第377話「未確認のダンジョン攻略とストーン・ゴーレム」


 王は大激怒しているが、今それを言っても仕方ない。



「無い物は今言っても始まらん!これから奴らの税収は3倍にするぞ阿呆どもめ!!く……ならば仕方ない!魔導街に行き、1本でもないか探してまいれ!何としても見つけてこい!まだ第二波なのだ!王都がこのままでは持たぬ!」



 王がそう言っている間に、ストーンゴーレムはどんどんと兵隊アリを叩き潰していく。


 兵隊アリは大きくても3メートルだが、ストーンゴーレムは12メートル近くある。



 城門の飾りだったが、細部は細かく作っていたので、一枚岩を掘り抜いた様では無かったのが幸いした。


 動きは遅いが、最大MPを注ぎ込んだゴーレムは伊達ではなかった。



 最大魔力のおかげで防御値も上がっている様で、鉤爪で抉ろうとしても爪が欠けてしまう硬度になっていた。


「おいヒロ何してんだ?あの石像はアンタだろう?こんな馬鹿な発想する奴は他には想像ができないからね!で?ここにいる理由はなんだい?高みの見物にしては顔色が悪いじゃ無いか?」



 エクシアは小言を言いながら戻ってきた。


 既にラミアの姿では無く、人形だが髪は未だに赤味を帯びて燃えている様だ。


「実は僕のMPが切れてしまって、シャインさんに回復薬を貰ったんですが……王宮にあるMP回復薬は逃げ出した貴族が持って行ったらしくて在庫切れで打つ手なしですね……」



 そう言ったらエクシアが大声で、



「おい誰か!MP回復薬ある奴いないか?あの水竜巻とゴーレム作ったやつがMP切れなんだ!ちょっと譲ってくれんかい?死ぬ前に出した方が良いとアタイは思うんだけどね?」


 そう言うと、魔導士系の冒険者が次々と持ってくる。



「凄いっす!あのゴーレムは今作ったんですよね!?見てました!まだギルドの手荷物預かりに預けてあるんで今すぐ持ってきます!」


「これどうぞ!私昨日のアーコム子爵捕縛現場に居たんです!あの魔法凄かったです!アレは使わないんですか?あ!そうかあれって範囲魔法だったのか!!あれで仲間が引き摺り込まれたら本末転倒ですね!」


「これ使ってください!俺が使うより役に立つし……持ってても死んで仕舞えば意味ないので!」



 口々に一言話して僕に渡していく……MP回復薬は50本も集まった……僕は2本飲んでMPを100回復して……



「王様!ちょっくら北門の石像をゴーレムにしてきますね!」



 そう言うと僕はアリン子に跨って走り出し、北門の石像をゴーレムに変化させる。



 戻り際に歓声が上がる、ストーンゴーレムが戦場に到達したのだろう。


 しかしストーンゴーレムにばかり任せては居られない。


 このまま続けば間違いなくストーンゴーレムもHPを削り切られてしまう。



「このままだとジリ貧ですね……いつまで続くか分からない波を終わるまで待つのも厳しいです」



 僕は皆の前でそう言う。



「入り口を何かで封じたらどうだい?」



 エクシアはそう言ったが、相手はトンネルアントだから多分穴をよそに開けて出てくるだろう……それが複数の出入り口になったらこちらは戦力を分断させられる。



 その事を話すと、エクシアは『トンネルって厄介だねぇ!!』と理解を示す。


 ダンジョンの魔物は基本消えるが、外に出てくる個体がいる時点で既に『実体』を得た魔物が複数居る。


 既に第二波までが終わったのだ……ここは頑張って中を攻略するしかないかもしれない。



 そこにエルフの3グループがやって来る。



「我々が手伝いましょう……ヒロ殿を先頭に我々が援護します、大きなアリの巣であれば例のキノコも沢山あるのでは無いかと言う議論になりまして……是非確かめてみようと決定しました!」



 何を言ってくれているの?とか思った……アラーネア以来の腹ペコキャラが誕生した……それもグループでだ。




「エルフの方々よ?何故!?」



 王様がそう言うと……



「ヒロ殿は我々エルフに幸を齎す恩人であります故、我々各エルフ族は協力する協定を一時的に結ぶに至りました。国王陛下よ!もし我々が参戦して願いを聞き入れて頂けるのであれば、我々各エルフ族の騎士団と繋がりを持って頂きたい。勝手な申出ゆえに王国としてではなく個人的になりますが……」



