第428話「落とし物は誰の物?ゴーレムで武器回収」


「エクシアさん……魔物の武器って……遺骸が消える前だったら手に入れられるんですかね?」


「お前の精神をたまに疑うよ?この状況でなんで『討伐個体の武器』の質問なんだい?あの『黒いオーク』が持っている武器の事かい?まぁ持っている以上、欲しいならああやって試すしかないよね?戦闘終了後に『消えてなければ』ラッキーなんじゃないか?」



「ゴーレム達、近くの武器を回収しろ!」



 僕は既に瓦礫と化してしまった場所を破壊し続けているゴーレムに、別の指示を与える。



 運が良ければ消えない……後で鑑定して呪われて無ければ回収しよう……


 集めさせている武器の元は鉄だから、ダンジョンで集めて打ち直せば元手が掛からず『鉄』には困らないかもしれない。



 そう思っていると、エクシアが急に叫ぶ。



「デカイのが突っ込んでくるよ!皆避けな!」



『ウォーター・バレット!!』



 交わしざまに『ウォーター・バレット』をお見舞いするが、ストーンボアの名前の通り表皮がすごい硬い様だ。


 後ろに居た騎士団も頑張って避けるが、プレートメイルが邪魔で数人が『突撃攻撃』を受けてしまう。



 すぐに周りが助け出して、騎士団専属の回復師と薬師に元に連れていく……


 しかしブラックオークはすでに騎士団の壁を撃ち破り、ハラグロ男爵の前までたどり着いてしまった………万事休すだ。



 多くの騎士はなんとかハラグロ男爵を助けようとブラックオークの前に立ちはだかる。



「者ども下がれ!命を無駄にするでない!」



「何を仰いますか!我々はハラグロ男爵様の騎士団です!主人を守らず騎士団は名乗れませぬ!」



 剣士隊が斬り込むも、硬い表皮が邪魔をして微微たるダメージしか与えられない。



「ニンゲン!ブザマ!グロロロロ!オマエラゼンブ、オレノエサ!!ガッガッガッガ!!」



 直ぐに攻撃しないのは『勝ったと』勘違いしたせいだろう。



『クワンダ・エストルァテス・ラ・ディープ……アクアプリン』



 召喚に応じて魔法陣から召喚されるアクアプリン……



「アクアプリン達はハラグロ男爵の前で防御を!」



 僕はアクアプリンに命令を出した後すぐに目的の個体を召喚する……表皮が硬いならわざわざ攻撃などせず、丸呑みさせればそれで済む!



