第424話「出たのは真紅の宝箱」


「おい!ヒロどう言うことか説明しろよ!?」



「そうですよ!『じーーーーーー』………」



 ベンがむさ苦しい顔を近くに寄せる……



 するとベンのマネをしてシャインが僕に顔を寄せる……



 シャインは目を細めてやたら顔が近いが……僕にはこの状態の説明しようが無い……



「宝だ!山盛りだよぉぉ!!でかしたよ〜ヒロ!!お大臣だよ〜!!」



 ちなみにエクシアは踊っていた……



 それもその筈……手に入った宝箱は、とんでも無い数になっている……


 理由は簡単だ。


 階層主戦は、3パーティーで掃討し魔物も全部で3パーティーだった。


 敵パーティー毎に各1つの宝箱が出ただけでも、今回の連合討伐だと9箱にもなる……しかしガーディアンの箱は特殊な物なのか、出たのは5箱だった。


 そして、この場所特有の『階層から動かせない箱』も1箱出て……総数がなんと15箱だ


 前もガーディアンの宝箱は箱くらいだった気がするので、ガーディアンの箱は固定な可能性もある……何度か周回をしなければ、その特徴は分からないが……



 だが問題もある……今出た箱は例の『蒼い箱』ではなかった。



「あれ?前と……箱が……違う……」



「どうしたんだい?まぁ箱なんか手に入るのはランダムだろう?普通の箱か運が良くて祝福箱…………って何じゃこりゃ!!」



 ベロニカが迂闊に触ろうとして、ベンとロズに取り押さえられる。



 1つだけ真っ赤な箱があり、当然その箱は『階層移動不可』になっている。



「ヒロ?蒼い箱って話だったよね?赤いじゃないか!?」



 僕はエクシアへの返答に困ってしまう……ひとまず何か調べるためにも鑑定だけを済ませる。


 当然モノクルを出して、誤魔化すのは忘れない。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


        『階層移動不可』


宝箱『ガーディアンの真紅の財宝』『罠・爆弾・転移』


特定条件1:

  2パーティ6名以上でフロア入場

特定条件2:

  脱落者0にて勝利

特定条件3:

  女性冒険者3名以上


※以上の条件をクリアした場合宝箱はS+の

報酬に切り替わる。


S+確定ドロップ『ランク無し・適応外宝箱』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「色は違いますけど、前と同じですね………」



「ちょっとヒロさん!『前と同じ』ってどう言うことですか?ギルドにはそんな報告は………」



「ちょっと待ちなミオ!!冒険者は『全て』を報告するわけ無いだろう?こんな箱の中身が知れ渡ればそれを狙って無茶をする危険だってある!それにヒロがそもそも二度目で既に色違いなんだよ?下手に情報流して変なことになったら困るのは『冒険者』だろう?」



