第378話「潜入!!ダンジョン内部は蟻だらけ」


 ダンジョンの内部は部屋ではなく通路だったが、アリが通れる程広い作りだ。


 石壁ではなく土剥き出しの壁だったので、前入った蟻の巣を彷彿とさせる。


 今までは魔物をストーンゴーレムがほぼ倒してくれていて、ダメージを負った魔物を相手にしていた冒険者だったが、ダンジョンの中に入った時点で無傷の魔物と多く対峙する羽目になった。



「盾役さんすいません堪えてください!後ろを減らします!」


『ウォーター・ジャベリン』



 そう言って僕はタンクが押さえてくれている間に後ろの敵にジャベリンを投擲する。破裂する水槍は周りにも被害を及ぼし、どんどんと密集する魔物に被害を出す。



 エルフ達も持っているエルフ特有のミスリル製の武器で、ザクザクと近場の魔物を切り刻み数を減らす。


 合間を見て僕も側の敵を斬るが数が尋常では無い。



 破壊力のある魔法ではMPが持たない……僕はピンポイントでアリの首を刎ね飛ばすことに切り替える。


 タンクが攻撃を受け止めた隙に首をフェムトのショートソードで切り落とす。


 この剣には防御力を削ぎ落とす効果があるので、斬り刎ねるには持ってこいだ。


 しばらく戦っていると、第3波と見られる魔物が後ろから大量に来るが、魔物が前に居るせいで出て来れない。



 通路が複数に分かれていない以上、ここを通るしか無い魔物は乗車率200%の満員電車みたいな状態だ。


 お互いの身体が邪魔をして前に進めない。



 銀級冒険者のタンクが命がけで堰き止めているだけあって、揺るがないがタンクの防具も無限に持つわけでは無い……


 どうするか………と思っていると、声をかけられる。



「おじさん達………退いて……ジャマ」



 このセリフ……と思った瞬間、周りのトンネルアントが壁に押し潰されていく……



「此処は不思議……自由に使える……力が……でも使うと……どんどん減っていく………」



 横を見ると『悪魔っ子』が手を前に出して、不思議な力でトンネルアントを片っ端からこねくり回している……



「お兄ちゃん……大変なんだってマッコリーニさんから聞いたから……来た」



 そう言って無表情で僕を見ながらも、通路にいるアリを片っ端から倒していく。



「マッコリーニさんが言ってた……お兄ちゃんが死ぬと美味しいご飯が食べれなくなって、孤児院の皆が泣くって……それに……此処くさいから……早く終わらそう……」



 そう言ってどんどん殲滅する『悪魔っ子』だが……ガス切れじゃ無かったのか?と思ったが思い当たる節がある……『穢れの行使』だ。



 ダンジョンにある穢れを使って魔物を退治しているのであれば、悪魔っ子がガス欠だろうが力が使えるのでは?



 と言うか下手すると『補給』するんじゃ無いか?と思った……



 目に前のつっかえが無くなった第3波の後続の魔物が一斉に来るが、僕はウォータースピアでいっぺんに爆散させる。



 そうしていると、周りの冒険者が響めき話し出す……



「俺たちは一体何を見ているんだ?女の子が手を翳すと……魔物がすり潰されて……あの兄ちゃんが魔法を撃つと、周りの魔物を巻き込んで魔物が爆散する……」



 エルフ達もサポートの筈でついてきたが……流石にびっくりしながら、僕達を追いかける



「アリン子ちゃんは可愛いのに……なんで他のこのアリ達は可愛く無いのかしら?ねぇ?アリン子ちゃん?」



 そう言いながらアリン子に跨ろうとする悪魔っ子に、魔物が攻撃をしようとするがアリン子は同族の魔物の首を鉤爪でもぎ取る。



 頑張ってよじ登った悪魔っ子は満足げに……



「もう上がってこないのかな?下から出てこないけど……此処の力も薄くなっちゃったから……そろそろ帰ろうかな……まりんちゃんと遊びたいし……ねぇ!お兄ちゃん……孤児院行って遊んで来ていい?宿屋はマッコリーニさんがご飯くれるけど友達が居ないの!」