「構わぬ!是非にお願い申し上げる!我が国の危機故助けて頂けるのであれば感謝こそあれ文句など言おう物でもない!それがいずれ親善大使にもつながるかも知れぬしな!」



 エルフ達と王様は少しは分かり合える様だ……


 冒険者と騎士団のサポートを受けて、兵隊アリの群れに切り込む……ゴーレムに指示して一列に並ばせて石剣で薙ぎ払いながら前進する。


 当然討ち漏れた個体は冒険者や騎士団が始末をする。


 第3波が来ると周りを魔物に囲まれてしまう。


 しかし、中に入っても結局は夥しい魔物と対面せねばならない。


 だがダンジョンであれば通路が狭い分、交代しつつ倒せば少しずつは数が減らせるだろう……そう思ってひた進むしか僕達に方法は無かった。



 僕はフェムトのショートソードを抜き、アリン子に指示を出す。天井から来る魔物をアリン子にお願いして前は僕が対処する。


 サポートはエルフの3グループだ。



 他の冒険者も出来る限り露払いを買って出る。


 ダンジョンの入り口まで着くと意外な物が目に入った……ヤクタの兵士数人がアンデッドに変わり這い出してきていた……どうやらこの中はアリの他にも『何かが』いる様だ。




「ウガァァァァァ……ブベラ……ブア……に………ぐ………ガァァァ……かゆ…………うま………」



「ゴゲゲ……アアアア………ウマ………にぐぅぅぅう…………」



 すり鉢状になったダンジョンの入り口からワラワラと出てくる兵隊アリは、ヤクタの元騎士を無視してこっちに襲い掛かる同じ魔物になった以上襲わない様だ。



 彼等は何故ここにいるかは分からないが、アリの餌になったのか腕か片方無かったり所々噛み切られている。



 致命傷は首の傷だろう……半分千切れているが、今となっては彼等には関係ない様だ。



 エルフが攻撃する前に、シャインが聖属性の遠距離魔法攻撃を放つと、グズグズと音を立てて崩れていく。



「お兄様!ヒロ様と行ってまいります!回復役が居なければ………」



「行ってこい!ヒロを守ってお前も帰ってこい!いいな!?ヒロ!妹を頼んだぞ!無事帰って来たら妹をお前にやる事を考えてもいいぞ!!」



 意味わからない事を言うテロルに『いや1人でいいです』と言いたかったが、結局中には皆一緒に来るんだろう……そうなればなし崩し的に誰かがついてくる事など目に見えていたので、



「じゃあシャインさんはあと5人探してパーティを組んでください。4パーティの連合と単騎の僕で入ります……そうすれば箱は4箱貰えますし!残りの5人はエクシアさんお願いしますね?ファイアフォックスの『ボス』ですからね!」



 僕がそう言うと、エクシアは頭をぼりぼりかいて……『わーたよ!行くとは思っていたがシャインがオマケか!お得だな!』そう言って、タバサと入れ替わりでシャインがエクシアのパーティに入る。



 ダンジョンに入る話が出た時に、エクシアが仲間に耳打ちしていたのを見た僕は……『付いて来る気だろうな』と感じていた。



 僕が一人なのは、連携に混ぜられると困るからだ。



 範囲魔法の都合上、一人が好ましい……それにダンジョンに中型種のアリ系が居る以上通路は狭く無い。


 ならば尚更範囲魔法に巻き込まない設定が必要だ。



 回復役は必要だが、同じパーティー内で無くても良い場合もある。


「では入りましょう!」



 僕は入り口に居た数匹の兵隊アリを、素手で引き出して倒す様にゴーレムに命じて、その後の命令も出しておく。



「ゴーレム達に命令する!ここから出てくる敵をやっつけておいてくれ、僕が此処から出て来るまで続ける様に!」



 そう言ってから、魔物が居なくなった隙を見て多くの冒険者と中に雪崩れ込む………ダンジョンの中はかなり魔物が繁殖していた………

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