 僕とエクシアの会話にミオが混じってきたが、当然ギルドでは『知っておきたい情報』なのは理解出来るが、報告してもその説明など出来ようも無い。


 既に出た箱が違うのだ……それに対処する魔物が危険すぎる。


 装備不足で挑めば、トロルの時点で間違いなく死人が出る案件だ。



 それに色箱も、次に出るのは『黄色』の箱かもしれないのだ……そんな不明瞭な情報をギルドへ流せば、尚の事危険でしか無い。



「そうですよ!ミオさん私の様に後悔してからでは遅いんです……命は帰ってこないんですよ?」



 エクシアの言葉に激しく同意を示したのは、冒険者ではなく以前歪みあっていた同僚の『イーザ』だった。


 心を入れ替えたというより、彼女は見知った冒険者をこれ怪我に晒すのが怖いのだろう。


 そんな風に感じ取れる。



「ひとまずこの箱には罠がかかってます……どうにか解除しないと……」



 僕は空気を変えるために、冒険者らしい事を言う。


 僕は鑑定できるモノクルをミオに渡す………どんなに危険か見てもらう為だ。



「え!?凄いコレ!!鑑定が出来るんですか!?………ええーー!?転送罠に爆弾!?それもギルドまで『移動不可!?』無理ですよこんなの!」



 何時もは危険を承知でギルドで何とか解錠を試みる……開けられない場合は、王都のギルドから人材を派遣してもらう事まであるのだ……


 しかし今回はそれが出来ない。


 移動は出来ないし、そもそもダンジョンでは放置しておくと消えてしまうので、時間そのものがない……



 ギルド派遣の鍵開け師が、箱を恐る恐る確認する……



「これはS+の箱ですな……腕がなりますわい!王都の師匠の元で何度も開けたことがあるので大丈夫でしょう……ただ……さっきの魔物が来ないか心配ですがな……」



「じゃあ、それは僕が何とかします!」



 僕はそう言ってからアクアプリンを『送還』して、アクアパイソンを追加で召喚する。



「このアクアパイソンは、いち早くあの魔物を判別できるので……蛇には『ピット器官』って言うものがあって、多分それで確認出来ているんだと思います。全部で三方向に配置して護衛させておきます」


 僕はそう言って、3匹のアクアパイソンに指示を出す。



「あんたいつに間に………こんな意味のわかんないもの手に入れたんだよ……あんたの言う『人間像』からどんどん離れてないかい?」



 僕は箱が開く間に、ミーニー学長の『悪巧み』の話をする。



「はははは!気に入られてるのはいい事だけどさ……そんな大層な物を手に入れて実演させたのか!まぁ元手ゼロで手に入ったなんて、良いことだけどな?でも魔物系は言ったほうがいいよ?ロズとソウマの絶望感は半端無かった筈だから!」



「それっす!マジですよ姉さん!目の前の見たこともない魔物を指差して『ダーク・ホブゴブリン』がいます!って言われてですよ?姉さんが入って来たら、黒いトロルが現れて真後ろでゴーレムと取っ組み合いをして見てくださいよ!生きた心地しますか?」



 それを聞いたイーザは『ブルブル』っと体を震わせる……多分思い出したのだろう。


 ロズは戦闘が終わった事もあって、よく口が動く様だ……まだ説明をする……



「そしてあの青い蛇2匹と青と緑のでっかい蜥蜴……『人生終わった!!』って思いますって!普通……」



 ロズ達がそう言っている間に、鍵師は見事に罠を外して解錠をした。



「言い出しっぺのヒロが開けるべきだよ!そら!早く開けなよ!しないと消えちまうよ!」


 エクシアの場合は単純に欲しいだけだろう。



 僕は箱を開けた後モノクルで中身を確認するふりをする。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


   使用期限『0:30:59』


  祝福トーテム『始祖の恩寵』


 祝福トーテムの力を解放する事で、

範囲内全ての者に特殊能力を授ける。


  特殊能力『再生※パッシブ』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なんだコレ………祝福トーテム?」


 僕が中身を見た後モノクルを取り上げて、中をまじまじと見るエクシアは絶叫をあげる。



「特殊効果!特殊効果!マジかい……スキルじゃない!永続効果の特殊能力付与だ!……この減っている数はなんだろう?」



「制限時間じゃないですか?この効果を手に入れられる……」



「そうか……制限時間………って急がなきゃダメじゃんか!!どうやれば良いんだよ?これは!!」



 周りの皆が『本当に安全か?』と話しているが、この制限時間は30分だ。


 使うなら早くしないと間に合わないし、そもそも周りには14箱もまだ宝がある。


 今一生懸命ギルド職員が箱の形状を記録して、鍵師が箱の罠を外しながら開錠している。



「凄いのぉ!鍵師冥利に尽きると言う物じゃ!こんな珍しい『箱』を開けられれば、ワシの解錠スキル経験値も………ガッポガッポじゃ!!」


 鍵師は鍵師で、すごい大興奮だ……


 鑑定も同じ様に『使用回数』に依存しているので、その意味がよくわかります!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る