第411話「アイアンゴーレムは古の破壊兵器?」


「それで大体の話はヒロ男爵様に聞きました。我々が来ましたのは、従業員様の食の好みと食べる量を聞きに参りました」



「弁当の予約って此処まで細かくやるのですかい?流石一流料理店ですな!!」


「いえいえ!誤解なさっては困ります……本来好みは聞きません。決まったお弁当の内容から選んでいただく手法です!しかし!!ヒロ様に脚を運ばせる『理由』があるならば、我々もサポートして『最高の結果』をヒロ様にお届けするのが我々の役目ですから!!」


 そのセリフを聞いて、僕は何じゃそりゃ?って思ったが、鍛冶職人達は僕を崇める様に見始める。


「では肉の量と種類から好みを聞きますね、これから店員が我が店で提供している物をお持ちしますので、味見をした上で、量を選んで下さいまし………」



 そう言ったあと店員が大量の『食事』を用意する。



「では皆様、お食事兼ねてお話をいたしましょう!総料理長皆様へ用意を!」



「お粗末ですがお召し上がりくださいまし!」



 ビラッツの言葉を皮切りに『お食事会』が始まる……正午を少し回って13:00頃だったので昼食にはちょうど良い時間だった。


 ルムネー家の面々にも大人気だった。



 食事時に僕達はデザインを親方に告げて、制作をお願いすると親方が、


「大きな鉄の盾を持たせるのはどうなんですか?」


 と伯爵に質問をすると、答えられないザムド伯爵は僕を見る。



「多分無理ですね……そもそもストーンゴーレムなので本体が重いです。それに加えて鉄の盾持つと動きに問題が出ますから。持たせるならダンジョン・スタンピードに対応した、ジェムズマインの城門守護兵には向いてますが……」



「ふむ……確かにそうだな……フォレスト・ウルフの様に素早い個体だと攻撃など当たらないかも知れないな!防衛と固定攻撃にのみだな……」


 固定砲台の様にして防御を固めるなら良いが、動きを考えると正直厳しい。


 動かないゴーレムに鉄の盾を体に括りつけて、巨大なモーニングスターをぶん回させた方が討滅数は稼げそうだ……とかも思ったがそうなると、破壊されるまで誰も近づけなくなるし、警戒範囲に魔物と人間がいた場合、人間の死亡率がやばい……


 アイアンゴーレムも作れればなぁ……と思い口にうっかり出してしまう……



「アイアンゴーレムで多関節に盾を装備は面白そうですが、そもそもアイアンゴーレムはまだ作れませんし!」



「ちょ!ちょっと待て!!アイアンゴーレムとは何だ?まさか当然『鉄のゴーレム』です……とは言うまいな?」



「いえ?その通りですよ?鉄ゴーレムですけど?でも今は作り方の細かい部分が分からないので……」



 鍛冶職人の親方が身震いしながら………『あの鉄巨人……アイアンゴーレムだと!?……製法は!』と詰め寄ってくる……



 ザムド伯爵がビックリしながらも、目を細め『それ以上はダメだぞ』とサインを送り僕を見ている。



「アイアンゴーレムと言うのは……本当なのか?過去に栄えた失われた王国の遺物だぞ?帝国と王国が言い争っている境界の遺跡で発見され、両国が主権を争い戦争まで起きちまったもんだぞ!30年も戦った代物だ!!」



 僕は『アレーーー?やらかしたかなーー?』と非常にマズイと言う気分になる……。



「ひとまず話しますと……ストーンゴーレムとイメージは同じなんですよ!だって同じゴーレムだったら『石』か『鉄』の違いですよね?あとは製法と手順それに使う素材とか……魔導書などが必要です!」



「魔導書!!そうかヒロ男爵様は魔導士様だったのか……確かに魔法関連じゃなければ再現など出来ないわな!実は憧れたことがあってな……情報を探したことがあるんだ。展示会の時に帝国まで行って細部まで見て来たんだ!」