 僕はその言葉に……



「じゃあ、此処の穢れを綺麗にしたら行ってもいいよ、マリンちゃん達に影響があると困るから」



 そう言って魔導師アナベルから貰った『セノバイト・キューブ』を使うが、全く反応しない……



「あれ?何もならないな?今汚れ吸ったんじゃ無いの?」



「え?此処の力をそのまま使っただけだよ?汚くて臭くて吸いたくないもん……早く出たいし……臭いから……」



 どうやら穢れには色々あって、臭い匂いの力があるらしい……そしてそれは彼女的に凄く嫌いな物だとわかった……



「じゃあ外のゴーレムに気をつけて出るんだよ?」



「大丈夫!通らなくても行けるから……」



 そう言うと悪魔っ子は突然消えていなくなる……


 見失ったので、周りを見渡してからふと僕の足元を見ると……ぽっかり黒い穴が出来ていて、そこから声がする。



「お兄ちゃんの所だけは、好きに行けるから平気ー!マリンちゃんの孤児院に行って来まーす!!夕飯食べて帰るねーー……………」



 元気に遊びに行った……悪魔っ子はどうやら使役中の魔物と同じで自由人らしい……人ではないが……



「アンタ……だんだんヤバいものが増えてるよね?アンタが一番ヤバいのは把握済みだけど、アンタを拾った私が最終的に一番ヤバいことになりそうなんだけど?」



 エクシアはそう言うが、周りはそれどころでは無い……魔物が一瞬で殲滅され、宝箱やらドロップアイテムやらが山盛り落ちているのだ。



「いいかいアンタら……今此処にある物は早いもの勝ちだが、アタイ達は下層階へ降りる!十分死ぬ覚悟ができた奴は降りて来な!箱が欲しい奴は、シーフ探して開けてもらい山分けするんだな!」



 エクシアがそう言うと、我先にと群がる。



「俺この箱の側にいたから俺のだぞこれ!おいシーフ!誰か近くにいないか?開けてくれたら分前やる!あと祝福使える奴か回復師か薬師誰か一名頼む!!」



「アントの外殻だ!やったぜーー!」



「うぉぉ!トンネルアントの鉤爪だ!これでナイフを!作ってもらうぜ!」



 ダンジョンでは欲望も穢れになるから……辞めて欲しいんだが?



 そう思いつつ、悪魔っ子が言っていた『階下から上がってこない』のセリフが気になった……



 地下二階に挑む皆で降りると、入り口周辺で階段を登ろうともがくトンネルアントの群が居た……総数で6匹だ。



 他の個体は引き返す後ろ姿が見える……どうにも悪魔っ子の登場から様子がおかしい……何かあったとしか思えない。



 一緒に来てくれた王都冒険者のタンクが攻撃を受け止める。



「俺は王都銀級冒険者のマルスだ!前に話したな!助太刀するタンクだから受けは任せてくれ!」



 僕は『有難う御座います!』と言いながら、トンネルアントの首を落とす。



「ヒュー♬やるね!流石だ!」


 そう言いながらもマルスは、持っていたメイスで近くのアントの頭をカチ割る。



 エルフ達も負けずに次々と殲滅する。


「すごいです!一緒にダンジョンに入れて感動です!僕はテーツンと言います。同じ魔導師です!」



 そう言って来たのは先程僕にMP回復薬をくれて、その上ギルドまで戻った彼だった。


 持って来たはいいが、先に進んでしまって一生懸命追いかけて来たらしいが、このマルスのパーティーだった様だ。



 エルフ達が、少なくなった魔物の露払いをしてくれるので、比較的簡単に先に進めるようになったが、部屋には予想していた『トンネルアントマイタケ』が群生していた。



 エルフの皆さんありましたよ、これは食べれます。


 その言葉でマルスはビックリする。



「ちょっと待て!ダンジョンのこんなものが食べれるのか?腹壊さないか?」



 その話には何故かエルフが先陣を切って話し出す……それはもう力説だった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る