第412話「魔導士学院秘蔵のユニークアイテム」
何故なら、そこにはミーニー学長が言った通り箱の蓋が空いた宝箱が一つ置かれていて、中には『ユニークアイテム』が収納されているからだ。
「無事取り返して来ましたよ。ちょっとばかり使わせてもらってますけど……冒険中にそうなってしまう状況が多々ありまして……返す前に一度中身を出さねばならないんですけど、広い場所を貸して頂けると助かります」
僕は『ユニークアイテム種のマジックアイテム』の管理者が僕である事を知っているが、一応聴いてないフリをする。
マジックグローブは性能的に惜しいが面倒を抱え込むよりマシだ。
『返せと』言われれば返してしまい、後は『ミーニー学長の責任』で全部解決して貰えば、僕は面倒毎から解放される。
しかし、事は自分の望む方には進まない様だ………ミーニー学長は間髪入れず話し出した。
「素晴らしいですわ!エクセレントです……流石ヒロ男爵様!実は国王陛下より……王族反逆罪に繋がる恐れのある『ユニークアイテム』の管理が成っていない!とお叱りを受けました……当然の結果で御座います……」
僕は応接机の上に、火矢の杖と根縛りの杖に幻影のタリスマン、撹乱のワンドと混乱のワンドを置く。
底無しのグローブはミーニー学長が『外さずそのままお持ち下さい』と言ったのでそのままにしてある。
「素晴らしい!全アイテム回収をして頂いたのですね!流石ヒロ様!」
僕は前に聞いた『取り返すべきアイテム』を、携帯のメモに残したが『解錠のマジックスクール』だけは回収出来なかった。
当然そのアイテムは、ヤクタの管理で黒箱と一緒にされていたのだろう。
「実は『解錠のマジックスクール』だけは回収出来なかったのです……多分ヤクタが黒箱と一緒に持ち歩いていたせいだと思いますが……」
「その件でしたら『帝都』の『冒険者ギルド』から回収した……と、連絡があり送り届けて頂きました!」
ミーニー学長はそう教えてくれた。
「ところで……ユニークアイテム研究の件ですが、一時的に研究凍結をする予定です。まず関係者達の管理の甘さが問題になり……研究室の改善をしたのち再度研究させて頂きたいのです!そうでなければ……『王命叛逆』によりこの魔導士学院が廃校処分になってしまいます……」
たしかにその方がいいだろう……
大問題を起こした上で、さらに研究者の私利私欲で手放されたり悪用されたら、それこそ目も当てられない。
そう話したミーニー学長は机の上に置かれた宝箱を、待機中の衛兵に指示をして持ってくる。
箱の中には………
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
・圧縮テント
・遠見の義眼
・対価の鏡
・転換の糸車
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
の4種類が入っていた。
・圧縮テント……住居区画が圧縮された魔法のテント。個室が24個あり寝具などの調度品込み。最低収容数24人の宿泊可能な内部の作りで最大収容数は50人。
・遠見の義眼……見たい場所が見える義眼。使用時は視神経が再構築され取り外し不可。
・対価の鏡………寿命1日消費につき欲しい物を取り出せる。取り出し可能は鏡面の大きさに限り、他人の物も取り出し可能。
・転換の糸車……素材をセットして系を紡ぐと、通常の糸ではなく魔法の糸が紡がれる。紡がれる糸の種類はその都度ランダムで低ランクから希少種迄生産可能。
箱を覗き込んで鑑定をすると、割と僕には縁のないユニークアイテムの様でしかない。
唯一冒険で使えるのは圧縮テントくらいだろう。
ちなみに圧縮テントと書いてあるが、ギルド売店や道具屋で売っているテントそのままだ。
遠見の義眼についてはまず眼を失って居ないと使えない。
それも視神経を構築し直すらしく、一言でいえば魔法の目玉だ。
対価の鏡なども名前の通りで、寿命と引き換えに欲しい物を引き出せる様だ。
しかし鏡のサイズに限られるので大きい物は無理だし両手で持てるサイズと言うことになる……鏡のサイズは公衆トイレにある鏡よりは大きく楕円形だ。
最後の転換の糸車は『糸』を紡ぐための生産系アイテムだ。
糸を紡いで何かを作るのであればマフラーや手袋位しか思い浮かばない。
まぁ希少種の『糸』を紡げるので良いと思いきや、出来上がるのはその度ランダムなので、素材を纏めて沢山紡ぐ必要がある。
一度やったら必要な量をやる迄、不眠不休でやらねばならないので、体調悪化間違いなしのアイテムだ………
僕が覗き込んでいると、ミーニー学長は困った顔で話し出す。
「如何でしょう?全く冒険に役に立たない不可思議なアイテムで御座いましょう?これらは全てユニークアイテムですが、調べた結果名前しかわかりません……」
そう言って渡して来たマジックアイテムに名前は、マジックグローブ同様名前が間違えていた。
「密集テントに魔法の義眼、それに愚か者の鏡に不揃いの糸車……もう名前だけで怖い情報しか得られません。試すにも使用結果が分からないので怖くて使えませんし……調べるにも『ダンジョン産鑑定スクロール』が必要になります。」
そう言って項垂れるミーニー学長は僕を見る。
「正直手詰まりだったと言えば、そうなのです……ヒロ様はマジックグローブと仰られて普通に使用されてますよね?『そのグローブ』……もし何か分かれば教えて頂けませんか?結果報告を王様にせねばならないのです……今回のヤクタ元男爵の案件でそれはもう……怒られっぱなしで……」
僕はどうしようか悩んだが、まぁ王様はこのアイテムの事を詳細までは知らないが、ざっくりしている部分は知っているので其処については報告書で挙げさせても良いかもしれない……と感じたので……
「このマジックグローブは『特殊空間』に成っていてマジックバッグと同様の原理ではあります。そしてマジックバッグの特性ですが時間経過をかなり緩める効果があります。ですがこのアイテムは『内部の時間を完全に止めます』なので、食品系の鮮度を劣化させる事はありません」
「な!なんですかそんなにもう分かったのですか?あの!あの!『時間』とはなんですか?教えてくださいまし!」
『時間』という言葉を使わず『刻』基準な異世界なので、かなり食いついてきたが僕の村では刻ではなく『時間』と言う単語を使う事があったと言って誤魔化す。
「成程!丁寧な説明で理解できました!『ある時刻と別のある時刻の間』だから『時間』なのですね?『刻』だけで済ませずに、間までも加味した呼び方……素晴らしいですわ!その村は何処にありますの?」
「すいません。かなり前に村は無くなりました……なので村民の皆は散り散りに………僕は本当に幼い時だったのであまり覚えてなく……」
「こ!これは失礼を……そうですよね……この世の中であれば……辛い事を思い起こす事を申し上げてすいません!」
そんなやり取りをしつつ、空気が重くなったので話を先に進める。
「えっと……なので、このマジックグローブは『許容量無限』『回収サイズ条件なし』『時間の完全停止』が主で、僕が使った結果『キーワード』をひとつ設定することで、一定区画を切り分けて自分用に使えると言う事ですね」
「成程!だからヤクタ元男爵は『キーワード』を使い鉱山の魔物を回収したのですね!ある意味ヤクタ男爵には尊敬を感じます。何が起きるか分からないので、普通は怖いですからね!」
僕はここですごい不思議な感覚に襲われる……『マスターキーワードを再設定』していないのに『鉱山魔獣の遺骸』をすでに取り出しているのだ……彼の合言葉が分からず取り出せないから、先にマスターキーワードの設定をやり直そうと考えたはずだが……と思い頭を悩ませる……
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