『クワンダ・エストルァテス・ラ・ローボア……アクアパイソン』



 召喚陣から這い出てくる5メートルになる巨大なアクアパイソン……先程とはサイズが全く違う……


 よく見るとこの階層は5階の階層主の部屋に比べて非常に天井が高い……



 どうやらアクアパイソンの召喚魔法はレベル効果で違いがあり、召喚されるサイズは『その場に存在できるサイズ』が排出されるようだ。


 当然出ることのできないサイズは出てくるはずもなく、その場所の約8割程度までが出てこれるのかもしれない。



 あくまで、5階層の天井を加味した感想だが……この階層は10メートル以上、天井まで高さがある。



「アクアパイソンはブラックオークとグレート・ストーンボアを倒せ!」



 突然現れた魔物『アクアパイソン』に驚き慌てる騎士団は若干崩壊気味だが、そんな事を気にしている場合ではない。



「ここに居るとヒロが召喚した召喚魔獣の戦闘に巻き込まれるよ!さっさと全員退避!!」



 エクシアは良く分かっている。



 僕を含めて全員が慌てて、蜘蛛の子を散らすようにその場を離れる……



「ジュロロロロ……ギシャーーー!!シュロロロ……」



 素早い動きでグレート・ストーンボアの周りを囲むアクアパイソン……


 グレート・ストーンボアは長い牙を武器に突っ込んでいく。


 額の岩も武器になるので、通常であれば手痛いダメージになる……だが、相手はアクアパイソンだ。


 無計画に突っ込めば『麻痺』を起こす体液を分泌する。



 ブラックオークはアクアパイソンを恐れず、両刃斧を振り回してその取り囲む胴体めがけて斬り掛かるが、次の瞬間上からパックリと咥えられてしまう。



 その時にアクアパイソンの牙が数本身体に突き刺さったせいで、唯一生き残る可能性の武器である両刃斧を手放す……当然『猛毒』効果があったのは、ステータスで確認済みだ。



 そのあと『ポーン』と上に放り投げられると、アクアパイソンはブラックオークをそのまま丸呑みにする。



 そして長い身体の方は、グレート・ストーンボアを巻きつけている。



「ミチミチ……ベキ……ボキ……ミシッ……グチャ……ゴシャ……」



 と音を立てて、グレート・ストーンボアの全身が砕かれる。


 潰れていくグレート・ストーンボアを、周りの騎士達はまじまじと見ている……



「アクアプリン!残ったオーク・ウォーリアーを殲滅せよ……アクアパイソンはグレート・ストーンボアを捕食した後、周辺の魔物を殲滅!」



 僕はそう指示を出すと、潰していたストーンボアを大口で丸呑みにすると、ズルズルと周りを這っては生き残りのオークを丸呑みにしていく……



 ピット器官のおかげなのか、あっという間にオークを見つけては丸呑みにするので、敵性反応の◉が消えていく。


 どうやって敵を見つけるのかわからないが、アクアプリンの3体はバラバラに動きオークをどんどん捕食する。


 一通り戦闘も終わった今、事後処理をする騎士団……倒した敵の素材やら魔石を集めている。



 一時的に緊張から解放されたハラグロ男爵は、ブラックオークが投擲したランスを見て



「ヒロ男爵には、王都の時のようにまたもや助けられたな!まさかあの様な敵が居たとは……長期戦であったら間違いなく我々が負けていた……あの屋根の上からこのランスに貫かれたのは瓦礫の山で無く私だっただろう」



「ハラグロ男爵様、そもそもこんな風な戦闘終結はしなかった筈だよ?だってさ、こんな風に周囲を破壊し尽くす事は出来なかっただろう?って事は途中で諦めて帰るしかなかっただろう?この簡易砦の状況だったら10日潜ってても終わらないよ?」



 エクシアがハラグロ男爵に見込みの甘さを伝える。



「エクシア、私とてそんな事は分かっている。だから騎士団の兵站部隊を用意しておいたのだ。2日に一度指示をしていたのだ……まさか1日で終わるとは思わなかったがな……それで目的の魔物は居たのか?」



「どうだったんだろうね?アタイからすればこの瓦礫の山で見分けが付くほど目が良くないからね?討伐部位あたりで判別するしかないんじゃないかね?」




 ハラグロ男爵は兵に伝えて、今日の収穫分を全て持って来させる。



「ないね…………」


「その様だな?まさか名前持ちのユニークモンスターがゴブリンの指って事はないだろうしな……


 僕はそのアイテムを覗く……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


オーク肉 2kg 2

オーク肉 4kg 4

オーク肉 8kg 2

オーク肉霜降り 4kg2

オークスキン(中) 3

オークの頭蓋骨 3

オークの割れた頭蓋骨 7

オークの目玉 4

銀貨50枚

小魔石 5

中魔石 3


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「これって40個体分くらい有ります?意外と居たんですね?」



「そのくらいは有るだろうな……戦闘にはほとんど役に立たなかったから、集めるくらいしか役には立てんがな?ハハハハハ!それ持っていけ!」



 僕がそう言うと、ハラグロ男爵は討伐部位の全部を僕に渡そうとする。



 僕は特別要らないので、エクシアを見る。


「ヒロは要らないみたいだぞ?アタイも要らないしな……アンタもこの砦攻略で金かけているんだろう?収穫無しは不味いんじゃないか?」


 結局押し付け合いになったので、当初のこの回想での目的『肉』を半分貰う事で手打ちになった。



「それで、其方達はこのままこの階層を探して回るのか?上の階層から降りて来たのだろう?もしかしたら、もっと下へ向かったかもしれんのでは無いのか?」



 当然それは予想していたが、襲われている冒険者が居ないか確認してからでなければ、とてもではないが下層へは降りれない……

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