第403話「異世界転移の矛盾……仕組みが全く持って意味不明!」


 宿の亭主と僕そしてソウマはホットココアで、女子達3人はホットチョコレートを作る……因みにホットチョコは亭主にミルクを貰い、僕が炊事場を借りて作ったのだが、妹に良く作っていたので失敗もなく意外と人気だ。



「これは……美味いのぉ?ココアと言うのか?そしてこっちはチョコレートと言うのか!?苦い中にも甘味があって……病みつきになるのぉ!?」


 僕は鷲掴みにして木皿に入れて亭主に渡す。



「いやいや良いのだ!口止めせんでも喋らんよ!」



「いや、そうじゃなくて……次いつ手に入るか分からないのと、暑くなると溶けちゃうので、早めに食べた方がいいんですよ」



 無理な言い訳をするが、実は口止めだ。



「そうか?なら遠慮なく!コレも飴ちゃんと同じで食べたら歯を磨いた方が良さげだな!?ワシはあれから甘味を食べたら歯を磨く癖ができちまったよ!はっはっは!!」



 既に甘い物を食べたら、歯を磨く習慣ができた様だ。



「それで情報を纏めると……雛美ちゃんの行方を探したら、茜ちゃんもこっちに飛んできてしまったと?そして来た方法は聞いた感じでは『同じ』と思えるんだけど?」


 僕達は双方の話を先に聞く事にした。


 その結果、足元に異空間の入り口ができて飛ばされた様だ。


 しかし問題は………カナミちゃんが飛ばされたのは、僕達がくる一月前の10月そしてなんと茜ちゃんが飛ばされたのは、僕達の後で1月だった。


 それを聞いたソウマは……


「おかしくないか!?2020年10月に雛美ちゃんが転移、そして俺たちは2020年11月転移だぞ?その間約一ヶ月だぞ?そして2021年1月に茜ちゃんが転移だと?なんで俺たちより1年先に来てるんだよ?」



「そう言われての現実に来てますし!そもそも僕達と雛ちゃんが一ヶ月しか離れていないのに、彼女は10年前に来てるんです!それも……歳取ってませんし………僕達が来た時に言ってたじゃないですか?なにかが固定されて『リセットできない』って!異世界の弊害だと言ってましたよね?アナベルさんが!多分それに関係があるんですよ!」



「雛ちゃんじゃないです……みんちょです!」



「「え!?」」



 うっかり僕が雛美ちゃんを雛ちゃんと言ったら……茜ちゃんの何か触れていけない様な部分に触れた様だ。


 今必要と思えない事を、熱心に語り出す……それも二人共だ。



「ウチの学校には雛美と言う生徒が2人いて、片方の我儘な方が『雛ちゃん』と自称していたので、区別するために雛美は『ひなみんちょ』って呼ばれていたんです!そしてみんちょは雛ちゃんなんかより皆に愛されているんです!いい子なんですから!そんな呼び方しないでください!思い出すだけで腹立つ!!」



「そうなんですよ!いつも事ある毎にあーちゃんに喧嘩ふっかけてきて!前なんか購買部の最後の焼きそばパン買ったのがあーちゃんだからってだけで、喧嘩売って来て叩き落として蹴飛ばしたんですよ!もう!こっちに来てたら魔法で焼き尽くしてやりたいわ!!」



「そうそう!!みんちょが居なくなったら……もう本当に!鬱陶しいったらありゃしなかったのよ!一発引っ叩いてやったわ!」



「「それって今必要な情報?」」



 僕とソウマがそう言うと、女子四人から『男子にばかりいい顔して、他に女子には喧嘩を売る嫌な女は敵です!』と言った後に、とばっちりで何故か僕は猛口撃を喰らった。


 仕方ないので……そっとチョコレートが入った木皿を下げると……ピタッと文句が止んだので、話を先に進めることができた。


 ……チョコレートの権力は女子達には偉大だ!!



「じゃあ話を纏めますが……良いですか?………」



「「「「ハイ先生!!!!」」」」



 ……先生になった覚えはない……貴族であって議員ではない……



「二人は友人で、雛美ちゃんが消えた足取りを探したくて、茜ちゃんは彼女の通った帰り道を毎日使ってたら、同じこの異世界にたどり着いた……それも雛美ちゃんは約10年も前に飛ばされ、茜ちゃんは約1年前。そして二人とも何処も経由せずに直接ここに来たそれで良いですか?」



「「うん!!それで、あってます」」



 僕に話に顔を見合わせながら頷くが、雛美と仲がいいのだろう茜は僕の話より雛美と話したくて仕方がないようだ。


 当然雛美もそうだが、今は我慢してもらおう。



「僕達の事は含まずですが……飛ばされた年月の説明はつきませんね……僕達には未だに情報が少なすぎますから。アナベルに関連する事か聞ける時に聴いておきます……皆さんも何か情報を聞いたり見たりしたら情報を共有しましょう」



 そう言ってから、アナベルの詳しい説明をする必要がある事に気がついた。


 全員がアナベルと言った事に疑問を抱いてはいないが、王都にいた間に見つけたこっちの世界の情報源と理解したのだろう。



「一度僕の情報から話しますね?僕のユニークスキル『倉庫』で、僕達が最初に飛ばされた異世界の『狭間』と繋がる事ができました。でもこっちからアクセスはできず、相手が来るのを待つ感じです……」


 そう言い出してから説明をした。


 紅の魔術師は『魔導師アナベル』と言う名前を『今は』使っているという事……そして『アナベル』は剣聖であった人の名前からとった事。


 彼女はその狭間で『何か重要な仕事』に携わっているが、僕の倉庫には滞在時間が決まっていて自由には会えない事。



 そしてその事に関連はないが、『悪魔っ子』の存在と『アリン子』と言う新しい従魔が増えた事も折角なので話しておく……理由は『後でだと絶対忘れるから』と言っておいた。



 当然皆は最後の情報で『白い目で僕を見た』が……この様な事は気にしたら負けと言うので、気にしない事にした。




「成程……じゃあ今後は『あの場所』の情報が手に入る『可能性がある』って事ですね?一歩前進ですね!皆さん……」



 明るく話す美香に皆ほっこりしていた。



 雛美と茜は同じ様に飛んで来たが、飛んだ時期も着いた時期も一貫性が無く滅茶苦茶だったが、一つ言えるのは見た目『歳を取らない』と言うだけだ。



 中身がどうなのかは、分かりようがないのでそこは加味しない事にまとまった。



「ひとまずは、皆で仲良くやっていきましょう……行動するのも極力一緒で、帰る時も誰も逸れず一緒にって事で!」



 そう言うと茜が一言付け足す。



「ところで……『男爵』になった事話さなくて良いんですか?」



「「「「男爵!?」」」」



 茜以外の全員が声を揃えて叫んでいた………当然、既に知っている宿の亭主は大爆笑だ。



 僕はそれから王都での一連の件を、順を追って話した……

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