食家でもあった様で、すごい丁寧に肉を管理していたので……
「このくらいちゃんと管理しないと駄目なんですよ?冒険者も騎士の方々もよく見て下さい!管理が悪いと調理は最悪な結果になります!」
そう言って手早く調理を始める……この場合の『調理』の意味は……『ユイナが管理の悪いやつを調理する』と言う意味だ!とロズとソウマが言ったせいで、彼らのお肉は大きさが半分になって胡椒の味付けも無しになった。
ちなみに不思議な事に、この階層の主的な魔物を討滅した時点で、この階層に広がる腐臭が綺麗さっぱりなくなっていた。
その事にいち早く気がついたのはハラグロ男爵だ。
「ユイナ殿……これは非常に良い匂いだな!2種類のステーキか?手が混んでるな?む…………むむむ?そういえば!腐臭がせんな?このボスらしきものを倒したからなのか?」
「あれ?確かにそうですね?休憩で『飯を食おう』ってエクシアさんが言った時にはもう臭くなかったですよね?じゃ無いと流石に『食事』とはならなかった筈ですし!」
僕がそう言うと、エクシアが『確かにあの時には匂いなかったね?』と言っていた。
ダンジョンの摩訶不思議現象だ。
ちなみに鍵師さんには一番最初に食事をして貰った……『腹ペコで手先が狂ったら困る』と冗談で僕が言ったら、全員が『満場一致』で鍵師からとなった。
幾つものフライパンを同時に扱うユイナなので同時に提供される訳だが、エクシアは『腹ペコ怪獣』になってしまい、フライパンの前から離れないので一番最初の組にあてがわれた。
ちなみに僕はミオの手作り弁当も一緒に食べた……当然エクシアさんは、色々言い訳を作り勝手に食べていたのは、言うまでもない。
なぜ僕とエクシアだけ?っと周りの見る目は痛かったが、一番怖かったのは瞬きせずに僕を見るシャインの眼だ……何故かカエルになった気分だ。
全員が無事食事を終える頃には、箱の罠は外されて解錠は終えていた。
『ガーディアンの財宝』は全部で16箱でひとまずグローブに回収する事になったが、ハラグロ男爵は自前の『特大マジックバッグ』があるらしく、折角なので箱を選んで持っていってもらう事にした。
アタリかハズレかは帰ってからのお楽しみだ。
それ以外の箱は持ち歩けないので一次僕預かりだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
我儘エクシアの食事タイムと分配が終わったので、漸く僕達は下へ降りる事にしたが……
階段に残された足跡を、大地のエルフが見て『不浄な小鬼はここを通りました』と教えてくれた。
トレンチのダンジョン第9階層は相変わらず廃墟の街並みだが、アンデッドの巣窟ではなく違う生き物が占拠していた。
ちなみにそこが目的地となる……占拠していたのは『ゴブリンとダーク・ゴブリン』だからだった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。