 親方の話ぶりからすると、鉄巨人ことアイアンゴーレムは帝国に取られた様だ。


 そしてよく聴くとアイアンゴーレムでは無く、外装備だけ鉄製で中身が石の歯車と木製の歯車を使用した、複合製の紛い物だった。


 言うなればその歯車さえ直せば動いてしまうが、壊れている以上は戦争に使われたものだろうから、直した時点で襲われる可能性しかない。


 まぁ足らない部分があるからこそ、再現出来ないのだろうが……


「作れる様になったら是非お願いしますよ!大きい鉄製装備なんか僕は作れませんから!」


「是非頼みますぜ、ヒロ男爵様!!かぁぁ、今日はなんて良い日だ……夢の足掛かりが見つかったぞ!ヒロ男爵様今後とも必要な物があれば、是非この鍛冶工房『フレイムハンマー』のバーン・ジョルジュを頼ってくださいな!絶対になんでも作って見せますぜ!」



 その後、どの位で装備の製作工程の説明をざっくり受け、製作見本を作る事で話が纏まった。


 鍛冶工房の職員は、ビラッツとお弁当の具で盛り上がっている様なので何よりだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 僕達は工房区画から魔導士学院へ向かう……同行者には3伯爵の他にイスクーバにアンミン迄も一緒だ。


 馬車は相変わらず長蛇の列だ。


 水魔導士の講座は問題が起きたので休止中だが、他の魔導士の講義は数日前に再開されていた。



 ヤクタのせいで魔導士学院が一時的に閉鎖されたのだ。


 王族反逆罪に加担したのだから、閉校にならなかっただけでもめっけもんだ。



 ちなみに今日は、火魔法と光魔法の受講日らしい。


 ザムド伯爵家の筆頭執事ラルが校門の衛兵の所まで行き、身振り手振り何やら衛兵と話していた。


 すると血相を欠いて衛兵数人が受け入れを止めてすっ飛んでくる。



「ヒロ男爵様!!いえ!偉大なるテイマー様!!今日の朝ですがトンネルアント亜種の従魔……拝見させて頂きました!!ああ!すいません……列にお並びにならず結構です!どうぞ此方へ!」



 そう言って、全ての馬車の行き交いを停止させて僕の馬車を先行させようとする。



「いや僕だけ行くのも悪いので……今日は同行者的に人数が多いですから!」


「其れでありましたら、同行者様も一緒にどうぞ!」


 そう衛兵長は言うと、他の衛兵に指示を飛ばす……



「全衛兵!今からヒロ様の往来の邪魔になる邪魔な馬車を、魔導士学院敷地内の道に一切通すな!」



 各道を塞ぐ様に衛兵が立ち馬車の侵入を停止させる。



『す………凄い………』



 それを見てボソッとアンミンとイスクーバが呟く……



「はははは!ヒロ男爵!凄まじいな……もはやこの魔導士学院はお主の手に堕ちたも等しいな!」



「流石に公道を占拠は不味いですって……周りの目もあるんですから……」



「その辺は大丈だ!この周辺は魔導士学院の敷地を道路へしたものでな……それも『馬車の往来による周りの迷惑を考えて』という事で、自前でやったので我々は何も言えんのだ!そもそもこの道路そのものが『魔導士学院の持ち物』だからな!」



 ビックリだった……貴族馬車を縦列させるために道路を作った様だ。


 周りと上手くやっていくための知恵だろう。



 僕達は列を抜けて列の先頭へ向かいノーチェックで中に入る。



「お待ちしておりました!ヒロ様!!この度は大変なご迷惑をおかけ致しました!ささ!学長室へどうぞ!」



 そう言って来たのは『ミーニー・ラットリング学長』だ。



「お久しぶりです!ちゃんと取り返して来ましたよ!」



 僕はそう言ってから馬車の窓から籠手につけている『マジックグローブ』を見せると、ミーニー学長の表情が更に明るくなる。



 僕達は馬車を降りて学長室へ向かう。



「皆様方大変申し訳ありませんが今この学長室へはヒロ男爵様にザムド伯爵様、ウィンディア伯爵のみになります。王命により他者へ存在を示すことの許されないアイテムが有りますので、此処にてお待ちください」


 待合室へ通された一行に、そう説明をするミーニー学長。


 学長室へ入れるのは僕の他には、当然この街を統治するザムド伯爵と次期統治のウィンディア伯爵のみだ。

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